第556話「南国土佐・黒の推理」(通算第435回目)

放映日:1983/5/13

 

 

ストーリー

令子と春日部は新婚夫婦を装い、高知行きのフェリーに乗船していた。

フェリーには他に、カメラマンの沢木岳彦(立川光貴さん)、モデルの香取由美(飯野けいとさん)、スタイリストの川村亮子が乗船していた。

沢木には妻の沢木敬子(菅本烈子)を殺害したのではないかという容疑がかかっていた。

令子と春日部は沢木に面が割れていないため、藤堂の命令で沢木をマークすることとなった。

沢木に愛人がいる節がなく、香取と川村もビジネス以外の交流が無かった。

沢木の友人と知人の聞き込みでは仲の良い夫婦だったという答えが多いため、動機は夫婦間のいざこざとは思えなかった。

井川と西條は、沢木が1年前(1982年頃)に契約した生命保険金3000万円を不審に思っていた。

沢木が殺害を依頼した相手が問題点となった。

西條は事件が午後10時、沢木宅の応接間で、沢木の留守中に発生したことから、犯人が沢木と顔見知りだったのではないかと考えた。

藤堂の意見は沢木が事前に、敬子に来客があることを知らせたのではないかというものだった。

山村は、生前の敬子が親友に沢木のことを怖いと発言したことについて、徹底的に追及する方針だった。

山村は竹本を連れ、敬子の親友(富山真沙子さん)と会い、敬子の様子、表情、怖いと言い出した経緯を思い出すように頼んだ。

山村が敬子の親友と会うのは3回目だった。

敬子は喫茶店で親友と会っていた際、沢木が何となく恐いと呟いていた。

敬子は沢木が有名になったことで、マスコミやファンに沢木を取られたことを寂しい気持ちもあるが、よく分からないと発言していたが、それ以降を何も話さなかった。

敬子の親友は全く見当がつかなかった。

竹本は、敬子が沢木に命を狙われていると直感的に感じたのではないかと思っていた。

沢木がカメラマンで生計を立てられるようになったのは、約5年前(1978年頃)にカメラ雑誌のコンクールに入選してからであり、それ以前は色々なアルバイトと敬子のパートで何とか生活していた。

