第701話「ヒロイン」(通算第395回目)

放映日:1986/6/27

 

 

ストーリー

トリマー(犬の美容師)の清水多美子(戸川純さん)は映画を見た帰り道、新宿地下街のトイレに立ち寄ろうとしていた。

清水は男子トイレから出てきた狭山毅(22歳)という男とぶつかり、縋り付かれた。

狭山は背中に重傷を負っていたが、何かを言い残し、出血多量で間もなく絶命した。

井川と澤村が現場に急行した。

狭山はロック歌手であり、ナイフのようなもので背中を滅多刺しにされていた。

狭山は財布を盗まれておらず、恨みを持った人物の犯行と推測された。

清水は令子と一緒に管理室にいた。

井川は事件の恐怖に震える清水から事情聴取を開始した。

清水は極度の興奮状態になり、落ち着きを無くしていた。

狭山は死亡する寸前、息も絶え絶えに「白」と言い残していたが、清水は何も聞いていないと伝えた。

多数の報道関係者や新聞記者が刑事を振り切って管理室内に押し入り、第一発見者の清水に質問した。

井川と令子と水木は、清水を新聞記者の質問から解放させた。

狭山の女性関係はかなり乱れており、「グルーピー」と称する取り巻きの女性がその対象となっていた。

その女性の中には、狭山に貢ぐだけ貢がされて捨てられた者もいた。

一係室に大和田署長(草薙幸二郎さん)が入り、藤堂不在の間の一係責任者を代行することを勧告した。

藤堂は過労が原因で入院していた。

井川は清水が狭山から何も聞いていないことを強調するためと、犯人に知られるのを恐れているため、狭山から何かを聞いていると直感していた。

狭山の事件がニュースで報道されたが、その際に清水の名前が実名で報道されていた。

清水は慌ててコーヒーを零した際、狭山が何かを言い残したことを思い出したが、正確に何と言ったかは思い出せなかった。

清水はペットサロン「モントゥトゥベストフレンズ」で勤務中、女性客(東丘出陽さん)から、モーニングショーで報道されたことを話題にされた。

清水の同僚(水木薫さん)は狭山の大ファンであり、清水に狭山に抱き付かれたときの気持ちを軽々しく尋ねたが、清水は何とも思っていなかった。

清水は誤って、女性客の飼い犬を傷つけてしまった。

井川は「モントゥトゥベストフレンズ」を訪れ、清水と対面した。

清水はスターの狭山とは何の関係もないこと、人前に出るのが苦手な性格であることを主張した。

井川は清水に、真実を話してくれれば二度と現れないと約束した。

通報者の女性は狭山が清水と何か話していたと証言していた。

清水はどうしても狭山がモゴモゴ言っていたため、どうしても発言の内容が分からなかったと伝えた。

2名の新聞記者がペットサロンから清水の居場所を聞き出し、清水に質問しようとしたが逃走された。

令子は保険のセールスマンの高梨(石田弦太郎さん)から聞き込んでいた。

高梨は頑強に、娘(高校生)が狭山に玩具にされたという噂を否定した。

島津は、マンションの401号室の住人のホステスの甲坂光恵(工藤啓子さん)から話を聞いていた。

甲坂は狭山が殺害されて当然と言い捨て、犯行時刻の午後10時頃には体調不良のために自宅にいたと主張した。

水木はギタリストの佐々木四郎(谷村好一さん)と対面していた。

佐々木は昨夜、夕方からずっと酒を飲んでいたと語ったが、泥酔していて正確な時刻と酒を飲んだ場所を思い出せず、自宅で寝ていたと伝えた。

佐々木は狭山に恋人を取られ、喧嘩を吹っ掛けられたことを認めたが、殺人については否定した。

動機があってアリバイのない容疑者は佐々木、高梨、甲坂に絞られていた。

