第264話「撃てなかった拳銃」(通算第474回目)

放映日:1977/8/12

 

 

ストーリー

午後3時42分、島と岩城は女性からの密告電話を受け、矢追信用金庫の裏口を張り込んでいた。

裏口では、警備員の制服を着た男の3人組が現金の入ったアタッシェケースを携え、現金輸送車に乗り込んだ。

直後に信用金庫内から警報が鳴り、強盗犯の男3人組が輸送車を発進させた。

島と岩城は輸送車を追跡した。

強盗犯3人組はビル跡で輸送車を一旦停車させ、一味の神田隆一(清水章吾さん)が強奪した現金を抱え、ビル跡内に入った。

共犯の沢村元司(28歳)(清水のぼるさん)と矢野武(25歳)(山下勝也さん)は自動車を乗り換え、逃走した。

島はビル跡内に人の気配を感じ、岩城に自動車の追跡を指示し、ビル跡内を調査した。

岩城は沢村と矢野を見失ってしまった。

神田は現金を隠した直後、島に気付き、拳銃を構えた。

神田は島に銃口を向けていた。

島は神田の発砲を回避し、神田を追跡した。

神田は発砲しながら逃走したが、階段を駆け下りる際に転倒し、拳銃を落としてしまった。

石塚と田口がビル跡に到着した。

島は神田の落とした拳銃に向けて発砲し、神田を制圧しようとしたが、銃弾が発射されず、危機に陥った。

神田は拳銃を拾い、島に一旦銃口を向けたが、銃口を下ろし、観念した。

島は駆けつけた石塚達に、神田が自首したことを伝えた。

密告電話の女性は、3丁目の矢追信用金庫に拳銃強盗が入ると連絡していた。

被害金額は総額8000万円だったが、閉店後で客が少なかったため、負傷者は皆無だった。

信用金庫の行員は強盗犯が現金輸送車を乗り付け、警備員を装っていたため、誰も疑わずに入れてしまった。

強盗犯は3名とも、同型のステンレス製の密輸拳銃のS&W チーフスペシャルステンレスM60を所持していた。

強盗犯3名の指紋を照会した結果、前科者だったのは、島が逮捕した神田のみだった。

石塚と岩城は神田の拳銃には弾が1発しか残っていなかったこと、神田の立っていた位置から捜査員が駆けつけるのが見えたことから、神田が逃げ切れずに観念しただけではないかと意見した。