山村は沢木が有名カメラマンになった現在、沢木の心の中に無名時代のことがどのような形で残っているのかが、事件の鍵となっているのではないかと考えていた。

令子と春日部、沢木達は高知の浦戸大橋に到着し、タクシーでホテル高砂に向かった。

沢木の宿泊する部屋は306号室だった。

翌日、沢木は観光地を巡り、香取の写真を撮影した。

令子と春日部は沢木のファンとして、沢木に接近した。

沢木は事件が発生して2週間が経過しているが、仕事を続行することが、世間に認められたことを最も喜んでいる敬子への一番の供養ではないかと思っていると述べた。

沢木達はホテルに戻った。

令子は沢木が犯人にしては無警戒であるため、高知に来たのもただの仕事ではないかと考えていた。

西條と竹本は沢木の親友である、岡崎スタジオの主人(倉石一旺さん)と会った。

主人は敬子が殺害された時刻、沢木と一緒に六本木のスナックで酒を飲んでいたと証言していた。

主人は沢木が何者かに依頼して、敬子を殺害させたという推理を激しく否定した。

主人は沢木の名誉のため、沢木が保険金を全額、アフリカの難民救済団体に寄付することにしていることを告白した。

沢木は敬子の意思という名目で、難民救済団体に3000万円の寄付を申し出ていたことが判明した。

沢木夫妻には以前から、アフリカの難民を放っておけないという話が出ていた。

沢木が捜査員に話さなかったのはマスコミに騒ぎ立てられるのを嫌ったためであり、親友にこのようなことでは有名になりたくないと話していた。

沢木夫妻が現在住んでいる家は沢木の稼ぎ出した金で建てられたものであり、敬子が死亡したことで沢木の利益になるのは保険金のみだった。

竹本は金という動機が消えた以上、沢木が犯人ではないと意見した。

山村は妻が自分の夫のことを冗談でも「怖い」とは言わないと断定し、敬子が親友に言った「怖い」という一言に注目した。

山村は沢木が犯人であると推理した。

現場から1km離れた一般家庭の溝から、凶器が発見された。

凶器に巻き付いていた毛髪の血液型が敬子のものと一致した。

竹本は溝を捜索中、左右一揃いの新品の手袋を発見した。

手袋から、谷口稔(32歳)(清水のぼるさん)という前科者の指紋が検出された。

谷口は7年前(1976年頃)、自動車の人身事故を起こしていた。

西條と竹本は谷口の捜査を開始した。

谷口はアパートに不在であり、故郷にいる父親の体調が悪いという理由で、今日から休暇を取っていた。

谷口の故郷は高知県安芸市だった。

谷口は昼の飛行機で、高知県に飛び立っていた。

山村は事件の関係者2人に何か繋がりがあると考えるのが自然であると意見した。

令子と春日部は、沢木達の撮影が行われている猪野沢温泉に、泊まり掛けで行っていた。

山村は西條と竹本に、明朝の便で高知に急行し、谷口から話を聞くように命令した。

西條は竹本と一緒に高知県に到着し、高知県警察本部から春日部に谷口のことを連絡していた。

春日部は夜にはホテルに戻ることになっていた。

西條と竹本は谷口益造、谷口邦夫、谷口仁美の自宅を訪れた。

邦夫は谷口の弟で、仁美の夫だった。

谷口は帰郷後、釣りのために安芸港に出発していた。

西條と竹本は釣り中の谷口を発見したが、谷口に気付かれた後、自動車に乗っての逃走を許してしまった。

西條と竹本は谷口を追跡した。

谷口は自動車を乗り捨てたが、徒歩で逃走しようとしたところを西條と竹本に発見され、竜河洞に逃げ込んだ。

西條と竹本は二手に別れ、谷口を追跡したが、谷口に入口から逃走され、まかれてしまった。

西條は高知県警の石井刑事(小林尚臣さん)に谷口の手配を依頼し、谷口と敬子の関係性を掴むため、谷口の実家に戻った。

益造は肝臓を悪化させ、寝込んでいたが、病人なのに元気だった。

邦夫は谷口が本当に悪事を犯していないかを疑っており、沢木のことを全く知らなかった。

谷口は高校時代に写真部に在籍していたため、カメラ関係に興味があった。

西條は谷口の調査、竹本は谷口の実家の張り込みを担当することになった。

西條は地元の警察官(三谷昇さん)から、谷口が5歳のときに、益造に貰われた養子であるという情報を得た。

益造の妻は子供の産めない身体で、邦夫は益造の愛人の子供だった。

谷口は10年前(1973年頃)までは益造とうまくいっていたが、最近、益造から離縁を言い出されていた。

離縁の原因は、谷口が勝手に益造の土地を処分したこと、上京して賭け事にのめり込んだことであり、弁護士を通して話を進めていた。

