第374話「直感」(通算第584回目)

放映日:1979/9/28

 

 

ストーリー

夜、石塚は屋台で島と一緒に酒を飲んでいた。

島は、泥酔した石塚に帰宅を促していた。

乗用車の運転手が石塚と島を狙って、ライフルで発砲し、銃弾が島に命中し、倒れた。

石塚は酔いが覚め、事態をすぐに把握し、乗用車のボンネットに飛び乗ろうとしたが、失敗した。

乗用車は途中でラーメン屋の屋台に少し衝突しつつ、そのまま逃走した。

島は重傷を負い、救急車で病院に搬送された。

医師は石塚に、島の体内から銃弾を摘出したが、銃弾が心臓すれすれに食い込んでいたため、島が重態であると説明した。

島を狙撃した乗用車は青葉団地横の路上に乗り捨てられていたが、盗難車で、犯人の手掛かりが何も発見されなかった。

犯人が使用した銃は弾丸から?モデル700と判明した。

石塚は事件が一瞬のことだったため、犯人の顔を全く見ておらず、激しい責任を感じていた。

山村はライフルの線を、石塚は目撃者と現場付近の捜査に出発した。

ラーメン屋台の主人は犯人の乗用車が屋台の提灯に衝突したため、犯人を目撃していたが、犯人が帽子を深く被っていたため、顔までは目撃していなかった。

主人は犯人の左顎に傷があったことを記憶していた。

島に恨みを持つ人物のうち、左顎に傷がある人物は3名いたが、3人とも明確なアリバイがあった。

石塚は再度、現場に戻り、五代に覆面車を狙撃地点に停めさせ、狙撃事件の現場検証を行った。

石塚は狙撃の位置から、犯人の標的が自分であると確信し、犯人が左顎に傷がある岩田哲次であると考えた。

岩田は2年前(1977年頃)、ボクシングジムに在籍しており、有望な選手だったが、傷害事件を起こして除籍されていた。

岩田の傷害事件の概要は、岩田がバーで隣の客と揉め、殴って逃走したというものであり、石塚が目撃者の証言から岩田を突き止め、逮捕していた。

岩田の事件は島とは無関係だった。

石塚と五代は岩田の現在の職場の不二金融を訪れ、岩田(多宮健二さん)と対面した。

岩田は石塚から狙撃事件のことを告げられると激しく嘲笑したが、犯人ではないと否認した。

岩田は石塚と五代を挑発し、狙撃事件の発生時刻のアリバイを答えず、石塚に二度と来ないように言い残して立ち去った。

石塚は犯人の標的が自分で、島が身代わりで撃たれたと断言し、犯人が岩田であると直感した。

石塚は病院の島に、犯人の標的が自分だったことを告げ、島に謝罪した。

島は人に恨まれるのが刑事の仕事であり、偶然にそれが石塚だっただけであると励ました。

岩城は昨日、岩田が不二金融を出てからの足取りを捜査し、アリバイが成立しそうであることを突き止めた。

クラブ「鍵」のマスターは石塚と岩城に、狙撃事件が発生した一昨日の午後8時40分、岩田が「鍵」を訪れたが、満席だったために乗用車のドアから手を振っただけで帰ったことを証言した。

マスターは午後9時になったら教えてくれと言ってきた客がいたので時計を気にしており、そのために岩田が「鍵」を訪れたのがはっきり午後8時40分であったと記憶していた。

狙撃地点と「鍵」の間は自動車で36分かかる距離であり、自動車が空いていても30分以上かかった。

「鍵」の客は誰も岩田の顔を目撃していなかった。

岩田のアリバイは不明瞭だった。

石塚は岩田が犯人である証拠を探し当てようとしていた。

石塚は田中ビルから出てきた岩田に接触し、事件当日に重そうなアタッシェケースを携えてアパートを出たことを突き付け、中身がライフルだったのではないかと尋問した。

岩田は激怒し、否定した。

1ヶ月前、岩田とボクシングジムで同期だった男が全日本のチャンピオンになっていた。

岩田はそのことを知り、その晩にかなり荒れ、石塚への恨みを叫んだ。

岩田は石塚を突き飛ばし、殴った。

石塚は岩田と殴り合いの末に逮捕し、野崎と一緒に取り調べた。

岩田は声高に無実を主張し、逃走した理由について、知人を通じて紹介してもらった就職のことで大事な話があったからと弁解した。

岩田は新しい就職先で真面目に働こうと決意したことを述べ、自分のことを最初から犯人扱いし、逮捕しようとしている石塚に言っても信じてもらえなさそうだったから、何も言わなかったと責め立てた。

