第378話「やさしい棘」(通算第588回目)

放映日:1979/10/26

 

 

ストーリー

石塚と岩城と五代は事件解決後、おでん屋の屋台でビールを飲んでいた。

謎の男が五代を監視していた。

五代は帰宅途中、中央公園の水飲み場で水を飲んでいたが、突然に謎の男に後頭部を鉄パイプで殴られ、気絶した。

五代は病院に搬送され、翌日、石塚と岩城から事情聴取された。

五代は謎の男の顔を目撃していなかった。

最近、鉄パイプ強盗犯が都内で事件を頻発させており、その強盗犯が七曲署管内に現れたものと思われた。

五代は凶器が鉄パイプだったと断定した。

野崎は被害者が若手刑事の五代であるため、マスコミによる打撃を危惧した。

藤堂は捜査員に目撃者の捜索を命令した。

五代は頭の傷が完治していないにもかかわらず、看護婦の制止を強引に振り切り、退院した。

公園付近でホットドッグの移動販売車を経営している鈴木市男(河原崎長一郎さん)は岩城の聞き込みに対し、昨夜も公園付近で営業していたが、何も目撃しなかったと返した。

五代は岩城と合流した後、鈴木と久しぶりに再会した。

五代は鈴木の弟の鈴木圭二郎(伊東平山さん)の、警察学校時代の友達で、兄弟のように親しかった。

しかし、圭二郎は刑事に昇進できず、交通事故で死亡していた。

鈴木は昔、スナックを経営していたが、閉業してホットドッグの移動販売車を開業していた。

五代は鈴木に、昨夜に謎の男に鉄パイプで襲撃されたことを話した。

午後9時40分、五代は一係室に戻り、強盗犯の犯行に備え、一係室に残った。

岩城は五代に、病院に戻るように勧めた。

鈴木が電話ボックスから、一係室にいる五代に、昨夜に飛び出してきた鉄パイプ強盗犯と衝突し、顔を目撃したが、脅迫されたという内容の電話をかけてきた。

鈴木は五代の顔を見たら、黙っているのが心苦しくなっており、五代に自宅に来るように促した。

五代は鈴木宅を訪れ、圭二郎の遺影に一礼した。

鈴木は五代に精一杯協力することを誓った。

鈴木の証言で、強盗犯のモンタージュ写真が作成された。

強盗犯は年齢30歳前後、中肉中背の男性と推定された。

野崎と岩城は公園で鈴木と強盗犯が衝突した場所で、強盗犯のものと思われるタバコの吸い殻とマッチの空き箱を発見していた。

藤堂は五代に鈴木の警護を命令した。

喫茶店「マイアミ」のマスターは岩城に、モンタージュの男が、時々喫茶店に来て漫画を読んでいる男と似ていると証言した。

五代はモンタージュの男が喫茶店で発見されたことを告げ、鈴木の移動販売車に乗せてもらい、「マイアミ」に急行した。

モンタージュの男の瀬戸孝(35歳)(広田正光さん)が「マイアミ」に入り、コーヒーを注文した。

鈴木は断言できないが、犯人の男が瀬戸であると間違いないことを伝えた。

瀬戸は一昨日の事件発生時刻にはパチンコをしていたと述べていたが、証人がいなかった。

五代は藤堂に、瀬戸が自分と岩城を見た時、明らかに動揺していたことを報告した。

瀬戸には前科がなかったが、半年前に工場を退職してからは定職に就かずにぶらぶらしていた。

五代は犯人を瀬戸と断定し、藤堂に逮捕状を申請したが、連行できるまでの証拠が無いことを理由に断られた。

五代は瀬戸を尾行し、自宅アパートを張り込んでいた。

五代は自宅を出発する瀬戸を尾行したが、踏切で見失ってしまった。

五代は鈴木が狙われることを危惧し、鈴木のもとに駆けつけたが、無事だった。

鈴木は五代を、瀬戸の居場所を突き止めただけでも手柄であると激励した。

岩城は五代に鈴木の警護を任せ、石塚と一緒に瀬戸の足取りを追おうとしたが、藤堂から矢追3丁目の裏通りで鉄パイプ強盗事件が発生したという連絡を受けた。

五代は、鈴木が付近に派出所があるから安心であると言ったため、岩城と一緒に覆面車で矢追3丁目に急行した。

岩城と五代は警察官(別所立木さん)と合流した。

警察官は強盗犯が、公衆便所から出てきた、城南編機のセールスマンの沢武男(柿沼大介さん)という男であることを示した。

五代は沢が自分を襲撃したと思い、叩きのめしたが、警察官から沢が強盗犯であると伝えられた。

沢は犯行を否認した。

沢は野崎と岩城に取り調べられていた。

沢は自分が強盗犯であることを否定し、野崎から午後9時の公園で何をしていたのかと質問され、編み機のセールスで歩き回って疲労していたので休んでいたこと、成績が悪いために夜もセールスをしていたと供述した。

現場に残された足跡と沢の靴跡が一致した。

石塚と島は沢がセールス訪問をしていた近辺を調査し、セールス訪問を受けた者がいないこと、沢がセールスの成績が不振なのに競馬やバーで豪遊しているという情報を入手していた。

