第266話「逃亡者」(通算第476回目)

放映日:1977/8/26

 

 

ストーリー

アパートの、久門修(30歳)という男の部屋で、富岡安三(吉中正一さん)という男が刺殺体となって発見されるという事件が発生し、七曲署捜査一係が現場に急行した。

アパートの大家は富岡を知らなかった。

久門は新世界商事の経理部に勤務していた。

田口は部屋のゴミ箱から、トラベルフレンド新宿営業所の、オーストラリア旅行のパンフレットを発見した。

石塚と岩城は新世界商事を訪れ、経理部長の庄田聡一(加藤和夫さん)から話を聞いた。

庄田は犯人を久門と断定しているようだった。

庄田は久門が賭博でヤクザに借金をして、会社の金を横領したため、2ヶ月前に免職処分になったことを話した。

久門は新世界商事に入社して5年間ほど、語学力を評価され、香港支店やオーストラリアのシドニー支店に駐在していたことがあった。

久門はシドニー支店が閉鎖されたことで、経理部に配置転換されていた。

久門の部屋で殺害されていた富岡は、前科2犯の黒姫興業の中幹部だった。

黒姫興業は賭博の件を否定していたが、富岡が久門の賭博の貸金取り立てに行き、逆に久門に刺殺された可能性が高かった。

凶器のナイフの指紋は久門の指紋と確認された。

田口は久門(橋爪功さん)が既に日本を飛び立ち、オーストラリアのツアーに参加していることを突き止めた。

藤堂はシドニーのホテルにて待機中の、トラベルフレンドのツアーコンダクターの大谷から、久門が同じツアーのメンバーの郷田景子(倉野章子さん)と一緒に下町に行ったことを聞き出した。

藤堂は田口と岩城に、直ちにオーストラリアに飛ぶように命令した。

岩城は飛行機内にて、景子が観光旅行で偶然知り合った久門に騙されているのではないかと思っていることを告げたが、田口から久門をどのようにして逮捕するかを考えるように忠告された。

石塚は景子の父親の郷田雄一(高原駿雄さん)と会っていた。

郷田は久門のことを知らず、景子が数年間、自分のことを一切話さないため、干渉しないことにしていた。

景子は2年前(1975年頃)、同じ勤務先の愛し合っていた男性に裏切れられたことをきっかけに、一人で旅行することが多くなっていた。

田口と岩城はシドニーに到着し、タクシーでシドニー市警察に直行した。

久保寺進一(関虎実さん)と大庭実(永井譲滋さん)の2人は自動車で、田口と岩城のタクシーを尾行した。

田口と岩城はシドニー市警にて、ジャクソン刑事(デビット・フリーマンさん)と対面し、ジャクソンから久門と景子の2人らしき男女が街外れのホテルに宿泊しているという情報を聞いた。

田口と岩城は手錠と拳銃を所持しておらず、久門と景子を探し出すことしかできなかった。

田口と岩城はステーションホテルに赴いた。

久門と景子は今朝の午前8時に、一足違いでホテルを引き払っていた。

岩城はホテルのベッドのシーツに血痕が付着しているのを発見し、市警に血液検査を依頼することにした。

ホテルに宿泊していたのは久門と景子と断定されたが、景子が久門と一緒に逃走している理由については不明だった。

田口は藤堂に、久門が以前に支店で勤務していた頃に暮らしていた近辺を捜査することを連絡した。

田口は商社マンの大半がノーズに住んでいることから、ノーズに向かった。

田口は現地の少年の証言で、久門が3年前(1974年頃)に住んでいた家を突き止めた。

大庭と久保寺が田口と岩城をなおも尾行していた。

田口と岩城は家に入り、証言者の少年の母親である住人の女性から差し入れられたケーキを食べた。

少年の母親は田口が久門の知人と名乗ると、久門が天使のような善人であると話した。

田口と岩城は聞き込みを続け、久門の知り合いであるパブの主人を探し当てた。

パブの主人は田口と岩城が久門の知り合いであると知り、ビールを無料で振る舞った。

田口は現地の久門の評判が非常に良いことから、久門が善人であると思うようになっていた。

田口と岩城は大庭と久保寺の尾行に気付き、わざと二手に別れた。

岩城は久保寺を、田口は大庭を追跡し、取り押さえてシドニー市警まで連行した。

大庭は田口と岩城に自分と久保寺の名前と、同じ会社の同僚であることを伝えた。

大庭は尾行を否定し、逃走した理由についても恍けた。

大庭は田口にパスポートを見せるように指示されると、日本の警察には何の権限もないと挑発したが、ジャクソンからパスポートを持っていなければ不法入国で逮捕すると警告され、渋々見せた。