島の拳銃は撃鉄の発条が折れており、弾が発射されない状態だった。

島は神田が自分を撃たなかったことから、自首であると判断した。

藤堂は強盗犯が内部事情に精通していると推測し、神田がどこまで自供するかを問題点とした。

神田は島と田口に取り調べられていた。

神田は競輪場で沢村と矢野と知り合って誘われたため、名前を知らないこと、自分が最初から利用されただけだったと供述した。

神田は沢村と矢野が自分を突き放して、ビル跡に置き去りにしたと話した。

神田は逮捕されて良かった、刑務所で再度やり直すと思うようになっていた。

神田は島から強盗計画を知っていた女性がいないかを質問され、ブティック「創」で働いている牧幸子という女性と交際していると答えた。

神田は牧が強盗計画とは無関係であると強調した。

島と田口は「創」を訪れ、牧(嶋めぐみさん)と会った。

牧は強盗計画及び密告者について知らないと話した。

神田は田口から、牧のためにも全面自供して罪を精算するように呼びかけられ、強盗に加わった動機について、沢村と矢野に逆らえなかったこと、金欲しさであることを伝えた。

神田の強盗の動機は牧には話していないが、牧に店を持たせてやりたかったからであった。

本庁刑事(中島元さん、柄沢英二さん)が一係室に入り、藤堂に本庁に神田の身柄を送検することを提案した。

刑事は神田の拳銃が大量に密輸されているものと同一であるため、ルート解明のため、どうしても神田を取り調べることを熱望した。

島は神田に対し、共犯のことを話さないため、不明瞭な点が多いという感想を抱いていた。

神田は沢村と矢野が拳銃を購入したと供述していたが、刑事は神田と思われる男が拳銃を欲しがっていたという情報を入手していた。

島は刑事の提案に同意した。

刑事は神田を護送していたが、護送中に矢野の乗用車に前方を塞がれた。

神田は矢野に気付いた。

沢村が突然現れ、覆面車の窓を割り、助手席に乗っていた刑事を拳銃で殴り、昏倒させた。

運転手の刑事は拳銃を抜こうとしたが、沢村と矢野に銃口を突きつけられた。

沢村と矢野が神田を脱走させた目的は、神田が強奪した8000万円の隠し場所を唯一知っているためだった。

沢村は運転手の刑事を射殺した。

一係室に神田の脱走の連絡が入り、藤堂は現場に捜査員を急行させた。

刑事は沢村と矢野が神田の脱走のため、現場に待ち伏せしていたことを証言した。

神田は最初、脱走する気が無く、沢村が刑事を射殺したことに驚愕した。

沢村と矢野はビル跡内を隈なく調査したのに、8000万円を発見することが出来なかったことから、神田に仲間がいると思い込んでいた。

神田は突如豹変し、刑事を殴り倒した。

山村は神田の豹変の理由が、金を隠したのが神田であると露見したからではないかと推察した。

島は神田の自供が何もかも嘘だったのではないかと疑った。

神田は最初から沢村と矢野を騙すつもりであり、追跡されるのも計算に入れていた。

沢村と矢野は警察に追跡されていたため、わざと廃墟で神田を黙って行かせていた。

密告電話も、逃走間際に警察が駆けつけるようにタイミングを合わせていた。

田口は廃墟を捜索したが、8000万円を発見することができず、脱走した神田達が廃墟内に立ち寄った形跡も無かった。

密告電話の女が8000万円を持ち去った可能性が出た。

神田にとって唯一の誤算は、警察が沢村と矢野の乗用車だけでなく、自分も追跡したことだったが、計算し直し、島に自首したように見せかけていた。

石塚は神田が、金を隠したのが自分であると露見した途端、本性を露わにしたと考えた。

島は神田が殺人をする悪党には思えなかった。

神田は暴行、傷害の前科の他に、逮捕歴6回もある男だった。

田口は神田が逮捕されても自分に都合のいいことしか言わず、島まで騙そうとしたことから、神田に憤慨し、島が神田に同情する理由が分からなかった。

島は神田が凶悪犯なら、反射的に自分を撃っていたかもしれないが、神田が撃たなかったことから、神田が少なくともあの瞬間には自分を傷つける意思が無く、殺人を躊躇したと信じたかった。

