The Love Ban | CAHIER DE CHOCOLAT

The Love Ban


1973年のイギリスのコメディ映画。ミックとケイトは6人の子どもたち(+住み込みベビーシッターのジャッキー)とにぎやかな日々を送っている夫婦。ふたりは一番下のふたごが生まれてからベッドルームを別にするようになっている。夫婦仲が冷え切っているわけではなく、むしろその逆。だけど、ケイトはもうこれ以上妊娠出産は望んでいないから、というのが理由。ふたりはカトリックで、特にミックは敬虔な信者らしい。当時、カトリックでは避妊に対して強く否定的、対して、プロテスタントでは容認されていた……この辺りは『人生狂騒曲』の“Part I: The Miracle of Birth(パート1 出産の奇跡)”でも描かれていて、はんぱなく子だくさんのカトリックの家族が“Every Sperm Is Sacred”(「すべての精子は神聖なもの」の意味)という曲を歌い踊る素晴らしいシーンがある。ただ、1960年代のベビーブーム以降、人口増加が続いていたイギリスでは「家族計画」が呼びかけられていたようで、それがわかる描写があちこちにある。街中の啓蒙ポスターが映し出されたり、避妊について学ぶ講座が開かれていたり。その避妊講座の講師を演じているのがジョン。そんな時代の風潮の中、コンドームは薬局だけでなく、理髪店でも売られている。基本男性だけが出入りする場所という意味ではなるほどという気はする。ミックも意を決して理髪店に入ってみるも、親しい友人で牧師のアンドリューがきている店では当然買うことができない。この「牧師が友人」というのもまたかなりのハードルなわけで。ミックとケイトにアンドリュー、さらにはジャッキーと彼女のボーイフレンドのベイカー(彼がなんともいいキャラに化けるところがおもしろい!)のごたごたまでからんできて、ラブを巡る問題だらけで大騒ぎ。こういう大人向けのコメディというのは最近あまり見かけない気がする。自分が大人になったからそう感じるだけなのか。子どもは観てはいけませんって言われていた深夜のテレビ番組みたいなもので、実際たいして過激なわけでもない。この映画も、お色気シーン(死語?)よりも、みんながどうやって折り合いをつけていくか、という心理に重きが置かれていて、それがコミカルなテイストで描かれていてとても楽しい。加えて、70年代前半のイギリスはファッションもほんと素敵。特にコートはどれも可愛くて、ああいうの欲しい!となってしまう。あと、がんがん車をぶつけては「見た目たいしてわからないからだいじょうぶ〜」とか言って流しちゃってるおおらかさも好き。バンパーはぶつけるためにあるのだ。


ポスターのイラストも可愛い。