岩田は石塚への恨みを叫んだことを認めたが、泥酔し、自暴自棄になっただけで、本当に殺害する気が無かったと主張し、石塚を激しく糾弾した。

野崎は藤堂に、岩田に就職の話があり、今日にそのことで就職先と会う予定だったことを報告した。

岩城は岩田を犯人と断定していたが、山村に物証が皆無であると反論された。

午後1時10分、一係室の石塚に、坂口と名乗る男から、七曲署の前のスナックまで来るように要求する電話が入った。

石塚がスナックの前に急行した直後、向かいのビルの屋上にいる男が石塚を狙ってライフルを発砲してきた。

石塚は狙撃地点のビルの屋上に急行した。

狙撃者は脚立を使い、屋上から非常階段に降りて逃走していた。

石塚を狙撃した銃弾が島を狙撃した銃弾と同一であったことが判明した。

岩田が取調室にいたため、岩田のアリバイが成立した。

非常階段の下で遊んでいた子供が逃走した狙撃者とぶつかっており、顔を目撃していなかったが、狙撃者の左顎に傷があったことを証言した。

石塚は岩田を釈放し、落胆した表情で夜の街を歩いていた。

石塚は入院中の島と面会し、捜査に慎重になっていたが、岩田の顔を見た途端に激情してしまったことを伝えた。

石塚は証拠が無いのに暴走してしまったことを激しく後悔していた。

石塚は自分の身代わりに島が撃たれたことから、自分に慎重になるように言い聞かせていた。

石塚は最初、岩田の目を見た時に犯人が岩田であると直感した。

島は石塚の話を聞き、犯人が岩田であると助言した。

石塚は単独で岩田を徹底的に捜査することにした。

石塚は単独で不二金融の向かいのアパートから不二金融を張り込んでいたが、そこで野崎と合流した。

石塚は野崎まで糾弾されることを恐れていたが、野崎に自分に任せるように励まされた。

岩城と五代は周辺の聞き込みをしていた。

石塚は、「鍵」のマスターを不審に思って捜査をしていた山村と会った。

山村は石塚に、野崎も岩城も五代も刑事で、一番怪しい犯人に的を絞っただけであること、藤堂も同じ意見であることを伝えた。

山村は「鍵」のマスターが不二金融から多額の借金をしていること、連日のように取り立てにやってきた岩田が近日に姿を見せなくなっていたことを突き止めた。

マスターは山村に、不二金融に借金があることを認めたが、返済期限を延長してもらったと答え、岩田に協力したことを否認した。

マスターは手が震え、激しく動揺していた。

状況証拠は完璧だったが、物証が皆無だった。

岩田は一度逮捕されて釈放されているため、よほどの確証がなければ逮捕できない状態だった。

岩田は石塚を射殺し損ねたことで、石塚の刑事生命を抹殺することに目的を切り替え、石塚を怒らせて逮捕させ、マスターに石塚を狙撃させていた。

石塚は岩田がまだライフルを所持していることを危険に思い、岩田に張り付くことにした。

石塚は証拠を掴むまで、岩田を逮捕できないことについて、決意を固めていた。

石塚と岩城は岩田を尾行したが、すぐに岩田に感付かれた。

岩田は刑事を続けたければよく考えろと恨み言を言い残し、立ち去った。

石塚と岩城は岩田の尾行を続行した。

狙撃現場付近のマンションの住人の高校生が、乗用車から降りた男が帽子をかぶり、サングラスをしていたことを記憶していた。

高校生はその男がマスターとは断定できなかった。

高校生はその男と自転車でぶつかったこと、男が転倒してしまい、ライターを落とし、若者に呼び止められたが行ってしまったことを証言した。

高校生は川にそのライターを投棄してしまっていたが、そのライターにイニシャル名が記載されていたことを覚えていた。

