第548話「金曜日に会いましょう」(通算第427回目)

放映日:1983/3/18

 

 

ストーリー

「品川57 の 15-27」の乗用車が盗難に遭う事件が発生した。

午前1時30分、福田明子(監物房子さん)という女性が河川敷沿いの道を歩いている最中、轢き逃げされる事件が発生した。

翌朝、七曲署捜査一係が現場で捜査を開始した。

西條は救急車に乗り、福田に付き添うことにした。

福田は衣服に車の塗料が付着するほど強く轢かれ、7m下に転落したため、瀕死の重傷を負い、一命を取り留めるか分からなかった。

福田のハンドバッグからは財布も定期券も手帳も発見されず、発見されたのは謎の鍵だけだった。

令子は昨日の盗難車を発見したが、盗難車には血痕が付着していた。

盗難車の持ち主の萩尾恵吾(井上高志さん)は盗難車の傷ばかり気にしており、生命を軽視するような態度をとった。

竹本は半年間の行方不明者リストを調査していたが、福田らしき捜索願が全然提出されていなかった。

盗難車の指紋は萩尾のものだけだった。

萩尾は事件発生時刻、新宿のスナックにいた。

事件の目撃者は事件発生時刻が午前1時30分だったため、発見が困難だった。

山村はハンドバッグが道に落ちたのは偶然ではないかということ、目的が殺人ではないかと推測していた。

藤堂は捜査員に、福田の身元割り出しに全力をあげるように命じた。

竹本は坂の上派出所に福田の妹と思われる女性が来ているという一報を受け、急行した。

坂の上派出所には、サッカーボールを持った2人組の小学生が訪れており、人を捜索して欲しいと依頼していたが、警察官に断られた。

竹本は福田の妹と思われる女性と会い、北里研究所附属病院に入院中の福田と面会させたが、残念ながら見当違いだった。

竹本は人間1人が死亡するかもしれないのに、身元が不明なこと、家族や友人が誰も駆けつけないことに憤りを隠せなかった。

竹本は人混みの中に、福田の関係者が誰もいないのかもしれないことに間違いを感じていた。

竹本は公園の老人(和沢昌治さん)から、2人組の少年が福田の特徴に似た、水色のスーツを着てロングヘアーの女性を捜索して歩いていたことを聞き出した。

竹本は坂の上派出所の巡査と会ったが、巡査は2人組の少年の名前も住所も知らなかった。

2人組の少年は巡査に、福田が週に1度、富士見公園に来ていることを伝えていた。

竹本はサッカーをしている少年達から、2人組の少年を探し出した。

2人組の少年は竹本を相手にせず、二手に別れて竹本をまこうとした。

少年の1人は駐輪場に隠れたが、竹本に発見された。

竹本は少年の1人に、福田が重傷であることを伝え、面会するように頼んだ。

西條は看護婦(日高久美子さん)から、福田の容態を知りたいという電話が入っていることを伝えられ、病室前に看護婦を待機させ、電話に出ることにした。

電話の主は無言のまま、電話を切った。

西條は電話口から聞こえた「カタカタ」という音が引っかかっていた。

福田の容態が急変した。

竹本は北里研究所附属病院に少年の1人を連れてきたが、到着した頃には福田が死亡してしまっていた。

少年の1人は涙を流し、捜索を頼んだ女性が福田ではないと言い放ち、病室を走り去った。

竹本は公園で春日部と合流し、号泣している少年の1人を発見した。

春日部と竹本は公園で号泣している少年を発見し、無理やり連れて行ったことを詫び、自宅まで送迎することにした。

少年は自宅に帰っても誰もいないと話した。

春日部はあまりにも自分達に都合のいい話だったと痛感し、少年に何も聞かないと約束し、全て忘れるように促した。

少年は真相を話すことを決意し、自宅に春日部と竹本を招き入れた。

少年は約3ヶ月前、公園のサッカーの帰りに雨に遭い、滑り台で雨宿りしていた際、初めて福田と会っていた。

少年は福田の名前を知らなかった。

少年は毎週金曜日、富士見公園で福田と会っていた。

福田はいつも少年達に、「週刊少年アタック」で連載中のサッカー漫画「翔べ!コウ太!!」の粗筋を、発売日前に全て話していた。

「少年アタック」の発売日は毎週土曜日であり、金曜日はその前日だった。

少年は熱心に、福田の凄さを伝えた。

少年は春日部と竹本が立ち去ろうとした際、福田に「コウ太」とそっくりの、大学生の弟がいることを教えた。

少年は福田の弟と会ったことが無かった。

山村はなぜ福田の弟が名乗り出ないことを疑問に思った。

令子と春日部の意見は、福田が漫画の関係者で、弟を「コウ太」そっくりと言ったのはただの夢だったのではないかというものだった。

