『剣客商売』を観ていたら、秋山小兵衛(←演ずるのは故・藤田まことさん)の若い後添え(←こちらは元祖『おしん』の小林綾子さん)が「習字」をしているシーンがあった。
小兵衛に「手をつけられ」、田舎の農村から嫁いできたおはるはいわゆる「文盲」だ。
武士に嫁いだからには…ということで、小兵衛に字を習っている。
ほめられて、嬉しくて、照れ臭くて、顔を赤らめるおはる。
…いゃあ、なんだかよいな、このシーン(´∇`)
今日の日経にも、似たような「よろこび」が描かれていた。
いしいしんじさんが書いた『マス目をはみだす』というエッセイに。
いしいさんの子どもが、ひらがなを覚えるたび「書」を書く。
マス目も罫線も関係なし。
思い通りに、思った通りに書いた字はどんなに素晴らしい「作品」だろうか。
いしいさんは、こう書いている。
「五歳児は、書いたかわりに何かを求めない。書くこと、そのものが『贈る』こと『渡す』ことだ。物書きとして、いつかは到達したい境地だと、ぼんやり見上げている。」
書くことが苦しい私下心 鞠子