山村は神田が、島の拳銃の故障にただ拍子抜けしただけで、ただの偶然のイタズラだったのではないかと助言した。

野崎の捜査で、強盗犯2名の身元が断定された。

沢村は修理工上がりで、以前に勤務していた自動車修理工場に、現金輸送車が修理に来ていた。

矢野は以前に勤務していた会社が矢追信用金庫と取引があったため、内部事情に詳しかったと考えられた。

「創」のママ(森田はるかさん)は島に、店が多忙にもかかわらず、牧が店を辞めるような勢いで休むと電話してきたことを証言した。

島は矢追不動産の張り紙を眺めている牧を目撃した。

矢追不動産には、矢追町商店街中央通りの9.5坪、権利金500万円の貸店舗の張り紙が貼られていた。

牧は島から神田が脱走したことを告げられ、かなり動揺し、神田を恐れていたが、逮捕されて安堵したことを告白した。

島は牧が強盗計画のことを何も知らなかったことを指摘した。

牧は強盗計画も、神田が自分に店を持たせてやりたかったことも知らなかったと述べた。

牧は神田について、遊ぶ金をせびる相手だった、神田のことを忘れたいと言い捨て、島のもとを去った。

岩城は牧のアパートを張り込む島と合流した。

岩城は牧を捜査し、牧が強盗事件の日に私用で3時間ほど外出していること、同日に駅前でレンタカーを借りていることを突き止めた。

レンタカーの走行距離は10kmだったが、ビル跡から8000万円を回収するには最適だった。

神田は密告電話したのも、8000万円を持ち去ったのも牧だったことから、自首したあとも落ち着き払っていたが、牧に裏切られていた。

証拠は皆無だった。

牧は神田から電話を受け、8000万円を回収できなかったと嘘を吐き、自分のことを忘れるように促した。

牧は神田に、島と岩城が自宅を張り込んでいることを知らせ、遠方に逃走するように頼んだ。

神田は電話ボックスから、匿名で自分達の隠れ家が横浜の橘倉庫であることを通報した。

島は藤堂に、神田を逮捕するまで牧から目を放したくないと進言し、牧宅に残るように命令された。

島は外出する牧を尾行した。

山村と野崎と石塚と田口と岩城は橘倉庫に到着した。

山村は沢村と矢野が2階の事務所にいるとして、自分と野崎と岩城で沢村と矢野の注意を正面に向けるので、石塚と田口に裏階段から沢村と矢野の背後に回るように指令した。

沢村と矢野は捜査員の存在に気付き、拳銃を発砲しながら逃走したが、屋上で格闘の末に逮捕された。

沢村と矢野は神田が逃走したため、居場所を知らないと述べた。

神田が2人の隠れ家を密告したのは、捜査員の注意を牧から逸らすためだった。

山村の考えは島が、拳銃の撃鉄の発条の折れというごく稀な事故が神田の殺意を消したと信じているのは間違いではないというものだった。

神田は尾行中の島を発見し、乗用車で急勾配の地点で轢き殺そうとした。

島は神田の乗用車を回避したが負傷してしまい、牧の拉致を許してしまった。

島は通行中の一般人の車両を拝借し、神田を追跡した。

神田は牧が8000万円を持ち去ったことを見抜いており、荒っぽい運転で牧から金の居場所を聞き出そうとしていた。

神田は河川敷で島に逃走を妨害されるも、牧を人質に取り、拳銃を捨てるように要求した。

島は神田に拳銃を向けつつ、神田を説得した。

牧は神田が動揺している隙に神田を振り払い、島に神田を撃つように頼んだ。

神田は島と牧を射殺しようとしたが島に、本当は拳銃が故障した際、更生するチャンスを探していたのではないかと説得された。

神田は島の拳銃が故障した際、撃てなかった理由が自分でも分からず、観念して島に拳銃を手渡した。

牧は逃走しようとしたが、田口に取り押さえられた。

島の減刑嘆願書は役に立たず、牧には懲役3年の実刑、神田には懲役6年の実刑判決が下りた。

牧は判決を不服として控訴したが、神田はそのまま服役し、罪を全て認め、素直な気持ちで受け入れることを覚悟した。

 

 

メモ

*「拳銃の条件」の系譜のような話。脚本は同じ四十物氏。

*殿下の「拳銃」という要素と、「人を信じる」要素が合わさった回。

*山さんの「悪人とか善人とか2つに分けて考えるのがおかしく、人間は大なり小なり両方の間をいつも揺れ動いているものではないか」という理論。

*本編を見ていると、神田より牧の方がしたたかで悪女のように見える。

*ラスト、神田が罪を償う気持ちになったことに喜び、神田に会いに行こうとするも転倒してしまう殿下。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

田口良:宮内淳

岩城創:木之元亮

野崎太郎:下川辰平

 

 

矢島明子:木村理恵

神田隆一:清水章吾

牧幸子:嶋めぐみ、沢村元司:清水のぼる(現:清水大敬)

「創」ママ:森田はるか(後の森田遙)、矢野武:山下勝也

本庁刑事:中島元、本庁刑事:柄沢英二、小海とよ子

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:四十物光男、小川英

監督:木下亮