「翔べ!コウ太!!」の作者は現在、売り出し中の植谷キヨシ(43歳)という男性だった。

藤堂は捜査員に出版社関係の捜査を命令した。

西條は病院で受けた電話の、軽くて楽しそうな「カタカタ」という音についての見当がつかなかった。

藤堂は電話の主が犯人である場合、再度福田を狙う可能性を仮定し、マスコミに福田の死を伏せており、西條に病院の張り込みを指示した。

城西出版編集長(久遠利三さん)は発売日の前に粗筋を漏洩する行為が、自分で自分の足を引っ張るようなものであるため、社員がするわけないと思っていた。

竹本は植谷(秋間登さん)と対面し、福田の写真を見せたが、上谷は福田に全く見覚えが無かった。

植谷は「コウ太」のモデルについて、架空の人物であり、他人からアイディアを貰ったことが無いと否定した。

植谷は事件が発生した11日の午前1時30分には、締切日だったため編集室に缶詰だったと述べた。

印刷工場長(岩城和男さん)は工場が城西出版で経営が成立しているため、粗筋の漏洩をするわけがないと否定した。

看護婦は東前新聞社の社員と名乗る男から、昨夜に東京都の無縁仏の霊安所にこの病院から死体が運び込まれているが、何号室の患者なのかを質問する電話が入った。

東前新聞社は全く覚えが無かった。

やはり電話からカタカタという音が聞こえており、犯人に福田の死を知られてしまった。

藤堂は公表の手続きを取った。

一係室に、アパートの空き巣事件を捜査中の城南署刑事から電話が入った。

同じアパートに5日前から行方不明の女性がおり、その女性が福田だった。

山村と竹本は福田の住んでいたアパートに急行した。

福田の所持していた鍵は自宅の鍵だった。

福田宅の書架には多数の「少年アタック」が収められていた。

福田は2年前(1981年頃)からこのアパートに住んでいたが、水商売だったため、弟が住人に知られていなかった。

福田の部屋は殺風景だった。

福田の机の引き出しから、福田の弟の福田公次の写真と、公次宛の葉書が発見された。

公次は川崎区のつつじ台病院に入院していた。

竹本は公次が「コウ太」のモデルではないかと直感した。

山村は駆けつけてきた令子と春日部に公次の写真を渡し、病院に直行するように指示した。

令子と竹本は、公次に事件と福田のことをどう説明すればいいのかに辛さを感じていた。

福田が漫画のストーリーを1日前に知っていた理由が不明だった。

令子と竹本はつつじ台病院の看護婦(磯部稲子さん)から、公次が3日前、一度に10日分の睡眠薬を飲み、自殺未遂を起こしていたことを告げられた。

公次は一命を取り留めたが、意識がまだ戻らず、後は当人の生きる気力の問題だった。

公次の自殺の原因は福田が見舞いに来なかったことだった。

公次は2年前、オートバイ事故の後遺症で入院し、それから毎週日曜日には必ず福田が病院を訪れ、公次に一日中付き添っていた。

竹本は看護婦に、福田が死亡したことを告げた。

公次は高校時代、サッカーの選手だったが、手術しても現時点では両足が動かない状態で、リハビリテーションもあまり熱心ではないため、医師から復帰不可能と診断されていた。

2年前、公次はオートバイを運転中にトラックに轢かれており、事件が迷宮入りしていた。

令子と竹本は西川崎高校サッカー部の監督(椎谷建治さん)から、公次についての情報を得た。

公次は夜に轢かれていたため、その場合だと学校の傷害保険金が下りなかったが、登下校時の事故なら下りた。

福田は保険金で入院費が払えても、公次の傷が治らないとして、保険金の利用を拒否していた。

令子と竹本は神奈川県川崎北署刑事(真田健一郎さん)から、福田が公次を轢き逃げした犯人を逮捕するため、川崎北署に日参していたことを話した。

川崎北署は轢き逃げ犯の手掛かりをほとんどつかめなかった。

福田は当時、自宅の近隣の家具店の事務員をしていたが、公次を入院させると、単独で上京していた。

福田の戸棚の中の袋から、大量のトラックの写真が発見された。

福田は警察を信じられず、現場を通るトラックを撮影し、公次に見せていた。

トラックの写真の中にはつい最近撮影されたものだった。

福田は公次の入院費を稼ぐため、2年間、バー、ナイトクラブ、キャバレーを転々とし、少しでも高収入な方に移っていた。

竹本は、弟の再帰だけを信じ、その夢のために、青春をすり減らしていた福田を無慈悲に殺害した犯人を逮捕し、福田の夢を守り、公次の生きる意欲だけでも取り戻したいという意欲を燃やしていた。