清水は帰宅しようとした際、井川がアパート「矢追ハイツ」の住人に聞き込みをしている光景を目撃し、逃走した。

清水は付近を通行しようとした子供の自転車を避けようとして転倒し、号泣した。

井川は清水に、3人の容疑者が浮かんだことを伝え、聞き覚えが無いか質問した。

清水は動揺して分からないと答え、井川に、自分の殻に閉じこもっている性格について怒鳴られてしまった。

井川は清水に、嫌なことがあっても跳ね返して生きて行かなければと激励したが、清水はもう放っておいてほしいと懇願した。

当直中の井川に清水から、怖いから助けてほしいという電話が入った。

清水は完全に落ち着きを無くし、最近、自宅に無言電話が頻発することを伝えた。

井川は電話局に電話番号を交換するまで、表で見張ることを約束した。

清水は井川に、無言電話が鳴らなくなったことを話し、飲み物を差し入れ、迷惑をかけたことを謝罪した。

井川は清水の飲み物をうまいと評し、清水の初めての笑顔を喜んだ。

澤村と水木は佐々木を尾行していた。

水木は佐々木が短気な性格であるため、そのうちに証拠を出すものと考えていた。

佐々木は慌ててタクシーに乗って逃走した。

井川は清水を矢追ハイツまで送迎しようとしたが、清水は佐々木の名前を聞き、狭山の遺言を思い出していた。

佐々木が清水を狙う危険性があった。

清水は井川に、不審な男が裏手の道にいることを訴えた。

井川は裏手の道に急行したが、不審な人物はおらず、清水宅に戻ると、清水が姿を消していた。

井川は街を奔走し、不審な音が聞こえる建設現場に入った。

建設現場の中にいた不審な人物は清水だった。

清水は井川の側に行こうとしたら、不審な男が追跡してきたため、建設現場に隠れたと涙ながらに話した。

佐々木はセントラルコーポに帰宅する直前、競馬に行っていたと証言し、ベースを弾いている横山と同伴していたことを話した。

佐々木は横山の友達と偶然会っていたため、アリバイが証明された。

井川は清水が目撃した謎の男が引っかかっていた。

澤村は佐々木が、何者かに清水を襲撃する役を依頼し、自分のアリバイを作っていたのではないかと意見した。

井川は清水の態度を不審に思っていた。

清水が何者かに襲撃されたことがマスコミに漏洩し、多数の新聞記者が清水宅に押しかけた。

井川は清水がマスコミに全く恐怖せず、取材に応じているのが気になっていた。

井川は清水を連れ出し、覆面車に乗せた。

清水は今日、店を休んでおり、井川に見たい映画があると要求した。

清水は商店街を歩いている際、ショーウインドーに陳列されていたウェディングドレスに心を奪われた。

清水は映画のヒロインの台詞の「気に入ったドレスがないから行かないわ。裸で公園を歩きたくないから」という台詞を口ずさんでいた。

清水は内向的な性格であるため、対人相手の仕事が苦手であり、動物相手の仕事を選択していた。

清水はドジで鈍間であるため、犬にまで馬鹿にされ、映画ばかり見ていたことを話し、真っ暗で誰にも邪魔されず、映画の良さとして、自分がヒロインになったような気がして楽しいと熱弁した。

井川は清水を狙った男が、清水の空想が作り出した幻であることを見抜いていた。

清水のいたずら電話の件は清水の作り話で、マスコミに漏洩した件も、清水が密告したためだった。

清水は偶然スター殺害事件に遭遇したことで、今まで目立ったことのない自分が事件の主役になり、最初は本当に怖くて逃げようとしたが、ふと気付いたときに注目した喜びを知っていた。

清水は映画のスターのような気分を実感していたが、マスコミが自分のことを忘れ、井川が自分から離れようとしていたため、少しでも長く自分をヒロインに仕立てるため、次々と対策を講じていた。

