「ここさぁ、遅れるよ」
…って指摘されても、一瞬 その意味がわからなかった。

先週末、合唱団で歌の練習中、一曲歌い終わった直後、隣に座った音楽トモが楽譜を指差しながら、私にそう言ったのだ。

信じられなかった。何回も歌った曲で、旋律はわかっているから、先生の指揮を充分見て歌っている。だから何がどう遅いのか、見当がつかない。

…「遅れる」と言われてから、怖くて声が出にくくなってしまった。

練習が終わってから、彼女に何がどう遅れているのか聞いた。
聞いたらまたショックだった。
彼女の指摘した私の歌い方の問題。聞いてもなお、私には「正しい歌い方ができていない」ということが腑に落ちなかったのだ。
「音が下がってるよ」という指摘なら、自分でも認識していることなので納得できる。でも、「遅れる」という認識は全くないどころか、むしろ「正しくとれる」と思っていた。

指摘したのは、団を離れたところでも仲良くしているトモ。それでも指摘せざるをえないほど、遅れることが気になったのであり、少しでもいい合唱にしたいという思いから出た言葉に外ならないと思う。

「謙虚である」ということは、単にへりくだっていればいいということではない。自分を冷静に見て、正しく分析できれば、自ずと謙虚でいられるはずだ。

ここのところ、何人かのメンバーに「鞠子さんの隣だと歌いやすい」とか言われて、どこかいい気になっていた。
歌だけじゃない。仕事も同じだ。高評価が重なると、どこかでいい気になってる自分がいる。

自分を見る目が濁る。
そして濁ったことに気づかない。

考えてみたら、鞠子さん、何様?

その程度でいい気になるなんて、小物。

…次回の練習の時は、もう一度、初心にかえって、丁寧に歌ってみようと思います。