第275話「迷路」(通算第485回目)

放映日:1977/11/4

 

 

ストーリー

当直中の田口と岩城は殺人事件の通報を受け、現場のグリーンコーポに急行した。

発見者の管理人(辻村真人さん)は今月分の管理料を徴収しに来た際、扉が開いていたのを不審に思って部屋に入り、被害者の富田啓司(46歳)の遺体を発見していた。

富田は半年前に夫人と離婚して以降、独身だった。

岩城はゴミ箱の中から、矢追信用金庫の帯封を発見した。

富田は商事会社の営業部長であり、強奪されたのは封筒に入っていた現金だった。

富田は昨日の昼頃、現金1800万円を不動産業者から受領していた。

富田の同僚によると、1800万円は富田が郊外の持ち得た土地を売却した金だった。

富田は1800万円ですぐに別の不動産を購入するため、現金で所持していた。

山村は犯人が、銀行で待ち伏せし、大金を引き出す人間をマークし、尾行して最も都合のいい場所で襲撃する「一発屋」の手口ではないかと推察した。

犯人が手を振れたと思われる地点から、ごく少量の油が検出されていた。

富田の死因は扼殺、死亡推定時刻は午後8時頃だった。

藤堂は野崎と島に富田の交友関係を、山村に前科者の割り出しを、石塚に現場の聞き込みを、田口と岩城に目撃者の捜索を指示した。

田口と岩城はグリーンコーポの住人を聞き込んだが、収穫が無かった。

グリーンコーポのすぐ前の道路には、午後7時40分に駐車違反がチェックされた痕跡が多数あった。

駐車違反は30分後に再度チェックするのが原則であるため、その中に犯人の自動車が含まれている可能性があった。

田口と岩城は、昨夜の午後7時40分と午後8時10分に矢追2丁目を担当した、交通課婦警の早瀬令子(長谷直美さん)と会った。

早瀬は田口と岩城の目的が、グリーンコーポ前に駐車していた自動車のナンバーの控えであることを察知していた。

早瀬は午後7時40分に巡回した際には10台、午後8時10分に巡回した際には8台が駐車されていたため、違反ステッカーを貼っていた。

そのうちの3台は昨夜に出頭していた。

田口と岩城は未出頭の5台の自動車の所有者を一人一人探ることにした。

早瀬は岩城に、未出頭の5人の住所と氏名が書かれた紙を手渡していなかった。

早瀬は安全運転を守らないで人を死なせるのも、拳銃で人を死なせるのも、殺人と同一であると強く考えていた。

早瀬はミニパトカーを運転し、田口と岩城を案内した。

早瀬は盗難車がある埼玉県に向かう途中、通学路であるにもかかわらず徐行しない宮坂運送のトラック運転手に注意した。

盗難車の所有者は昨朝の午前7時頃に自動車を盗まれたこと、うっかり鍵を付けっ放しにして自宅の前に駐車したときに盗まれたと証言した。

しかし、その自動車は所有者の息子(石井章雄さん)が勝手に乗り回していただけだった。

犯人が現場に遺していた油が分析の結果、自動車のオイルと断定された。

犯人が犯行に使用した手袋が自動車の工具箱の中の軍手と推測すると、駐車違反のどれかの自動車が犯人のものであると断定された。

出頭した3人には全員、確実なアリバイがあり、似たような手口の前科者も全員犯人ではなかった。

山村は犯人が明確に最初から殺害する気で一気に扼殺していると考え、そのような場合には精神が破綻すると何をするか分からないと危険視した。

田口と岩城と早瀬は未出頭の1人である、川原梱包店主人の川原(平松慎吾さん)と対面した。

川原は昨夜の午後8時頃、グリーンコーポ前に、所有している赤いセダンを停めていたことを否認した。

川原はエンジンの調子が悪かったため、今朝にセダンを修理に出したと述べた。

