シェービングエステをしていたときのこと。
そのお店は夫婦でやっているいわゆる「床屋」さんで、一角を囲ってエステルームがしつらえてある。
予約して行くのだが、まず、お客がいたことがない。奥さんが私の顔を剃っている間、オルゴールのBGMしか聴こえてこない。
それが今回に限って千客万来だったのである。
予約時間に行ったら、男性客が2人いて、少々待たされた。
その後、私の施術中、何人もの男性客が入れかわりたちかわり、入ってくるのがわかった。
2人目までは、「1時間後に来てくださいませんか」と謝っていたのだが、そのうち、「何時ごろ、出直してこればいい?」と聞く客様に、「夕方なら何とか・・・」答えるようになり、そのうち、「夕方、出直す」と言った客様に「いやぁ、ここで待っていてもらったほうが早いかも…」と答えるようになった。
そうこうしているうちに、子ども連れの客様がいらしった。
この親子は、「店で待ってる」と言い、2人で子ども向けのビデオを見始めたらしい。(←なにしろ私は隔離されているので、声と音だけで判断している)。
よりにもよって、同じ日・同じ時刻に客がやってくる。
店側、客側ともに運が悪い。
全ての施術を完全予約制にすれば、こんなことにはならないものを・・・とシェービング中の私は思ったが、そのあと、ふと、いや、ちょっと待て、と思った。
そういえば、私が若かったころ、美容院など「予約して行った」ことがなかった。
出直すことも、まずしなかった。
混んでれば、待っていたのである。
他に待ってるお客さんとおしゃべりしてたりしたのである。
あんまり待ち時間が長いと、コーヒーの出前なんか、とったりもした。
子をつれたお母さんがこれば、みんなで子どもをあやしたり、子どもに話しかけたりした。
いまや、こんな風景は見られない。
待ち時間なんて、無駄でもったいなくて仕方がない。
待ってるなんて、いらいらしてできない。
それどころか、予約すら「ネット」でできる。電話をかけ、コール音を聞き、ようやくつながったら、予約帳を確認し…などとまどろっこしいことはしなくてもよくなった。
しかし、待たなくなった分の時間を有効活用しているか?
5分かかった電話予約が数秒で済むんだから、残りの4分強、何をしているのか?
待たなくなった分、節約できた分、時間的に余裕ができたか?
全然違う。
待ってる時間は、老若男女による豊かな「井戸端会議」だったのだ。
でも、「井戸端会議」って、いつの間にか死語になってしまった。
かつては揶揄されるオバサンたちの行動だったが、いまとなっては、「捨てものじゃなかった」気がする。
待ち時間わが子は他人<ひと>に育てられ 鞠子