第699話「優しさごっこ」(通算第393回目)

放映日:1986/6/13

 

 

ストーリー

山下幹子(22歳)という日南貿易秘書課の社員が自宅にて絞殺される事件が発生し、七曲署捜査一係が現場に駆けつけた。

新聞配達の少年が山下宅の扉が開きっぱなしになっているのを目撃していた。

山下は秋田に住む両親から独立しており、死亡推定時刻は昨夜の午後11時から午前0時の間だった。

山下の部屋は荒らされていなかったため、顔見知りの犯行である可能性が強かった。

井川は捜査員に、付近の聞き込みを指示した。

山下のマンションの下階に住む住人のホステスは、昨夜の午後11時に勤務している店を出たが、午後11時30分に帰宅した際、不審な男とぶつかっていた。

西條と水木はホステスに、モンタージュ写真の作成の協力を要請し、モンタージュ写真が完成した。

日南貿易秘書課の社員は、モンタージュの男が立木功(26歳)(片岡弘貴さん)に少し似ていると証言した。

立木は城南大学を卒業後、日南貿易営業部に勤務していた。

山下の同僚は、立木と山下の関係についてほとんど知らなかったため、秘密の間柄だったのではないかと考えられた。

立木は今年(1986年)の春、金沢光子という女性と婚約していた。

立木はかなりの好青年という評判だった。

金沢は丸の内のクラブでピアノを弾いていたが、ごく普通のサラリーマンの娘だった。

立木は犯行当日、午後10時30分に残業を終えて会社を退出していたが、午前0時過ぎに自宅に戻るまでのアリバイが不明だった。

藤堂は西條に、立木と会うように命令した。

立木は自分には金沢という婚約者がいるため、山下とは恋人関係ではないと主張した。

立木は、寂しい部分があり、会社を退出すると自分に話しかけてくる山下の相談相手になっていたことを認め、一緒に映画を見て、飲酒したことを話した。

立木は山下が勝手に立木を恋人と錯覚していた場合、自分にも責任があると感じていた。

立木は西條と水木に一昨日のアリバイを質問され、うまく答えられず、挙動不審な態度をとった。

西條は藤堂から、目撃者に立木を面通しさせ、結果によっては任意で連行しても良いという指令を受けた。

ホステスは現場から逃げてきた男と立木が似ていると証言した。

立木は西條と水木に取調べられていたが、犯行時刻のアリバイを隠していた。

立木は西條に、秘密にしてもらうことを条件に、犯行当日に藤村満智子という女性と会っていたことを話した。

立木は藤村が以前に札付きの不良で、更生してもあまり評判が良くないことを理由に、黙秘を通していた。

立木は2年前(1984年頃)にスナックで藤村と出会ったこと、最初は絡まれたが、本当は素直な良い性格であると語った。

立木は藤村とたまに会って話していたが、犯行当日に久しぶりに藤村に呼び出され、5万円をせがまれたことを伝えた。

立木は藤村に迷惑をかけたくないためにアリバイを渋ったことを謝罪した。

立木は午後11時に藤村の住むアパートの近所の霞公園で藤村と会い、30分ほど話し、午前0時に帰宅したと供述した。

西條は、自分に容疑がかけられているにも関わらず、藤村を庇っている立木を疑っていたが、水木は立木が誰にでも優しい性格であると考えていた。

西條と水木はベルグリーンサービスで勤務している藤村(美保純さん)を張り込み、勤務終了まで待機することにした。

西條と水木は勤務を終了した藤村に接触した。

藤村は立木が殺人容疑者となっていることに関心を示さず、犯行当日の午後11時から午後11時30分まで立木と会っていたかと質問されても、知らないと答えた。

藤村はその時間、自宅のアパートにいたと答え、西條と水木に反抗的な態度をとった。

立木はあくまで犯行当日の午後11時から午後11時30分まで藤村と会っていたことを強調し、井川と令子に藤村と会わせるように頼んだ。

井川は、ショックで落ち着きを無くしている立木に、藤村が証言を覆しても、証言を強要したと誤解されると言い聞かせた。

西條は少年課の吉野刑事(横谷雄二さん)から、藤村に関しての説明を受けた。

藤村は家出、万引き、恐喝、置き引きなどの補導6回、暴走族に加入していたため、その関係者との交流もある、不良少女のパンフレットのような女性だった。

