第1話「憧れの横顔」
鏡の前に立つたびに、ため息が出る。
増えていく白髪。
気づけば、うねりが強くなって、髪は広がり、まとまらない。
――どうして、こんなに扱いづらいの？
若い頃は、アイロンさえあればなんとか誤魔化せた。
けれど今は、朝のセットをしても数時間で元に戻ってしまう。
職場でふとガラスに映った自分を見ると、思わず目を逸らしたくなる。
そんなある日、駅前の雑踏で、目を奪われた。
ツヤのある髪をなびかせて歩く女性。
年齢は自分とそう変わらないはずなのに、どこか若々しく、自信に満ちた横顔だった。
――どうしてあんなにきれいなんだろう。
私だって、本当は…。
心の奥に眠っていた願いが、ゆっくりと顔を出す。
「私も、変わりたい」
その夜、布団の中でスマホを握りしめながら検索を重ねた。
「白髪 うねり 改善」
「髪質改善 美容室」
何度もスクロールした指が、あるサロン名で止まった。
――髪質改善美容室 ヒライス千歳船橋。
口コミには「髪が生まれ変わった」「自分の髪じゃないみたい」そんな言葉が並んでいた。
ページに映る施術写真の“ツヤ”に、心臓が跳ねる。
きっと、ここなら。
でも、本当に私なんかが…。
迷いと期待の間で揺れながらも、指先は無意識に「予約する」を押していた。
その瞬間、胸の奥で何かが動いた気がした。
変わりたい。
きれいになりたい。
――これは、私の新しい物語の始まり。
第２話へ続く
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