金田一耕助の冒険(The Adventures of Kosuke Kindaichi) | CAHIER DE CHOCOLAT

金田一耕助の冒険(The Adventures of Kosuke Kindaichi)

IMG_8550.JPG
先日観た『ハウス』(こちらも大林監督の初期作品)がすごく気に入った、音楽がとても好きだと思った、もともと横溝正史の作品好き、で観た。思ってた以上にめちゃくちゃで思ってた以上に楽しかった。まずはやっぱり音楽の良さ。映画のうさんくささとポップで爽やかでほんのりノスタルジーを感じる音楽との組み合わせがすごくいい。



劇中ではふたつの主題歌が色々なバージョンで流れます。どのアレンジもそれぞれ良くて、楽曲自体の良さを感じる。ディスコで少年のシンガーが歌うバージョンがまたグー。主題歌が最初に流れてくるのは和田誠さんのイラストのオープニングのアニメーション。これがなんとも可愛い。『真説 金田一耕助』の表紙にも登場している金田一が等々力警部と一緒にてくてく歩きます。



この映画で金田一耕助を演じるのは古谷一行さん。なんか私の思っていた古谷版の金田一と違っていた。こんなに可愛らしくて、かっこよかったっけ!?とびっくり。この作品は、全編を通して映画、CM、音楽、横溝作品などのパロディ満載の“パロディ映画”。しかも、どう考えてもすぐにわからなくなってしまいそうなもののパロディもおかまいなしに使われていて、これがテレビドラマではなくて劇場公開映画だったというのはかなりの驚き。今観てもわかるネタもあるけれど、やっぱりわからないものもあって、作品として成り立ってないようにも思える。でもそれがシュールで、解けない謎、難解な芸術みたいな状態になっている……ともいえるかも。意図してなのかどうかはわかりませんが。パロディ以外にも、明らかに計算が合わない時間の経過があったり(例えば、金田一耕助の小説が書かれた年を基準にして言うセリフは、この映画の金田一の年齢ではありえないことになってしまうけど、なんとなくお茶を濁してスルーされる、とか)、登場人物が映画やドラマ内の金田一について話していたり……と第四の壁を壊すつくりでおもしろい。めちゃくちゃな作品だけど、もちろん複雑にからんだ謎が最後に解ける気持ち良さもある。最後の最後にはもうひと回り考えさせるモノローグも。評価の分かれる作品だそうですが、私は大好きです。