こんにちは。

行徳の訪問マッサージ師　田口です。

脳出血を発症したSさん（50代男性）は、右片麻痺（かたまひ）の後遺症がある患者さんです。

Sさんは片麻痺ではありますが、杖をついて自力で歩ける人です。

リハビリがてら、自宅周辺を歩くことが日課になっています。

こうした、ある程度安定して歩ける患者さんに対して、私が好んで行うことがあります。

それは、「重心をずらす」ことです。

人が立った状態では、重心は『支持基底面』（しじきていめん）の中心に存在します。

支持基底面とは、体が地面と接している部分を、最短距離の円で囲んだ面のことを言います。

文字の説明だけではよくわかりませんが、図を見れば簡単です。

地面と接する両足を最短距離で囲んだ部分が、支持基底面です。

真っ直ぐに立った状態なら、重心はこの円の中心に位置しているはずです。

そして中心ではなくても、この円の中に重心（上半身）がある限り、姿勢は安定します。

重心が円を外れてしまうと、バランスを崩した状態になります。

人が転ぶときは、重心（上半身）は円を外れていますよね。

「重心をずらす」とは、まさに重心が円を外れた状態にすることです。

私が横で患者さんを支えながら、私に向かって上半身を預けてもらうのです。

こうすることで、上半身が円の外に出ますよね。

歩行が安定しない患者さんの場合、思い切って上半身を預けてくれる人はいません。

なぜなら、バランスを崩すことへの恐怖心が勝るからです。

実はSさんも私が訪問し始めた頃は、重心をずらすことを思い切ってできないものでした。

それが今では、私が驚くくらい重心がかかってきます。

それだけ姿勢が安定し、自分で重心をうまくコントロールできるようになったのですね。

そこまで重心のコントロールがうまくなった理由は、いくつか考えられます。

最も大きい理由は、Sさんが毎日のように歩いていることだと思います。

聞くと、1日に1万歩を目標にしているそうです。

健常者でも、なかなかできないことですね。

歩くことは、人の基本動作です。

下半身だけでなく上半身も使うので、全身のバランスが自然に調整されます。

また瞬時に重心の移動も伴うので、総合的なリハビリに最適な動作のです。

これを毎日1万歩も行っているのですから、Sさんの動作の上達が速い訳ですね。

やはり歩くことは基本なので、とても良い運動になります。

しかしSさんも、始めからうまく歩けた訳ではありません。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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重心の安定が歩行の安定になる