吉野は藤村が立派に更生していると、自信を持って言った。

藤村は不良少女だった頃、自転車をパンクさせて遊んでいた少年を発見し、罪を認めない少年達に、嘘を吐くと自分のような不良になると激怒していた。

吉野は藤村に感心していた。

水木は藤村が偽証していると思っていたが、西條は立木が藤村と連絡を取り、証言を強要した可能性もあると意見した。

藤村は約5万円の新品の箪笥を購入し、自宅に運び入れていた。

井川はマンション管理人(中島元さん)から、藤村が管理人から、山下が帰宅しているかどうかを聞き、駐車場で待機していたことを聞き出した。

藤村は山下に、立木の周囲を探るのを止めるように怒鳴っていた。

水木は藤村と山下が立木を巡って争い、藤村が立木を殺害したと推理していた。

水木は立木を呼び出し、立木に罪を着せるため、藤村が何者かに山下を殺害させ、立木と密会していたことを隠したのではないかと推測していた。

水木は藤村が昔付き合っていた不良達にあたることにした。

西條は大衆食堂で食事する藤村に話しかけ、立木が藤村の証言拒否によりショックを受けていること、藤村が犯人ではないかという推理が出来ていることを告げた。

藤村は西條の発言に全く興味を示さず、爽やかな態度で大衆食堂を去って行った。

澤村は丸の内のクラブで、金沢のピアノの演奏を聴く立木を張り込んでいたが、そこに島津が合流してきた。

澤村は立木が犯人と思えず、藤村の恋人ではないかと思うようになってきた。

水木は藤村の知人の自動車修理工(梨本謙次郎さん)を聞き込み、パブ「ビッグベン」バーテンダーの須崎真司(26歳)が怪しいという情報を得た。

井川と令子は須崎と会い、藤村について事情聴取した。

須崎は藤村と最近会っていないと話し、殺人について否定した。

須崎は犯行当日の先週土曜日には店が休んでいたため、外で酒を飲んでいたと主張したが、店の名前を記憶していなかった。

西條は居酒屋にて、ベルグリーンサービスの同僚(福崎量啓さん)と飲み会をする藤村を張り込んでいた。

須崎は傷害と殺人未遂の前科3犯で、暴走族の首領だった頃に藤村と交際しており、かなり凶暴な性格だったが、藤村には惚れていた。

ホステスは事件から5日経過していることもあり、現場から逃げてきた男の顔を忘れかけていた。

水木は藤村に、給料日が明後日にも関わらず現金で払ったことを指摘したが、藤村は逃走した。

藤村は西條と水木に歩道橋で取り押さえられ、立木のことについて語った。

立木は最後に補導されて出所した際、藤村を励ましてフランス料理を奢っており、最初に藤村の就職口が決定した際、祝いとして赤い薔薇の花束を贈っていた。

藤村は犯行当日、午後10時に日南貿易に電話して霞公園に立木を呼び出し、午後11時頃に立木と会ったことを証言した。

藤村は新しい箪笥を購入するため、立木から5万円を借りたことを認めた。

水木は藤村がまだ何かを隠しているのではないかと考えていたが、藤村は須崎に依頼し、山下を殺害したのではないかという推理を否定した。

西條は立木に、藤村がアリバイを証言してくれたことを伝え、周辺を捜査したことを謝罪した。

容疑者として須崎が浮上した。

須崎のアリバイはまるで証明できなかったが、藤村から山下の殺害を依頼されたという線も浮上しなかった。

西條は藤村が態度をを急変させ、全く逆の証言をしたことに違和感を抱き、昨夜の証言が立木に依頼された嘘の証言ではないかと推察した。

七曲捜査一係が藤村をマークする前のタイミングの、事件の直後や翌朝であれば、立木は藤村に嘘の証言を依頼できた。

藤村が最初、立木の依頼を拒否した理由が不明だった。

翌朝、西條は藤村の住む世田谷のアパートを張り込んでいた。

藤村は立木とのツーショット写真を破っていた。

藤村は西條に尾行される途中、捨て猫を発見し、自宅で飼うことにした。

藤村はバーにて、同僚とデートしていたが、同僚と一緒に帰宅中、自宅に入ろうとした同僚に平手打ちした。

西條は藤村に、同僚とデートした理由を尋ねたが、藤村は暇つぶしと答えた。

藤村はしつこく尾行する西條に激怒したが、アパートの住人(高山千草さん)が怒鳴り声を聞き、西條と藤村に接近した。

住人は藤村に、管理人がペット禁止であるにも関わらず捨て猫を飼う藤村に怒っていたことを伝えた。