川原は田口と岩城の姿が消えたのを確認した後、外出した。

川原は喫茶店で、戸浦(上田忠好さん)に50万円を渡していた。

戸浦は田口と岩城が刑事であることを知り、素直に50万円を渡した。

川原は50万円が、接触事故の示談金であると素直に自白し、駐車違反を誤魔化したことを謝罪した。

川原は昨夜、川原梱包店の近くで戸浦の自動車に衝突してしまい、警察に届けると面倒だったので、示談で処理しようとしたと告白した。

田口達は次に、未出頭の1人の、タクシー運転手と会った。

運転手はグリーンコーポの近所のマンションに友人がいたため、停車したと話した。

運転手は午後8時15分頃にタクシーに戻った際、グリーンコーポから飛び出して自動車に戻り、急いで発進する男を目撃していた。

その自動車は杉井のタクシーの3台前の自動車で、所有者は矢追3丁目の神原出版社のセールスマンの須藤(安原義人さん)だった。

須藤は飛び出した理由について、グリーンコーポ入居者で友人の木村がフグ料理で食中毒を起こし、医師を呼ぶためだったと供述した。

田口は犯人が自動車で来たのは明確なのに、駐車していた自動車の所有者が全員犯人ではないことに困惑していた。

早瀬は田口と岩城を七曲署まで送迎し、感謝して立ち去った。

岩城は早瀬の使命感に感服していた。

深夜、石塚はグリーンコーポ付近で、捜査中の早瀬と対面した。

グリーンコーポ付近の道路にはまだ新しいスリップ痕があった。

早瀬は紺色の自動車の塗料痕を発見し、昨夜に紺色の乗用車が駐車していたのを見落としていたことに気付いた。

紺色の乗用車は午後7時40分、グリーンコーポから少し離れた場所に駐車されていたが、早瀬が他の自動車にチョークで書いている間に姿を消していた。

藤堂は田口と岩城に、紺色の乗用車の運転手が婦警を見て駐車の場所を変えた可能性があり、目撃者か共犯者か犯人かもしれないと釘を刺した。

山村と島は午後8時に駐車していた8台についても、完全に犯人ではないと断定できないと思い、再度の徹底的な捜査を進言した。

早瀬は交通違反にしか興味が無く、田口と岩城の、紺色の乗用車の調査の申請に耳を傾けなかった。

田口は早瀬に、交通事故の大半は過失だが、殺人犯は放置すれば何をするか分からないと説明した。

早瀬は田口の説明に耳を傾けず、田口と激しく対立した。

田口と岩城は早瀬のミニパトカーに乗り、紺色の乗用車の所有者のもとに向かった。

紺色の乗用車は岡山ナンバーで、下3桁が315だった。

さらに、所有者は10日前に免許停止処分となっていた。

田口達は工事現場を訪れ、紺色の乗用車の所有者の古沢恒夫(多田幸男さん)と会おうとしていた。

古沢は工事作業中だったが、田口と岩城に発見されると、すぐにダンプカーに乗って逃走した。

田口達はミニパトカーで古沢を追跡したが、ダンプカーをUターンさせた古沢に、逆に追跡された。

ミニパトカーは行き止まりのバリケードを避けようとして、ミニパトカーを横転させた。

田口と岩城は、ダンプカーから降りて様子を確認しようとした古沢を逮捕した。

早瀬は道路交通法違反容疑で古沢を取り調べるため、古沢を取調べ中の取調室に入った。

古沢は免許停止中だったために逃走したと供述したが、早瀬に免許停止中に違反すると永久免許停止になると厳しく注意した。

古沢はダンプカーの運転手をしていたため、免許を取り上げられると生計が立てられないと愚痴った。

古沢はグリーンコーポ前に駐車していた理由について、寝不足で疲れていたため、ちょっと眠ろうとしただけであること、5分から10分駐車していたこと、午後8時に帰宅したことを弁解した。

