第283話「激突」(通算第493回目)

放映日:1977/12/30

 

 

ストーリー

午前8時5分、高田博(26歳)(明石勤さん)はマンションの地下駐車場から自動車で出発しようとした寸前、何者かに口を塞がれて気絶し、車内に担ぎ込まれた。

午前8時30分、早瀬婦警(長谷直美さん)は小学校の前で交通整理をしている途中、高田の自動車を発見した。

高田は早瀬の合図で静かに止まったが、サングラスをかけていて、完全に無表情だった。

高田の自動車は交差点を通過後、突如として暴走し、矢追町1丁目の「すまいの展示センター資材置場」に進入禁止のバリケードを壊して侵入した。

高田の自動車はコンクリートの壁面に激突して爆発、炎上し、高田も死亡した。

早瀬は炎上の光景を目撃し、直ちに通報した。

現場に石塚と島が到着した。

自動車の持ち主の高田は覚醒剤の売人で、証拠固めも終わり、近々捜査員によって検挙される矢先の出来事だった。

組織が高田を殺害した可能性だった。

早瀬は自動車に乗っていたのが1人だったこと、70km以上のスピードでノーブレーキのまま激突したため、自殺としか考えられないと結論付けた。

石塚と島は交通課の原口巡査(河原崎建三さん)と対面し、原口から事故車がレッカー車で七曲署署内に運ばれたことを告げられた。

原口は高田の死について、他人の迷惑をまるで考えない点は犯罪者と同じという感想を言った。

指紋を照合した結果、死体の身元が高田と断定された。

高田の死因は衝突に伴う内臓破裂で、即死だったが、覚醒剤を愛用した痕跡がなく、覚醒剤の幻覚作用などが考えられなかった。

石塚は高田の尾行を1週間していたが、高田がいつも陽気に遊び歩いていたため、高田が自殺するとは考えられず、いくら覚悟の自殺でも目の前に鉄骨が迫ってくれば、反射的にブレーキを踏むのではないかと考えていた。

しかし、現場にはスリップ痕が1つもなかった。

山村も高田の遺体に、躊躇したり迷ったりするための傷が全くないことを疑問に思っていた。

藤堂は捜査員に、事件と高田の同時捜査を命令した。

石塚は原口と一緒に、高田の事故車を調査していた。

原口は鑑識にアクセルとブレーキ関係の機械を提出していた。

石塚は原口に、目撃者の早瀬との協力を要請し、早瀬から事故当日の高田の状況を説明してもらった。

明確だったのは、高田が一人で運転席に座った乗用車が、鉄骨に激突したことだけだった。

早瀬は交通課の仕事が人を信じることから始まること、他の無数の運転者の技術や良心を信じなければ、誰も安心して運転できないため、交通課がその信頼を守るために働いていることを話した。

早瀬は人を疑うことをひどく嫌っていた。

岩城は事故当日の午前8時2,3分頃、マンション6階のエレベーターホールで、入れ違いにエレベーターに乗った高田の目撃者を発見していた。

マンションから資材置場までは、ゆっくり運転しても5分はかからない距離だったが、高田の乗用車の時計は午後8時32分で停止していた。

目撃者により、午前8時23分には高田が、地下駐車場で自動車のエンジンを温めるため、アイドリングさせていたことが確定した。

石塚は高田が車内で20分もじっと待てるような性格ではないため、疑惑を感じていた。

石塚はマンションのゴミ収集日のポスターを発見し、昨日が土曜日だったことを思い出した。

清掃車運転手(増岡弘さん)は、マンションの前に高田の乗用車が止まっていたことを証言した。

高田はマンションの駐車場入口を塞ぐように停車していたが、運転手がクラクションを何度も鳴らした後、静かに発進していた。

運転手は高田を目撃し、高田が全く振り向かず、右折するのに左右も確かめず、方向指示器も出さないことを不審に思っていた。

高田の自動車は、まるで高田が自分自身で運転していないようだった。

石塚は岩城に、事故当日の高田の自動車の運転を再現させ、何者かが高田の自動車を無線操縦したのではないかと推理した。

犯人は一時的に高田を眠らせ、サングラスで目を隠し、可燃性のテープで両手と上半身を固定し、スプレーでテープの色を隠し、あたかも高田が運転しているように偽装していた。

事故車がスクラップ工場に運び込まれており、石塚は無線装置を発見するため、鑑識課員を連れ、スクラップ工場に急行していた。

部品を調査したのは鑑識課員だったが、鑑識課員が事故車を調査したとき、既に原口がブレーキとアクセル系統の部品を解体していた。

石塚は原口に容疑をかけていた。

原口は勤務態度も真面目一点張りで、酒もタバコもギャンブルもやらない、七曲署きっての模範的な警察官、警察官になるために生まれてきた男といわれていた。

高田は生前、警察に協力者がいるため、逮捕される心配が無いと言い残していた。

高田は石塚の尾行を知っている様子だった。

別ルートの売人が検挙されただけで、自身にも危険が及んでいることを察知したということもありえ、その場合、1度や2度、尾行の確認をするが、高田は1度も確認をしていなかった。