井川は清水に、あくまで映画ではなく現実の世界であることを言い聞かせ、真犯人が襲撃してくる危険性があることを忠告した。

清水はいつもその他大勢のうちの1人で、誰も自分がいることを知らないと思い込んでおり、井川に謝罪した。

井川は清水を説得し、激励した。

清水は井川に、狭山が「白」と言った後、呻き声を発したことを証言した。

佐々木は井川と澤村に取調べられ、刑事に誤解されるような態度をとったことを詫びたが、必死に無実を主張した。

島津と水木は佐々木が狭山殺害時刻に、自供通りアパートにいたことを突き止めていた。

佐々木は泥酔していて全く記憶していなかったが、競馬仲間がその時間に電話していた。

狭山の遺言は「四郎」ではなく「白い何か」であるという疑惑が生じた。

令子は「白い靴」ではないかという意見を出した。

高梨は事件前までずっと白い靴を履いていたが、事件後から履かなくなっていた。

高梨は昨夜から自宅に戻っておらず、清水は勤務を終え、帰宅していた。

井川は清水が映画を見に行っていると判断し、捜査員に新宿の映画街を調査するように指示した。

高梨は清水を尾行し、睨み付けていた。

清水は駅のホームから一係室に通報し、「気に入ったドレスが無いから行かない。ウェディングドレスでは地下街が歩けない」と井川に伝えるように連絡した。

通報に応対した大和田は、井川に清水の伝言を連絡した。

井川は清水が高梨に尾行され、地下街を逃走していると断定した。

清水は道中でハンカチを落とし、地下駐車場に逃げ込んだが、高梨に追い詰められてしまった。

高梨は男子トイレにて狭山を殺害し、誰にも目撃されずに逃走していた。

清水は高梨の白い靴を見て、狭山の遺言の意味を理解していた。

高梨は世間に、娘が狭山に犯されたことを知られたくないために狭山を殺害しており、清水も殺害しようとしていた。

井川と澤村と水木は地下駐車場に駆けつけ、高梨に拳銃を向けた。

高梨は観念し、澤村にナイフを取り上げられて連行された。

井川は清水に事件解決の貢献を感謝し、落としたハンカチを返した。

井川は入院中の藤堂に、事件解決を連絡した。

 

 

メモ

*今回から「一億五千万円」まで、大和田署長が一時的なボス代理となる。大和田署長は「マイコンがトシさんを撃った!」以来久々な登場で、デューク着任後としては初めてとなった。

*ラーメンの値上がり(400円から450円)に大激怒し、2度と注文しないと暴言を吐くブルース。

*マスコミの恐ろしさは「ラストダンス」でも描かれている。

*一係室係長の椅子に座ろうとして、ブルースに阻まれる大和田署長。かつて、庶務の久美や「ドジな二人」の片方が座っていたため、大和田署長には座ってほしかったんだが…

*大和田署長参加の捜査会議の際は、お互いをなぜか仇名ではなく敬称で呼ぶ捜査員。

*出前の値上げしたラーメン屋で食事しようとしたが、特製ラーメンが100円値上がりしたことを知り、うどんに切り替えるドックとブルース。

*マイコンが無線連絡の際、「水木です」ではなく「こちらマイコン」と言った。

*甲坂はアリバイが立証されるシーンが無い。カットされた?

*ラーメン屋台のラーメンの値段が380円であることに喜ぶブルース。

*石田氏は「太陽」では珍しく犯人役。

*清水の伝言を切り捨てず、そのままトシさんに連絡する大和田。恐らくボスの台詞を大和田の台詞に置き換えたものだが、大和田の真面目さが取り上げられ、好感度が上昇。

*ラスト、無人の一係室で(当直中)、ボスに事件解決を連絡するトシさん。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

島津公一:金田賢一

澤村誠:又野誠治

水木悠:石原良純

岩城令子:長谷直美

 

 

清水多美子:戸川純

大和田署長:草薙幸二郎、高梨:石田弦太郎(現:石田太郎)、「モントゥトゥベストフレンズ」の女性客:東丘出陽(現:東丘いずひ)、佐々木四郎:谷村好一

甲坂光恵:工藤啓子、清水の同僚:水木薫、梅村美保、大刀小刀

真田陽一郎、森篤夫、竹中友美、沼田英樹、岡真澄

ノンクレジット ラーメン屋台の店主:大山豊、新聞記者:小寺大介

 

 

西條昭:神田正輝

井川利三:地井武男

 

 

脚本:尾西兼一、小川英

監督:鈴木一平