住人は捨て猫の鳴き声に憤慨しており、藤村に再度捨てるように要求したが、住人と口論になった。

藤村は捨て猫と一緒にアパートを出ていくことを決意していた。

須崎はコインロッカーから黒い鞄を取り出したが、島津と澤村と水木に包囲され、逮捕された。

黒い鞄の中身は覚醒剤だった。

須崎は飯島が密輸していた覚醒剤の売人であり、山下殺害の犯行時刻には、飯島と取引していたことが証明された。

日曜日、西條は遊園地を訪れていた藤村に接触した。

西條は藤村に推理を打ち明けた。

立木は藤村に、殺害したのは自分ではないが疑われる立場にいるため、偽証するように懇願していた。

藤村は立木を信じ、犯人でないなら男らしく堂々と潔白を証明してほしいと考え、偽証しなくても犯人でない証拠が出ると思っていた。

藤村は迷ったが、立木を救うため、依頼されたとおりに偽証していた。

立木は藤村にとって優しい男だったため、藤村の頼みを断れなかった。

藤村が山下に談判しに行ったのも、立木に依頼されたからだったが、山下は益々意気地になり、世間に立木の裏側にある狡猾さを公表しようとした。

藤村はあくまで本当に立木と会ったと主張した。

西條は立木が女性に優しいのは、その女性を自由にするため、優しさを利用する為であることを告げた。

藤村はあくまで立木を疑う西條を殴ったが、西條に殴り返された。

西條はもう「優しさごっこ」を止めるように説得した。

藤村は西條が独身で、女性にそこそこ持てるのが信じられず、優しくないと言い放った。

西條は号泣する藤村を優しく抱きしめた。

西條と水木は殺人容疑で立木を逮捕した。

藤村が真実を証言した。

立木は藤村を、優しくしたのに恩を忘れた出来損ないの女と言い捨てたが、西條に殴られた。

 

 

メモ

*1986年5月8日に、石原氏が管内胆管炎という病気のためにで入院。ボスが今回を以て欠場。「そして又、ボスと共に」にて1話限りの復帰を果たすが、実質的な特別出演扱いとも言えるため、「ボスのラストのコント」は今回が最後となる。

*石原氏はこの頃、慶応病院の主治医に、しばらくの治療と安静が必要であると診断されたためと、体力に自信が無いため、本格的に降板を決断した。

*被害者の名前が、かつてスニーカーの妹の五代早苗を演じていた女優の名前と全く同じ。

*ドックは今回から、なぜか薬(サプリメント)を服用するシーンが増える。薬の名前は「ハイナオールA」。

*「赤信号♪」とハイテンションで言うマイコン。

*証言者の女性(住人)に、ケーキとレモンジュースを奢る羽目になるドック。

*冒頭から風邪をひいているドック。ボスに、帰宅して風邪を治療するように命じられる。

*女性に優しいと自称するドック。

*偉そうな態度で自分の推理を語り、「古の昔から言うじゃないですか。可愛さ余って憎さ百倍」と言うマイコン。ドックに「マイコン操作している割には古臭いことを言うアンバランス」と言われてしまう。

*ドックに「張り切りすぎて転ぶなよ」と言われた矢先に転倒し、笑われるマイコン。

*藤村が大衆食堂で食べていた焼き魚定食が非常に美味しそう。

*居酒屋にて烏龍茶を注文するドックとマイコン。

*懐かしの「走れ! スニーカー」のバリエーション曲が流れた。

*藤村に殴られた際に落としたせいで、ドックのサングラスが故障。

*ラスト、片岡氏演じる冷徹な男がドックに殴られるのは「ドックとボギー」を髣髴とさせる。

*ブルースは泉に「優しい」と言われたことが無いらしい。

*ラスト、ドックの風邪が捜査員に蔓延してしまったようだ。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

島津公一:金田賢一

澤村誠:又野誠治

水木悠:石原良純

岩城令子:長谷直美

 

 

藤村美智子:美保純

立木功:片岡弘貴(現:片岡弘鳳)

吉野刑事:横谷雄二、ベルグリーンサービス店員:福崎量啓、伊藤公子、大橋恵里子

自動車修理工:梨本謙次郎、長良力丸、加藤由美子、マンション管理人:中島元、アパート住人:高山千草、阪部芳好、横尾三郎

 

 

西條昭:神田正輝

井川利三:地井武男

 

 

脚本:尾西兼一、小川英

監督:手銭弘喜