放映日:1982/5/21
ストーリー
西條は非番を控え、石塚と竹本と一緒にパブ「ビッグベン」で酒を飲んでいた。
河村真由美(15歳)(代ゆかりさん)という少女が店内に駆け込み、西條と竹本に、変な男に追跡されそうになり、誘拐されそうになっていることを訴え、助けを求めた。
西條と竹本は周辺を調査したが、不審な人物を発見できなかった。
丸合不動産社員の桜井竜也(32歳)が「ビッグベン」の付近を待ち伏せていた。
真由美は石塚に、誘拐されそうと思った理由について、何となくと答えており、付近に不審な人物がいないことを知ると安心した。
真由美は石塚と西條と竹本に、父親の河村健三と旅行中で、付近にあるスターホテルに宿泊中であることを伝えた。
西條は真由美をスターホテルまで送迎した直後、自分の姿を見て逃走する桜井を発見し、追跡したが、途中で見失ってしまった。
翌朝、桜井の遺体が資材置き場で発見され、七曲署捜査一係捜査員が現場に急行した。
桜井は銃弾が心臓に命中して死亡しており、死亡推定時刻が午前1時だった。
西條は桜井の顔を見て、石塚に、昨日に自分が追跡した男と同一であることを報告した。
桜井が勤務していた丸合不動産は、半年前に城西署管内で発生した、1億2000万円強奪事件の被害者だった。
スターホテルのフロント係は西條に、午後10時頃に真由美がホテルを訪れたこと、約10分間、ロビーの椅子に座っていたが、またタクシーに乗って帰って行ったことを証言した。
西條はタクシー運転手から、真由美が午前0時57分頃に新宿駅の東口付近でタクシーを降りたこと、眠そうに欠伸していて屈託がなかったことを聞き出した。
拳銃の条痕検査の結果、桜井の射殺に使用された拳銃が、半年前の1億2000万円強奪事件に使用された拳銃と同一であることが判明した。
事件は高架橋下で、4人組の男に現金輸送車が襲撃され、1億2000万円が入ったジュラルミンケースが強奪されたというものだった。
事件の手掛かりは皆無で、半年経過した現在でも捜査が一向に進行していなかった。
強奪された現金1億2000万円は、不動産会社が土地を購入する金だった。
西條は情報を漏洩したのが桜井であることから、残りの強盗犯3人が桜井を抹殺したのではないかと意見したが、山村に、捜査が迷宮入りしかけていたため、今の時点で情報源の桜井を殺害する必然性が皆無であると反論された。
桜井は独身で前科がなく、勤務状態も良好で、城西署のマークから外されており、疑わしい点が全く無かった。
しかし、桜井は犯行時間には現場付近のマンションの建設現場に行っていたが、現場を出た時刻が不明瞭であり、犯人4人組の一人である可能性もあった。
事件は大金を入手した犯人4人組の仲間割れである疑惑が浮上した。
桜井の昨夜の足取りは不明だが、西條が桜井を目撃したのは午後10時頃だった。
西條は真由美も事件に関係していると推測し、藤堂に真由美を捜索させるように申請し、藤堂から承諾された。
藤堂は西條に竹本を同行させ、他の捜査員には桜井の身辺調査を命令した。
西條と竹本は新宿駅東口付近の深夜喫茶とディスコを片っ端から調査することにした。
西條は真由美が、自分に父親と同行したという嘘を吐いたのかということ、桜井が付近にいたのかを疑問に思っていた。
ディスコの従業員は西條と竹本に、真由美が午前1時から閉店時刻の午前4時まで、椅子で居眠りしていたことを教えた。
真由美は赤いトレーナーを着用し、赤いポシェットと子豚の縫いぐるみを所持していた。
西條と竹本は喫茶店で食事中、東洋テレビの生放送の歌番組「タウンワイド」の観客席に真由美がいるのを発見し、東洋テレビに急行した。
真由美は「タウンワイド」の観客が歌手に、サインを求めて群がっているのを眺めていたが、その直後、篠原伸夫(高岡一郎さん)という男にエレベーターの中に引きずり込まれてしまった。
西條は1階の受付に竹本を残し、「タウンワイド」のスタジオがある6階に階段を上って急行した。
竹本はエレベーターの扉が開いた直後、真由美が悲鳴を上げながらも篠原に取り押さえられ、再びエレベーターで上階に上っていくのを目撃した。
篠原は6階でエレベーターを降り、真由美を連れて非常階段を下りていったが、途中で真由美を置いて逃走した。
真由美は人形を落としそうになると、必死に抱き締めた。
西條は真由美と再会した。
竹本は逃走する篠原を追跡したが、見失ってしまった。
真由美は西條の覆面車に乗ろうとした直後、東洋テレビに駆けつけてきた、家庭教師の梶本(潮哲也さん)と再会した。