古沢は午後8時に管理人と会ったため、アリバイには自信があった。

古沢は紺色の乗用車のボディーに傷がついていたことを知っていたが、どこで衝突したかは知らなかった。

古沢のアリバイが成立した。

8人の未出頭者の中で、完全に犯人ではないことが確定したのは4人だけだった。

山村は戸浦のもとを訪ね、川原に衝突させられた乗用車を確認した。

供述書には、路地から川原の乗用車が突っ込み、急停止したが間に合わなかったと書かれていた。

山村は現場にスリップの痕跡がほとんど無いことを不審に思い、川原の乗用車とわざと衝突しあったのではないかと指摘した。

戸浦は失業中の身だったが、多額の買い物をしていた。

戸浦は山村の尋問の末、川原との事故がでっち上げであることを自白した。

早瀬は鑑識課から、塗料痕が古沢の紺色の乗用車のものであること、古沢と衝突したのが赤い乗用車であることを聞き出した。

早瀬は赤い乗用車が川原のものであることを思い出した。

新たに2人が犯人でないことが確定し、残るは2人のみとなった。

田口と岩城は藤堂から、川原に容疑がかかったという連絡を受けた。

早瀬は自動車修理工場で川原のセダンを発見し、青い塗料痕があるのを確認した。

早瀬は川原が古沢の乗用車にぶつけた後、戸浦の乗用車にもぶつけていることを突き止めた。

川原は自動車修理工場に赴いた際、早瀬を発見し、密かに尾行した。

川原は梱包店の前で早瀬の前に現れ、早瀬から真相を告げられると、梱包店の中に早瀬を監禁した。

川原は事故を起こしたことで、相手の戸浦に強請られ、アリバイ工作と別の事故の工作で約300万円を使ってしまっていた。

川原は富田を殺害して奪った1800万円で、梱包店を建て直すつもりだった。

川原は物心がついてからずっと梱包一筋に生きており、不況で梱包店を倒産させたくなかったため、事件を起こしていた。

川原はバールで早瀬を口封じに殺害しようとしていた。

早瀬は化粧室に隠れた。

田口と岩城は早瀬が自動車修理工場を訪れたこと、川原が早瀬を尾行したことを聞き出し、川原梱包店に急行した。

川原はバールで化粧室の扉を破壊したが、直後に田口と岩城が駆けつけた。

川原は行き止まりに追い詰められ、叩きのめされて逮捕された。

早瀬は捜査一係の仕事の大変さを痛感していた。

後日、非番の早瀬は一係室を訪れ、田口と岩城を食事に誘った。

 

 

 

メモ

*中期から番組終盤まで登場する早瀬(岩城)令子が初登場。当時、後にロッキーと結婚し、さらに一係の刑事としてレギュラー出演するとは誰が予想できたのか。

*冒頭、迷路クイズに挑戦するボンとロッキー。今回は事件の構造が迷路並みに複雑だった。

*今回、テアトル・エコーに所属する俳優の方々が大挙出演。

*ボンとロッキーに、「刑事事件の死亡者は1年間で2000人、交通事故の死亡者は約5倍の9734人」を訴える早瀬。「働くものの顔」でも似たようなことが言われていた。

*犯罪の考えの違いで早瀬と対立するボンとロッキー。

*盗難車の所有者の息子を演じるのは後のラサール石井氏。かつてテアトル・エコー養成所に入所していたことから、その縁での出演かと思われる。顔はまともに映らず、台詞もない。

*やっぱり食事はゆっくりのロッキー。

*早瀬の使命感の高さに感服するロッキー。後の伏線?(おそらく違う)

*殺人事件の捜査が全然進まず、食事が完全にゆっくりで、イライラしまくりのボン。

*タクシー運転手はノベライズだと「杉井」になっていたが、一係室の黒板の解説図だと別の名字になっていた。

*ラスト、「生意気な早瀬にこりごり」と呟くボンとロッキー。しかし、非番の早瀬に食事に誘われるとあっさり承諾。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

田口良:宮内淳

岩城創:木之元亮

野崎太郎:下川辰平

 

 

早瀬令子:長谷直美

矢島明子:木村理恵

川原:平松慎吾、戸浦:上田忠好

梶哲也、須藤:安原義人、グリーンコーポ管理人:辻村真人、古沢恒夫:多田幸男

服屋の店主:八代駿、峰恵研、村越伊知郎、山下啓介、盗難車の所有者の息子:石井章雄(現:ラサール石井)

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、中村勝行

監督:木下亮