(つづきです)
ハローワークへ着いた息子。
受付を前にして息子は緊張と不安でガチガチです。
そんな息子を見た妻は受付の人に言いました。
「先日二十歳になったばかりです。高校を卒業し、専門学校は中退して、今はバイトをしています。どこか就職ができないかと思って来ました」
受付を済ませてた妻は息子に聞きました。
「ママから言ったけどよかったかな?」
「うん、助かったわ」
さらに息子はボソッと、
「希望の職種ってないんよなぁ」
実はこの前日、
妻と話していたことがあります。
「明日、ハローワークには付いて行くけど、私は車で待っててええかな?」
「いや、ハローワークは相当緊張するやろう。厳しいことを言う人もいるかもしれん。明日は見守るんじゃなくて、一緒に話を聞く感じでお願い。そしたら二回目から自分で行けるやろ」
「うんわかった」
「あと、希望の職種はまだ(息子)にはないと思う。やりたい仕事がなくても、こういう仕事ならできるかもとかでいいからね」
「おっけー」
というような話をしていたので妻は息子に言いました。
「希望の職種じゃなくても、これならできるかもとか、興味がある分野を言うだけでもええんやで」
「うんわかった」
間もなく相談相手になってくれる人がやってきました。
やさしそうな中年男性です。
さっそく希望の職種を聞かれた息子が答えました。
「やりたい仕事とかはないんですが、飲食関係とか動物が好きなのでペットショップとかなら興味があります」
「わかりました。ペットショップで正社員というのはなかなか募集がないんですよ」
妻「そうなんですか。でも先日近所のペットショップに行った時、正社員1名募集中ですってお店の人に聞いたのですが」
「え、そうなんですか?ちょっと調べてきます」
間もなく男性が帰ってきて、
「お母さんの仰る通りでした!正社員1名募集中でした。こちらの認識不足ですいません。ですが募集が本日で締切りとなっています」
「そうなんですか、残念です」
「でも正社員採用はできていないそうで、来月以降も再度募集するそうです」
「あ、そうなんですね」
「はい、募集条件は”高卒”だけですから条件はクリアしてますよ」
ここでずっと聞いていた息子の表情がちょっと明るくなりました。
「ただですね、年間の休みが86日となってます。これは少なすぎますね」
「86日・・・普通はどれぐらいなんでしょうか?」
「最低でも105日、できれば120日ですね」
「そうなんですか、じゃあ少ないですね」
「ところで、通勤手段とかは考えてますか?」
これには息子が答えました。
「できれば近場がいいです」
「バイクとか車の免許は?」
「持ってないです。徒歩か自転車がいいです」
「ふむ、それだと限られてくるね」
「遠くになるなら車の免許を取ります。寮とかに入ってもいいです」
妻(おおーそこまで考えてるんや)
その男性は最後に息子へ言いました。
「まあ、仕事はゆっくり考えたらいいからね。何回かここに来て、自分に合いそうな仕事をじっくり探していこう。さっきのペットショップに応募しようと思うのならまた連絡ください」
帰りの道中、息子はなんだか明るかったそうです。
「おれでも就職条件クリアできるところがあるんやな。それが分かったのが嬉しかったわ」
「そやなーがんばって高校卒業したもんな」
「ちなみにマクドの正社員は嫌やで。店長の30連勤とか見てたら無理や」
「うわーそりゃキツいね」
というわけで、息子のハローワーク初日は終わりました。
次回はいつ行くのか分かりませんが、もう付添いはしないでしょう。
息子はどんな仕事を探すんだろう。
楽しみにしつつ、期待し過ぎず、親ができるサポートをしていきます。