梶本は一係室を訪れ、藤堂と山村と野崎と石塚と竹本に、真由美が昨日に家出をしたため、河村から捜索を依頼されたことを説明し、偶然見たテレビに真由美が映っていたのに呆れたが、誰かに襲撃されたと聞いて驚愕したことを話した。
河村は漫画家で劇画を書いており、竹本の中学校時代には一世を風靡していたが、最近では売れなくなっていた。
真由美は西條に、河村が最近構ってくれないので家出し、河村を心配させようとしただけであると述べていた。
梶本は旅行会社「三ツ葉旅行サービス」の添乗員をしていた経験から、英語を流暢に話すことができ、真由美の家庭教師をしていた。
東洋テレビの非常階段の手摺に付着していた指紋から、篠原の身元が割り出された。
篠原は戸川組系のバーのバーテンダーで、傷害の前科2犯だった。
真由美は自分を誘拐しようとしたのが篠原であると断言した。
西條は河村と篠原が真由美を襲撃したが、真由美が桜井と篠原を知らないことを不審に思っていた。
山村は真由美に、河村に声を聞かせるように促した。
梶本は電話で河村に、真由美の無事を告げた。
真由美は梶本から電話を代わり、河村(中井啓輔さん)に謝罪した。
梶本は河村に、これから真由美を河村宅まで送迎することを電話し、電話を切った。
藤堂と山村は梶本が真由美について、拉致されかけたのにまるで気にしていないことを疑い、河村も気になるようになっていた。
梶本は真由美を乗用車に乗せて送迎していたが、石塚と西條に尾行されていた。
真由美は梶本に、家を出た理由が家出ではなく、河村から、何者かに狙われているため、しばらくどこかに隠れるように指示されたからであることを告白した。
真由美は河村から、誰にもそのことを言わないように念押しされていたため、警察にもそのことを話していなかった。
梶本は石塚と西條の尾行に気付くと、スピードを上げて、河村宅と違う方向逃走した。
篠原は1億2000万円強奪事件の5日前にバーテンダーを退職しており、所在不明の状態だった。
岩城は梶本を調査し、三ツ葉旅行サービスを1年前(1981年頃)に退職しているが、その理由が拳銃の密輸であることを突き止め、山村に報告した。
三ツ葉旅行サービスは会社の信用にかかるため、内々で処理していた。
山村は梶本も強盗犯の線が濃厚となったため、岩城に交友関係と遊び場の調査を命じた。
野崎は河村宅を訪れ、河村と面会していた。
河村は野崎に、まだ帰宅していないことを話した。
河村は野崎から桜井と篠原の写真を見せられ、知らないと述べたが、室内に篠原を匿っていた。
篠原は野崎をうまく追い返した河村を褒めつつも、河村に現金の隠し場所を詰問した。
梶本は狭い路地に乗用車を乗り捨てて、石塚と西條の覆面車の進路を塞ぎ、路地に停まっていた別の乗用車に乗り換えて、真由美を連れて逃走した。
岩城の聞き込みで、河村と梶本と篠原が同じサウナの常連客であることが判明した。
山村は梶本と篠原が真由美を追い回しているのは、1億2000万円を巡って争いが起きたものと推理していたが、証拠が皆無だった。
原は河村と桜井が昔に蒲田に住んでいたこと、桜井が町の野球チームのキャッチャーで、河村がピッチャーであることを突き止め、山村に報告した。
岩城と竹本は梶本を追跡するために出動した。
石塚と西條は二手に分かれ、梶本を追跡していた。
梶本は真由美に、強盗事件を計画したのが河村であること、河村が強奪した現金を預かり、1年間凍結することを決定したことを告げた。
梶本は河村を信用できなくなり、強引に家庭教師として真由美に接触したが、桜井が真由美を人質にして河村を脅迫したため、桜井を射殺していた。
西條は霞街道で梶本の乗用車を発見し、追跡した。
梶本は乗用車のダッシュボードに隠していた拳銃を取り出したが、真由美の妨害を受け、前方を走行中のトラックを回避しようとして、乗用車が横転した。
梶本は西條の威嚇射撃にも動じず、逃走した。
西條は真由美を救出し、額の傷を拭い、覆面車に戻ろうとしたが、覆面車内で先に待ち伏せていた梶本に拳銃を突き付けられた。
梶本は桜井を殺害しているため、既に殺人を何とも思わなくなっており、西條から拳銃を強奪し、覆面車を運転するように脅迫した。
篠原は河村の反対を無視し、河村宅の室内を大きな物音を立てて捜索したが、再三無視されて激昂した河村に後頭部を花瓶で殴られ、死亡した。
西條は梶本の代理人と名乗って、河村に電話をかけ、真由美が梶本に拳銃を突き付けられていること、梶本の要求が現金を持って山中湖に行くようにというものであることを告げた。
河村親子は以前、山中湖にドライブに行ったことがあった。