石塚は無線操縦による殺人という推理が根底から間違っている場合か、その推理が正しい場合の、2つの可能性があること、正しい場合には事件のどこかに原口が関係していると意見した。

一係室に鑑識課員が入室し、藤堂にリード線とリースの残りの部品を提出した。

事故車の中から、事故車のどこにも使用されていないリード線とビスが発見されていた。

藤堂は捜査員に確証を掴むまで、絶対に口外しないように命令した。

田口は早瀬から、事故当時、原口が高田の自動車から来た方向の地点を巡回中だったため、無線連絡10分もかからずに現場に到着したことを聞き出した。

早瀬は一係室に入室したが、藤堂が会議中だったため、藤堂とは対面できなかった。

早瀬は机に置かれたラジコンカーを発見し、高田のことを頭に浮かべた。

藤堂が一係室に入室した。

早瀬は原口が犯人であるとは思えず、原口が七曲署に転勤してから半年も経過していないにもかかわらず、管轄地域の交通事故が10%減少し、死者がいない日が続いていることを熱心に訴えた。

藤堂は早瀬に、原口の捜査の理由を明かさず、口外しないように命令したが、早瀬に断られた。

石塚は原口と会っていた。

原口は事故の無線を傍受した場所を質問され、矢追町2丁目の交差点だったと答えた。

原口は今月の目標がスクールゾーンの学童を自動車から守ることだったため、徐行規制を守らない自動車をチェックしていた。

そこに早瀬が現れ、原口に高田のことを尋ねたが、激怒した石塚により外に連れ出された。

早瀬は石塚に、疑問があるときにはストレートに相手に質問すると憤慨しながら伝えた。

石塚は捜査一係の事件であると注意したが、早瀬はあくまで交通課の事件であると思っていた。

原口は早瀬の心境を察し、石塚に遠慮なく捜査するように頼んだ。

早瀬は高田の部屋で島と、城南署で山村と遭遇した。

早瀬は、城南署で原口がどんな業務について、どんな業績をあげているのかを調査していた。

アパート住人の主婦は原口について、真面目で几帳面な性格と証言した。

石塚は原口の元妻の坂田知子(信沢三恵子さん)と会った。

坂田は3年前(1974年頃)に原口と離婚していたが、その原因は原口と一緒に生活するのが我慢できなくなったからだった。

坂田は家事で些細なミスを犯すと、原口にミスが自分の不注意であると厳しく怒られていた。

坂田は欠点がないのはいいことかもしれないが、夫婦についてはお互いに欠点があり、それを曝け出し、喧嘩したり、許し合ったりするものだと思っていた。

原口にはミスが全くなかった。

石塚は坂田のアパートを去る寸前に早瀬と遭遇し、覆面車に乗せ、坂田が原口と離婚した理由を説明した。

早瀬は坂田の離婚の理由について、坂田の我儘であると思っていた。

石塚の考えは人間誰でも欠点があり、それが皆無なのはどこかに嘘があるというものだったが、早瀬に欠点がありすぎる人間の僻み、ミスの無さは人間の理想と反論された。

早瀬は事故当日、原口が通った地点で覆面車を降り、原口のアリバイを立証し、原口の無実を証明しようとしていた。

早瀬は深夜から翌朝にかけて、タクシー運転手(戸塚孝さん他)に聞き込みをしていた。

早瀬は収穫が得られず、呆然としていたが、無人取締り機に目を付けた。

12月26日午前8時35分に矢追2丁目の無人スピード違反取締り機が撮影した写真の中に、原口が運転するパトロールカーが写っていた。

原口はサイレンを鳴らしてスピードを上げていたため、自動的に撮影されていた。

取締り機の地点は現場までどんなに急いでも10分以上かかった。

早瀬は捜査員に謝罪した。

田口と岩城は安堵した。

石塚は取締り機のことを不審に思い、セットした時間まで機械を停止させ、犯行時刻の時だけ、無人取締り機の時計を狂わせ、後で戻したのではないかと推理した。

取締り機の写真に明瞭に写っているのは原口のパトロールカーだけで、後方の自動車はナンバーも見えなかった。

写真はアリバイ工作の可能性があった。

撮影された地点は交差点であり、他の自動車は赤信号で停止している状態で、そこを1台で疾走すれば、ナンバーが写るのは自分の車だけだった。

石塚は影の長さと、ピンボケで写っているミキサー車に注目し、ミキサー車が12月26日午前8時30分にこの地点を通過したかを証明すれば、アリバイ工作を打破すると考えた。