鉄パイプ強盗の容疑者が沢である可能性が濃厚となった。

沢は鈴木の証言に固執し、沢が昨夜、鉄パイプも強奪した財布も所持していなかったと意見したが、石塚に途中で処分したのではないかと反論した。

強盗犯の凶器の鉄パイプが、神社で野球をしていた少年により発見された。

神社は沢がいた公園とはかなりの遠距離にあった。

鑑識の結果、鉄パイプに付着していた血痕は昨夜の被害者のものだった。

沢は犯人ではないとみられた。

山村は瀬戸と沢の両方に容疑がかかっていることを疑問に思った。

島は沢が逃走中に鉄パイプと金を共犯の見張り役に渡し、見張り役が鉄パイプを処分したのではないかと意見した。

瀬戸と沢にはつながりがなかった。

藤堂は沢を釈放した。

五代は瀬戸の捜索に奔走した。

鈴木は岩城に沢の写真を見せられたが、沢については顔も会社も全く知らなかった。

五代は鈴木の警護を岩城と交代しようとしたが、岩城から藤堂の指示が城南編み機の張り込みであることを告げられた。

五代は瀬戸の逮捕に執念を燃やしており、圭二郎の遺影に、鈴木と協力して犯人を逮捕したことを報告したかった。

岩城は五代に、誰が沢を逮捕しても同じであり、一人では捜査ができないと助言した。

岩城は鈴木宅を張り込み中、鈴木がいつまでたっても営業に出発しないため、鈴木宅に入ったが、鈴木が姿を消していた。

鈴木は自宅を抜け出していた。

五代は張り込み中、霊安室で圭二郎の遺体と対面した時のことを思い出していた。

圭二郎は泥酔し、歩道から車道に足を踏み外してしまったところをトラックに轢かれ、不運の死を遂げていた。

鈴木が五代の前に現れ、一人で外出したところを瀬戸に尾行されたが、うまくまいて、逆に瀬戸を尾行したことを話した。

鈴木は五代に、瀬戸が愛人のアパート「平和荘」205号室にいることを説明し、強引に五代を瀬戸の愛人のアパートに案内した。

五代は「平和荘」205号室に強引に突入し、瀬戸と格闘になった。

瀬戸はアパートの階段から屋根に上り、屋根を降りて逃走したが、格闘の末に五代に逮捕された。

瀬戸は五代に激しく詰問されたが、自分が鉄パイプ強盗犯ではないと言い張った。

瀬戸は逃走した理由について、空き巣事件を起こし、庭先から植木を、玄関から靴を強奪したため、その件で捜査員に追跡されていると思ったからであると供述した。

藤堂は五代に、自分に無断で持ち場を離れたことを責め立てた。

沢は城南編機から姿を消していた。

瀬戸は五代に殴られた事件当時、全く別の家の玄関先で物色しているのを付近の主婦に目撃されており、アリバイが成立した。

沢の部屋から、鉄パイプ強盗の被害品目の指輪が発見された。

沢が鉄パイプ強盗犯であることが断定された。

沢と瀬戸は全く似ていなかった。

野崎は瀬戸に鈴木のことを質問し、瀬戸が鈴木を知っていることを聞き出した。

瀬戸は鈴木のホットドッグの移動販売車を正確に記憶していた。

瀬戸は約1ヶ月前、ある家に侵入しようとした時、家の先に停まっていたホットドッグの移動販売車の運転手の鈴木に顔を目撃され、逃走していた。

瀬戸はその後、何者かに尾行されているように感じ、平和荘の205号室に逃げ込んでいた。

瀬戸を尾行していたのが鈴木であること、鈴木が意図的に五代を騙した可能性が出た。

さらに、公園で五代の後頭部を殴ったのも鈴木である疑惑が浮上した。

五代は鈴木を信頼しており、捜査員の意見に激怒して一係室を飛び出した。