大庭と久保寺は北栄通信の記者であり、久門を取材し、大スクープを取るために田口と岩城を尾行していたと弁明した。

大庭は田口を挑発し、シドニー市警を立ち去った。

田口と岩城は北栄通信を知らなかった。

北栄通信は完全な幽霊会社で、黒姫興業が会社の費用を支払っていた。

黒姫興業の支援者は大物フィクサーの山野井であった。

新世界商事には汚職の噂があり、本庁特捜班が既に内定を開始していた。

山村は汚職の最先端にいたのが久門で、汚職のバックにいるのが山野井であると推測していた。

久門が会社を辞めさせられたのは、汚職発覚を防ぐための布石であり、その時から命を狙われていた。

久門は自宅で富岡に殺害されそうになり、正当防衛で逆に富岡を殺害してしまった。

大庭と久保寺は山野井の指令で行動する殺し屋だった。

ホテルの血痕は血液検査の結果、久門のものであると判明した。

久門は現地で何者かに襲撃されていた。

藤堂は田口と岩城に、大至急久門と景子を探し出して保護するように命令された。

久門は景子と一緒に逃亡したのを間違いと思っていたが、景子は久門を愛していた。

久門は新聞で田口と岩城の来訪を知っていた。

景子は一時的に日本に帰国した。

田口と岩城は、久門と景子が愛しあっているのではないかと考えていた。

田口と岩城は覆面車の無線機で景子が日本に帰国したことを知った。

翌朝、島がオーストラリアに到着し、田口と岩城が宿泊するブルバードホテルの9階に入って行った。

島は田口と岩城に、大庭と久保寺がホテルを張り込んでいることを伝えた。

山村と野崎は空港を張り込み、タクシーに乗り込む景子を発見した。

景子は三菱銀行のクイックカードサービスで、銀行預金の全額である250万円を降ろし、ドルに換金していた。

景子は久門を捨てて逃亡したのではなく、久門のために金を取りに一時的に戻っていただけだった。

景子はただの旅行者に過ぎないため、羽田空港に到着し、別の便でオーストラリアに向かうとしても、捜査員には止められなかった。

山村は空港のレストランで景子に接触した。

景子は遊び足りないため、金を取りに戻ったと述べたが、久門については同じツアーのメンバー以上の仲ではないと誤魔化した。

久門の手掛かりが無かった。

藤堂は景子がシドニーに到着したときに捜査の狙いを絞った。

野崎は景子と同じ飛行機に乗り、オーストラリアに飛び立った。

田口と岩城は景子の乗ったタクシーを尾行したが、同時に大庭も尾行した。

野崎はわざと自動車を大庭の自動車の前に停車させ、大庭の尾行を妨害した。

景子は大規模なスーパーマーケットに入った後、路地裏に行き、田口と岩城をまいたが、島に尾行された。

景子は久門の潜伏場所の家に到着し、久門と再会した。

島は久門と景子に発見され、景子に久門の追跡を妨害された。

田口と岩城は島と合流し、オレンジ色の自動車で逃走した久門を追跡した。

久保寺が久門を尾行していた。

野崎はわざと大庭に付き纏っていた。

景子は島と田口と岩城に尋問されていたが、黙秘を貫いた。

岩城は景子には何の罪もないという考えを捨て、一切の協力を拒否する限り、景子も一人の犯罪者とみなすという考えに切り替えた。

景子は岩城に、罪や法律などがどうでもよくなるときがいつかきっとくると言い放った。

ジャクソンから、久門が乗った自動車ごと岸壁から転落し、炎上したという連絡が入った。

景子は久門の死を信じられなかった。

島と田口と岩城は景子を連れ、事故現場の岸壁に急行した。

岸壁にはスリップ痕があるため、事故死と判断された。

遺体の顔は焼けただれていて、判別不能な状態だった。

景子は遺体の所持している腕時計や靴、ベルトから、遺体の身元が久門であると断定した。

藤堂は事件解決まで、シドニーの捜査を続行することを決定した。

 

 

メモ

*「太陽」最初の海外(オーストラリア)ロケーション編の前編。

*前編時点での到着組はボン、ロッキー、(中盤から)殿下、(後半から)長さん。

*久門に正当防衛で殺害された黒姫興業の中幹部。前科者カードからは「安三」の名前は読み取れたが、名字が読み取れず。(安岡か?)

*英語が流暢に話せるボンと、話せないロッキー。

*「青春のテーマ」バックの聞き込みは久々な気がする。

*勤務中ではあるが、主人に勧められて断れず、ビールを3杯も飲むボンとロッキー。

*「ロッキー刑事のテーマII」は雄大な感じでかなり好きだが、あまり流れないのが残念。

*ボンが髭を剃っているため、電話を取らざるを得なくなり、英語が話せないために動揺を隠せなかったが、相手が殿下だったために安堵するロッキー。なお、次の海外ロケーション編である「岩城刑事 ロッキーにて殉職」では、英語を多少話せるようになっていた。

*ATMに時代を感じる。

*永井氏は不敵な殺し屋役がよく似合う。

*ラスト、久門の乗った車が岸壁から転落、炎上。遺体も所持品から久門と断定されるが…

*今回は脚本の山崎氏の「太陽」唯一の執筆作品。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

田口良:宮内淳

岩城創:木之元亮

野崎太郎:下川辰平

 

 

矢島明子:木村理恵

郷田景子:倉野章子

久門修:橋爪功

大庭実:永井譲滋、郷田雄一:高原駿雄、庄田聡一:加藤和夫

久保寺進一:関虎実、ジャクソン刑事:デビット・フリーマン、根本好章、広城さよ

ノンクレジット 富岡安三:吉中正一(現:吉中六)

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

協力:アトラス・オーバーシーズ・サービス

 

 

脚本:小川英、山崎巌

監督:竹林進