シリーズ「外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律第13条」第7話 | 知財タイムス
2009年04月30日(木)

シリーズ「外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律第13条」第7話

テーマ:シリーズ「外国等に対する我が国の民事裁判
長い絶対免除主義時代

当初、絶対免除主義を採用していた点においては、我が国も他国と同様でした。
昭和3年の大審院の決定(大審院昭和3年12月28日決定・民集7巻12号1128頁)は、絶対免除主義の立場に立つことを明らかにしました。以来、我が国においては、長きに渡って、絶対免除主義が貫かれることになりました(衆議院第171国会法務委員会平成21年4月7日第5号における早川忠孝法務大臣政務官の説明)。
しかしながら、近年になって、制限免除主義の採用又はこれへの配慮を示す下級審の裁判例が現れるようになり、平成14年4月12日の「横田基地事件」最高裁判決(民集56巻4号729頁)では、その傍論において、国際的に制限免除主義への変化が生じていることに言及されました(法制審議会主権免除法制部会第1回会議 補足資料7「主権免除法担当者試案補足説明」2頁)。
全文を掲載します。

         主    文
       本件上告を棄却する。                    
       上告費用は上告人らの負担とする。
         
         理    由
 第1 上告代理人榎本信行,同吉田栄士の上告理由について
 民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは,民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ,本件上告理由は,違憲及び理由の不備をいうが,その実質は単なる法令違反を主張するものであって,明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。
 第2 上告代理人榎本信行,同吉田栄士の上告受理申立て理由第四,第五について
 1 本件は,上告人らが,我が国に駐留するアメリカ合衆国(以下「合衆国」という。)軍隊の航空機の横田基地における夜間離発着による騒音によって人格権を侵害されているとして,被上告人である合衆国に対して,午後9時から翌朝7時までの間の上記航空機の離発着の差止めと損害賠償を請求した事案である。
 2 原審は,日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和35年6月23日条約第7号)18条5項の規定は,上記相互協力及び安全保障条約に基づき我が国に駐留する合衆国軍隊の構成員の公務執行中の不法行為に基づく損害賠償請求訴訟について,合衆国に対して我が国の裁判権に服することを免除したものであり,差止請求訴訟についても同規定の趣旨が類推適用されるとして,被上告人の民事裁判権免除を認め,上告人らの本訴請求は不適法であり却下すべきものであるとした。
 3 しかしながら,前記規定は,外国国家に対する民事裁判権免除に関する国際慣習法を前提として,外国の国家機関である合衆国軍隊による不法行為から生ずる請求の処理に関する制度を創設したものであり,合衆国に対する民事裁判権の免除を定めたものと解すべきではない。
 外国国家に対する民事裁判権免除に関しては,いわゆる絶対免除主義が伝統的な国際慣習法であったが,国家の活動範囲の拡大等に伴い,国家の私法的ないし業務管理的な行為についてまで民事裁判権を免除するのは相当でないとの考えが台頭し,免除の範囲を制限しようとする諸外国の国家実行が積み重ねられてきている。しかし,このような状況下にある今日においても,外国国家の主権的行為については,民事裁判権が免除される旨の国際慣習法の存在を引き続き肯認することができるというべきである。本件差止請求及び損害賠償請求の対象である合衆国軍隊の航空機の横田基地における夜間離発着は,我が国に駐留する合衆国軍隊の公的活動そのものであり,その活動の目的ないし行為の性質上,主権的行為であることは明らかであって,国際慣習法上,民事裁判権が免除されるものであることに疑問の余地はない。したがって,我が国と合衆国との間でこれと異なる取決めがない限り,上告人らの差止請求及び損害賠償請求については被上告人に対して我が国の民事裁判権は及ばないところ,両国間にそのような取決めがあると認めることはできない。
 以上によれば,本件訴えは不適法であり,これを却下すべきものとした原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 福田 博 裁判官 河合伸 一 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山継夫 裁判官 梶谷 玄)


本判決について「駐留米軍の夜間飛行については外国軍隊の主権行為として裁判権免除を認めたが、国家の業務管理行為についてまで民事裁判権を免除するのは相当ではないと述べて制限免除主義への転換を示唆」しているとする見解もありますが(奥寺直也・小寺彰編「国際法キーワード<第2版>」(有斐閣,2006)85頁)、「制限免除主義への転換を示唆」とまでいうのは少し穿ち過ぎだと思います。

いずれにせよ、絶対免除主義でなければならないという論調はもはやなく、制限免除主義へ移行するのも時間の問題だったといえるでしょう。

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