岩城は鈴木を警護していた島と合流した。

五代は鈴木宅を訪れ、鈴木に瀬戸を逮捕したが、瀬戸が鉄パイプ強盗犯ではないという線が出ていることを告げた。

鈴木は自分が単なる目撃者で、瀬戸が犯人でなくても知らないと冷淡な態度をとり、五代を拒絶した。

鈴木は五代に、圭二郎の死が事故ではなく自殺であることを告げ、圭二郎を殺害したのが五代であると激しく糾弾した。

五代は圭二郎が好きで、自分だけが刑事に昇進した時も激励していた。

圭二郎は刑事に出世した五代に慰められ、生きる気力を失っており、残される鈴木の気持ちを思い、泥酔してつまずいたふりをして車道に飛び出し、自殺していた。

鈴木は心の優しい圭二郎を五代が自殺に追い込んだと思い、五代が酒を飲んでいい気持ちでいるのを目撃し、激怒して五代を鉄パイプで殴っていた。

岩城は五代に声を掛けようとしたが、島に放っておくように促された。

島と岩城は山村から、2丁目のモーテル付近で沢らしい男を目撃したという連絡を受け、現場に急行した。

島と岩城は沢が宿泊していた部屋に突入し、強盗及び傷害容疑で沢を逮捕した。

沢が鉄パイプ強盗を全面自供したが、五代が鉄パイプで殴られた事件については、明確なアリバイがあった。

五代が辞表を提出した。

山村は鈴木の前に現れ、ジュースを購入し、鈴木に五代が辞表を提出したこと、辞職の理由が本気になって友達を励ましたのに、それが通じなかったからであることを話した。

五代は街を歩き、自宅のアパートに帰宅しようとしていたが、アパートの前に鈴木がいた。

鈴木は五代が圭二郎のことを思っていたことを知り、誰を恨むこともなかったが、誰かを恨んでいれば気が休まったことを告白し、五代に謝罪した。

五代は鈴木に、無神経な言葉で圭二郎を励ましたことを謝罪した。

鈴木は五代に、圭二郎の分まで刑事の仕事を続けてほしいと涙ながらに懇願した。

鈴木が、沢がドブに捨てた凶器の鉄パイプをいち早く発見し、境内の空き地に捨てたことを自供した。

鈴木は情状酌量で実刑にならないと思われた。

五代は辞職を撤回した。

 

 

メモ

*伊東氏は『太陽』では悪役が多いが、今回は既に死亡している役。

*ロッキーの、「誰が沢を逮捕しても同じ」っていう助言が良い。

*スニーカーの警察官の制服姿は初。

*瀬戸の逮捕シーンのカメラアングルが独特。

*冷淡な部分があまりにも怖い鈴木。

*スニーカーが辞表を提出した際、辞職させまいと一係室のドアノブを手で塞ぐナーコが健気。

*スニーカー、1回目の辞表提出。この後、「紙飛行機」と「スニーカーよ、どこへゆく」でも辞表を提出する(撤回するが)。「スニーカーよ、どこへゆく」と「六月の鯉のぼり」では、スニーカーの辞表提出は2回となっており、3回のうちのどれかがカウントされていないようだ。

*ラスト、ボスの机の引き出しの中には、未受理となった大量の辞表が入っていた。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

岩城創:木之元亮

五代潤:山下真司

野崎太郎:下川辰平

 

 

松原直子:友直子

鈴木市男:河原崎長一郎

鈴木圭二郎:伊東平山(現:吾羽七朗)、沢武男:柿沼大介、瀬戸孝:広田正光

警察官:別所立木、刀原章光、荒瀬寛樹、霊安室の警察官:町田幸夫

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:畑嶺明、小川英

監督:櫻井一孝