西條は河村に、1億2000万円全額を持ってくるように要求した。
梶本は全額を要求すれば、河村が警察に通報するかもしれないことを危惧し、河村には1億円を持ってくるように要求していた。
梶本は西條に自首するように説得されても、それを無視し、真由美に銃口を向けており、西條には後部座席に乗るように脅迫した。
梶本は河村が真由美を見殺しにできるような性格ではないことから、現金を持ってくるものと予測していた。
野崎と竹本は河村宅を張り込み中、藤堂から踏み込んで河村を逮捕するようにという命令を受け、河村宅に突入し、篠原の遺体を発見した。
河村は自宅の裏は塀を一つ挟んで寺の境内となっていることを利用し、裏から逃走していた。
梶本は西條の両手に手錠をかけ、後部座席のアシストグリップに手錠の鎖をかけていた。
梶本は最終的に西條と真由美を殺害する気でいた。
山村は梶本の乗用車が横転した河川敷に到着し、石塚と岩城と合流した。
石塚は西條が梶本に真由美を人質に取られ、覆面車を強奪され、運転を強要されたものと推理した。
野崎と竹本は河村宅から、現金輸送車襲撃の未完の劇画原稿を発見していた。
物語の内容は、街で拾った男と一緒に現金輸送車襲撃を決行し、現金を1年間凍結するというものであった。
河村は売れない原稿の代わりに、犯罪の夢を実行していた。
梶本は山中湖で覆面車を停め、覆面車に西條を置いていき、真由美を連れて湖畔に向かった。
西條は所持していた十徳ナイフからピンセットを取り出し、手錠の鍵を外そうとしていた。
河村がタクシーで山中湖に急行し、湖畔で梶本と真由美と会った。
西條は手錠の鍵を外し、湖畔に向かって走る途中、河村が梶本と真由美に向かって歩み寄る姿を見た後、湖面を疾走する水上スキーに注目した。
河村は梶本に向かって現金入りの鞄を投げたが、中身が新聞紙だった。
河村は梶本に拳銃を突き付けられると、1億2000万円を買い戻し保証付きのダイヤモンド6個に変えて蘭の鉢に隠したが、それが無くなっていたことを弁明した。
河村は2,3日前に桜井が自分の留守中に黙って河村宅を張り込んでいたことから、河村がダイヤモンドを所持しているのではないかと訴えた。
梶本は河村と真由美を殺害し、後から現金を探そうとしていた。
西條は水上スキーを利用して、湖面から梶本に組み付き、梶本を叩きのめした。
石塚と岩城が山中湖に駆けつけ、梶本を逮捕した。
真由美の額の傷は軽傷だった。
西條は七曲署まで真由美を連れて行った。
真由美は未成年であるため、家庭裁判所に回されるが、それまで当分、七曲署に留置されることになった。
西條は真由美が誘拐されそうと口走ったのに、その理由を打ち明けなかったこと、縫いぐるみの中にダイヤモンドが入っていたのを隠していたことを厳しく追及した。
西條は真由美が病院で傷の治療を受けている隙に、ダイヤモンドと買い戻し保証書を押収していた。
真由美はダイヤモンドを現金に換え、外国で使おうとしていた。
真由美は河村を犯罪者にさせた1億2000万円が憎いと自供していた。
メモ
*真由美に、「刑事にしてはかっこ良過ぎるから刑事に見えない」と言われ、「大人をからかうな」と一喝するドック。
*縫いぐるみに証拠品が入っているのは「淋しがり屋の子猫ちゃん」を思い出す。
*ドックの「刑事の勘」を「二日酔いの勘」とからかうラガー。
*ディスコ従業員にも刑事なのかを疑われるドック。
*喫茶店で食事中、ピザトーストを食べるラガー。ドックに「食べ過ぎ」と言われるも、「食べないと体に悪い」と返す。
*ドックは溶けたチーズが嫌いらしい。
*久々に覆面車の車載電話が登場。
*十徳ナイフのピンセットで手錠の鍵を外すことに成功するドック。スキルの高さを見せる。
*水上スキーで梶本に接近するドック。絵面自体はかっこいいのだが、湖面からの距離がかなり遠く、飛び上がってもたどり着けないような。
*考えてみると、真由美が早めにドックにダイヤモンドのことを打ち明けていれば、河村は強盗罪だけで済み、篠原も逮捕されていたので、真弓の罪はかなり重い。
*ジプシーの出番が極端に少ない。
*今回は後期のメイン脚本家の一人である、大川氏の『太陽』初執筆作。
キャスト、スタッフ(敬称略)
藤堂俊介:石原裕次郎
西條昭:神田正輝
竹本淳二:渡辺徹
岩城創:木之元亮
原昌之:三田村邦彦
松原直子:友直子
梶本:潮哲也
河村真由美:代ゆかり
河村健三:中井啓輔、篠原伸夫:高岡一郎(現:谷本一)、大阪憲
大木裕司、松下祐子、鈴木正人、藤井祥恵、藤原益二
石塚誠:竜雷太
野崎太郎:下川辰平
山村精一:露口茂
脚本:小川英、大川俊道
監督:高瀬昌弘