岩城は、原口のような模範的な警察官が殺人やアリバイ工作をするとは思えなかった。

藤堂は山村以外の捜査員に、アリバイ崩しの捜査に専念するように命令した。

早瀬は原口に写真を見せ、捜査一係捜査員の中には日付を操作したと勘繰る人が出てくると予測し、写真に写っているミキサー車の証人を探し出すことを告げた。

写真に写っている影は午前8時30分のものだった。

山村の捜査で、原口が高田の自動車を運転中、かつて交通事故を起こしていたことが判明した。

原口はその時、免許証不携帯の高田を発見し、自分で高田の自動車を運転し、高田のアパートに向かったが、慣れない自動車を運転していたため、飛び出してきた子供を回避し損ない、電柱に激突していた。

それまで一度もミスの無かった原口は、修理費さえ払えば公言しないという高田の言葉に思わず縋り付いた。

高田はその時から原口を利用する公算だった。

その時に高田の自動車を修理した修理工が全てを知っていた。

高田は小さなミスで自信を喪失した原口を嘲笑し、修理工に話していた。

石塚はミキサー車の業者を専門に捜査していたが、残っている業者でめぼしい会社はあと2社だった。

原口は早瀬と一緒に交通課から姿を消していた。

石塚は写真に写っていたミキサー車の運転手(徳弘夏生さん)を探し当てた。

運転手は12月26日ではなく、前日の12月25日午前8時30分に矢追町2丁目を通ったと証言した。

運転手はその日が給料日だったため、明確に記憶していた。

運転手は少し前に早瀬にも同じ話をしていたが、その早瀬は帰り際、原口が運転するパトロールカーに乗っていた。

原口のアリバイが崩れたが、石塚は早瀬が原口に拉致されたと断定した。

原口は、早瀬と捜査一係が事件の秘密とアリバイ工作を看破したことを察知し、早瀬と一緒に自殺することを決意した。

早瀬は無線機のスイッチを入れ、原口に自首を勧めた。

原口は自供して取り調べられることを非常に嫌がり、高田のような悪人のために、どうして屈辱を味わわなければいけないと嘆いた。

原口は完璧でミスのない警察官という肩書を残しつつ、自殺しようとしていた。

石塚は原口のパトロールカーの無線を聞き、原口が、高田が死亡した「すまいの展示センター資材置場」で、原口を最後まで信じた早瀬と心中しようとしていることを知った。

石塚は資材置場に急行中、原口のパトロールカーを発見した。

原口は資材置場に突入し、パトロールカーを壁に激突させ、早瀬もろとも心中しようとしたが、石塚により阻止された。

石塚は泣き言を言う原口を殴り倒し、現職の交通課の警察官の特権を利用したことが、完全犯罪を狙った殺人であると言い放った。

後日、早瀬が石塚のために、一係室に花を差し入れていた。

 

 

 

メモ

*1977年放映最終作。

*高田の「激突」による死と、捜査一係と早瀬の「激突」をかけたダブルミーニング。

*今回はゴリさんと絡む早瀬婦警。

*人を疑うことをひどく嫌っているのに、後に捜査一係に加入する令子。

*ロッキーに高田の事故当日の動きを再現させるゴリさん。ロッキーも冷や冷やしたことだろう。

*早瀬にはやたら先輩な態度をとるボン。

*「人間のミス」について、180度違う考え方を見せるゴリさんと早瀬。

*チンピラ役でノンクレジットを含め、多数出演されている戸塚孝氏が、今回タクシー運転手役で出演。

*トリックもアリバイ工作も用意周到な原口。几帳面な性格が裏目に出てしまった…

*クライマックスの、原口のパトロールカーとゴリさんの覆面車のカーチェイス。パトロールカーが覆面車のドアに少しぶつかってしまっている。資材置場(劇中では造成地)には水溜りが多かったため、スリップしてしまったのか?

*原口に、「高田が屑なら、貴様は屑の屑だ」と言い放つゴリさん。しかし、「ボス、俺が行きます!」では、「屑以下の化け物」が現れる。

*一時期、「ゴリさんと令子を結婚させる」案があったらしい。今回と「カレーライス」を見ていると、その案があったのもうなずける。

*ラスト、後輩がいつまでたっても昇進試験に合格せず、結婚しないことを嘆くボス。

*今回は「悪意」と同時撮影。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

田口良:宮内淳

岩城創:木之元亮

野崎太郎:下川辰平

 

 

早瀬令子:長谷直美

矢島明子:木村理恵

原口巡査:河原崎建三

坂田知子:信沢三恵子(現:信澤三惠子)、高田博:明石勤、清掃局職員:増岡弘

ミキサー車運転手:徳弘夏生、関口篤、酒井郷博、山本恵子、タクシー運転手:戸塚孝

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、四十物光男

監督:竹林進

※2019/10/30 執筆