裁判が認められた場合、谷口が益造の遺産を相続する権利が無くなった。

益造は山を所有していたため、遺産が30億円以上になると思われた。

西條は竹本の発言から、交換殺人の可能性があると推測した。

沢木の撮影はカモフラージュで、真の目的は益造の殺害であるという可能性が浮上した。

沢木と谷口の接点、敬子殺害の動機が問題点となった。

川村と香取は撮影の終了に伴い、明日に東京に帰ることとなった。

沢木は休息のため、もう少し高知に滞在すると述べた。

西條は令子と春日部と合流した。

令子と春日部は沢木が犯人ではないと考えていた。

西條は沢木が明日から撮影の仕事が無くなるため、これから殺人をするのではないかと考え、尾行の交代を申し出た。

西條と竹本は沢木を尾行した。

手配中の谷口の自動車が発見された。

沢木は砂浜でぼんやりしたままで、全く行動していなかった。

谷口の同僚、友人の中には沢木を知っている者が全く発見されず、沢木との親しい者で谷口を知っている者も皆無だった。

沢木は1日中、市内を散策しただけだった。

谷口は車を乗り捨てて行方不明となっていた。

春日部は沢木と目が合ってしまい、沢木から明朝に、黒鯛の入れ食いポイントに釣りに行かないかと誘われた。

明朝、令子と春日部は沢木と、海上で釣りをしていた。

沢木はモーターボートを運転し、朝食をとるという名目で、離れ小島に案内した。

沢木は令子と春日部を下船させた直後、そのままモーターボートを運転して逃走しようとした。

沢木は令子と春日部が刑事であることを見抜き、態度を豹変させ、これ以上尾行しないように言い放った。

沢木は港に戻り、自動車で港を去った。

令子と春日部は船が来ないことを嘆き、泳いで岸まで戻ろうとしたが、航行中のモーターボートを発見し、乗せてもらった。

令子と春日部はタクシーで谷口の実家に急行し、西條と竹本と合流した。

捜査員は沢木が谷口の実家に来ていないため、令子と春日部に腹を立てただけなのかもしれないと考えた。

春日部はホテル高砂の前にて沢木に激怒したが、沢木に無視され、これ以上尾行すると本当に告訴すると警告された。

沢木がコンクールに入選したのは、「ひとり」という水流を写した写真だった。

井川は山村に、谷口が高知に行ったのは、沢木を監視するためだったのではないかと考察した。

交換殺人の最大の利点は動機を持った人間が遠方にいられることだったが、井川は谷口がわざわざ父親の傍まで行っていたことが引っかかっていた。

高知県の中津渓谷にて、谷口が転落死体となって発見された。

谷口の死は殺人とは断定できない状態で、事故や自殺の可能性もあった。

谷口の死亡推定時刻は昨日の夕方だった。

昨日に沢木がホテル高砂に戻ったのは午後8時頃だった。

谷口の死因は前頭部陥没と全身打撲だった。

 

 

メモ

*四国ロケーション編の前編。「太陽」史上でも複雑な部類に入る話。

*前編時点での、高知の到着組はドック、マミー、ボギー、ラガー。

*「交換殺人」は愛知ロケーション編の「殺意の証明」でも使われている。

*沢木を尾行するため、新婚夫婦を装うボギーとマミー。ボギーは新婚夫婦を装わなければならないことにかなりの不満らしい。

*生前の敬子の一言に焦点を当てる山さん。

*マミーにホテルの鍵を取られ、覆面車内で寝る羽目になるボギー。ボギーの怒りはよく分かる。

*小林氏は鹿児島ロケーション編にもロケーションに参加している。そちらでは前後編で出演しているにもかかわらず、出番がほとんど無く、台詞も無かった。

*マミーは泳ぎが得意らしい。

*敬子殺害の容疑者の谷口が死亡という驚愕の展開で終了。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

春日部一:世良公則

竹本淳二:渡辺徹

岩城令子:長谷直美

 

 

沢木岳彦:立川光貴(現:立川三貴)

谷口稔:清水のぼる(現:清水大敬)、石井刑事:小林尚臣、麻志奈純子、高知の警察官:三谷昇、敬子の親友:富山真沙子、香取由美:飯野けいと、岡崎スタジオ主人:倉石一旺

林守康、池田武司、高石美香、沢木敬子:菅本烈子、谷口邦夫:倉地雄平(現:倉知成満)、小金沢篤子、三沢もとこ、竹内靖

協力:ホテル高砂、日本高速フェリー、土佐電気鉄道、「喰慮飲慮 いろはにほへと」

 

 

西條昭:神田正輝

井川利三:地井武男

山村精一:露口茂

 

 

脚本:古内一成、小川英

監督:山本迪夫