つい先頃、某銀行のCMでとても懐かしい歌が使われていた──マンションのベランダから、30代半ばくらいかと思われる(要はおねえさんとおばさんの中間くらいの年代)奥さんが、出勤するダンナを見送りながら、♪…あなたはオジさんよ、と森高千里の『私がオバさんになっても』の一節を小声で口ずさむ、というもの。20年ローンの生活設計に関する何かの宣伝だったか…、商品の内容はほとんど記憶にないのだけど、この歌がリリース後10数年の時を経てこういう使われ方をしていることに、僕はある種の感慨を覚えたのだった── 森高千里が自身作詞のこの歌をリリースしたのは'92年。今から13年も前のこと。当時23歳だった彼女も当然36歳、おねえさんと呼ぶべきかおばさんと呼ぶべきか、微妙な年齢である。俳優の江口洋介との間に子供もおり、主婦でありおかあさんでもある。そう、件のCMの主婦(演じてるのは稲森いずみだっけ?)と同年代である。この歌が流行った頃には森高同様ピチピチの若さを誇ってたであろうこの奥さんが、今の年齢になってしみじみと実感を込めてこの歌を口ずさんでるという──若い人向きの歌でありながら、年齢を取ってからむしろ切実に響いてくる歌というのも、あるのである…。 全盛時の森高千里の曲の多くは彼女自身が作詞していたが、その多くは『私が…』や『勉強の唄』『ハエ男』『臭いものにはフタをしろ』などに代表されるコミカル系と『渡良瀬橋』『雨』『私の夏』『道』などに代表される正統派系に大別されるのだが、そのいずれのパターンも、等身大の女の子の心の奥底にある本心を正直に出しているという点で共通するものがある。前者のシリーズを、単なるおちゃらけとして片付けるような批評が、当時はもちろん未だにネットとかで見られるのは、初期の彼女の、美脚を前面に押し出したコスプレっぽいファッションの印象が強いせいもあるのかも知れない。だが、その本質に“等身大の女の子の本音”があるとすれば、その部分を読み取ってあげることは、身の回りの女の子たちと接する時のためにも大事なのではないだろうか── そんな森高千里も“オバさん”になりつつある今、彼女の路線をコミック正統派両方併せて引き継げそうな若手女性アーティストというのは、果たしているのだろうか? 彼女の『渡良瀬橋』をカバーした松浦亜弥などはそれに一番近いポジションなのかも知れないが、それでも同列に並べるにはまだもうひとつ内容が(特にコミカル路線は)軽すぎる気がする。森高の時代の女の子の等身大と今のそれとも違う部分は多いだろうし…。あやや以外にはそれに近いタイプはちょっと見当たらないとなると、今のところ彼女の往年の曲の数々は、CMのようにベランダでしみじみ感慨を込めて口ずさむしかないのでしょうか。だとしたら、オジさんはちょっとさびしいです(^^;)。 |