石塚は岩城を残して覆面車を降り、岩田を尾行し、岩田と一緒の地下鉄の車両に乗った。

岩田は人通りの多い商店街を歩いていた。

岩田は突然疾走し、赤信号で石塚をまいた。

野崎と五代は川でライターの捜索をしていた。

岩田は岸壁に向かったが、石塚に先回りされていた。

岩田は石塚を嘲笑し、立ち去っていった。

石塚は岩城から、犯人がライターを落としたという報告を聞いた。

岩田は突然、浅草発13号地行の水上バスに乗り、石塚と岩城をまこうとした。

石塚も水上バスに乗り合わせていた。

石塚の目的は、岩田を追い詰めて自暴自棄にさせることで、岩田にライフルを取り出させることだった。

岩田はタクシーに乗ったが、石塚と岩城に追跡されると、運河で船を飛び移り、線路の奥に逃走した。

石塚と岩城は岩田を見失ってしまった。

石塚は岩田が運河伝いに逃走するため、必ず付近を通ると予測していた。

野崎と五代は未だにライターを発見できていなかった。

石塚と岩城は、モーターボートを運転して運河を渡る岩田を発見し、川沿いの道を走って追跡したが、途中で断念した。

石塚と岩城は工事現場で岩田のモーターボートを再発見し、追跡を続行した。

石塚と岩城は岩田のモーターボートを見失ってしまい、二手に分かれて捜索した。

石塚は桟橋の端まで走り、岩田のモーターボートが停泊しているのを発見した。

モーターボートが停泊されている付近にはビルがあり、屋上の駐車場には緑のシートで包まれた乗用車があった。

石塚はビルに急行した。

岩田は乗用車のトランクからアタッシェケースを取り出し、ライフルを組み立てた。

石塚は拳銃を装備し、ビルの屋上の駐車場に入った。

岩田は石塚に銃口を向けられ、ライフルを床に放り投げた。

石塚は岩田と格闘になり、岩田の殴られて劣勢になったが、逆に殴り倒して逮捕した。

島は来週に退院できるほど回復していた。

 

 

メモ

*「ある運命」のセルフリメイクっぽい作品。(脚本は同じ畑氏)。刑事を激しく恨む犯人、その刑事の身代わりになって重傷を負う者、わざと自分を挑発して逮捕させる犯人、そして犯人の拘留中に起こる事件(共犯の仕業)と、完全に一致。

*多宮氏は「ドックのうわごと」でもゴリさんを逆恨みする犯人を演じる。

*冒頭、屋台で殿下と一緒に酒を飲むゴリさん。泥酔しており、殿下に「ゴリさんは一気に行き過ぎ」と言われてしまう。小林幸子氏の「おもいで酒」をバックに、微笑ましい場面だがその後に…

*岩田が狙撃に利用した銃は「モデル700」の部分は聞き取れたが、その前の部分が聞き取れず。

*草薙氏と吉良氏はクレジットのみで本編に未登場。シーンカット?

*村上氏は執刀医、大木氏はラーメン屋台の主人役?

*後半はほとんどゴリさんとロッキーが岩田を尾行するシーン。「東京大追跡」を若干思い出す部分がある。

*結局、ライターは発見されなかったようだ。

*ゴリさんが岩田の逃走した方角が分かったのは、ただの直感のようだ。しかし、病室に入ってきたボスに山カンと言われてしまう。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

岩城創:木之元亮

五代潤:山下真司

野崎太郎:下川辰平

 

 

松原直子:友直子

岩田哲次:多宮健二

草薙良一、吉良冬太(後の久米じょう)、大原武樹、執刀医?:村上幹夫

政宗一成、ラーメン屋台の主人?:大木史朗、荻原徹也、高田康司

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:畑嶺明、小川英

監督:櫻井一孝