西條は福田の調査を引き継ぎ、公次を轢き逃げしたトラックも突き止めようとしていた。

井川は捜査から帰還し、山村に福田が銀行に預けていた預金通帳を手渡した。

福田の預金通帳には50万円ずつ振り込まれていたが、振込人の住所も名前も虚偽だった。

公次の元サッカー部の仲間の2人は、「翔べ!コウ太」を見るたびに、公次が元気になって暴れているような気がしており、公次を知っている者でないと絶対に書けないと証言していた。

井川は「翔べ!コウ太」の原作者が福田ではないかと考え浮かんだ。

福田の通帳に50万円ずつ振り込み始めたのが半年前で、「翔べ!コウ太」の連載が始まったのも半年前だった。

西條は福田が発売前日に、少年達に粗筋を話したのは、万一のために自分が原作者であることの証人を残すためだったのではないかと推理した。

犯人が植谷である可能性が浮上した。

竹本は、「翔べ!コウ太」に毎回リアルな運転の絵があるが、植谷が運転免許を所持していないことが腑に落ちなかった。

西條と竹本は編集長と会い、植谷についての話を聞いた。

植谷は2年前から急激に売れ始めた作家だったが、経歴や仕事ぶりにかなり謎があり、作者が2人いると思われる節があった。

植谷は西條と竹本に詰問され、共作者が売れなかった頃の仲間の萩尾であることを認めた。

植谷は萩尾に、詐欺の過去があり、公表されたくないと言われたため、全て自分の名前で処理していた。

萩尾は矢追1丁目26番地に住んでおり、盗難車の持ち主だった。

萩尾は計画的に先に盗難届を提出し、自分の車で福田を轢き殺していた。

萩尾の仕事部屋の近くには、リスの檻があった。

西條と竹本は萩尾と会った。

萩尾はアリバイ工作のため、スナックのバーテンダーを買収しており、内縁の妻も萩尾が犯行の日、夜明けに戦慄した表情で帰ってきたことを証言していた。

萩尾は福田に250万円を支払ったのに、もっと払わないと暴露すると脅迫され、福田を殺害していた。

竹本は福田を殴り、2発目を殴ろうとして西條に制止された。

西條は殺人容疑で萩尾を逮捕した。

竹本は「弟 サッカーに賭けた青春」という題名のスクラップブックを発見した。

令子と竹本は意識を取り戻した公次と面会した。

公次は「翔べ!コウ太」が自分をモデルにしていることを知らなかった。

竹本は公次にスクラップブックを手渡した。

公次は生きる気力を取り戻していた。

萩尾は最初、ナイトクラブのホステスだった福田から話を聞き、書き溜めたストーリーを受け渡されていた。

萩尾はストーリーに面白さを感じ、即金50万円、売れ行きに応じて報酬を渡す約束をしていたが、250万円払ったところで、払うのが惜しくなっていた。

「翔べ!コウ太」は単行本が大ヒットし、1億円近いと報酬と言われていた。

竹本はこれからたった1人で生きて行かなければならない公次を心配したが、山村に福田が残した「コウ太」が生きていると励まされた。

竹本は上谷に、重傷を負ったコウ太が再起するというストーリーを追加するということを提案した。

 

 

メモ

*冒頭、ボギーとラガーが乗用車の盗難事件についての怒りを吐露。ボギーは強奪した者が、ラガーは車の持ち主の管理不足が原因という考え方。

*いかにも亜槍氏らしいテイストの作品。

*渡辺氏の特技のサッカーと、漫画のネタを絡めた作品。

*少年2人がラガーをまこうとするシーンで「ゴリさんのテーマ」が流れている。

*「少年アタック」の元ネタは「週刊少年ジャンプ」?

*漫画に詳しいらしいラガー。

*福田と親しい少年の名前は劇中で明かされず。

*珍しくボギーとマミーの意見が一致。

*椎谷氏は珍しく善人役で、ワンシーンのみの登場。なんとなく贅沢。

*なぜサッカー漫画に、毎回リアルな運転シーンがあるんだ?(笑)

*ラガー、激怒したからって作画をビリビリに破いてはいけません。

*萩尾の仕事場の床に「週刊少年ジャンプ」が置かれているが、表紙に「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の両さんが映っている。

*公次を轢いた犯人はその後逮捕されたのかどうか不明。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

春日部一:世良公則

竹本淳二:渡辺徹

岩城令子:長谷直美

 

 

萩尾恵吾:井上高志、西川崎高校サッカー部監督:椎谷建治、北里研究所附属病院看護婦:日高久美子、つつじ台病院看護婦:磯部稲子

川崎北署刑事:真田健一郎、植谷キヨシ:秋間登、宮川不二夫、城西出版編集長:久遠利三、福田明子:監物房子

公園の老人:和沢昌治、吉野広昭、野村義一、小田健八、出版工場長:岩城和男

沢柳迪子、平野義和、村上久勝、福田公治:丹治信恭、山田勝紀、漫画:広井てつお

 

 

西條昭:神田正輝

井川利三:地井武男

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、亜槍文代

監督:鈴木一平