第674話「友よ、君が犯人なのか」(通算第368回目)

放映日:1985/12/6

 

 

ストーリー

鮎川隆久という男が自宅のマンションの部屋で、病死体となって発見される事件が発生し、七曲署捜査一係が現場に急行した。

鮎川からは脳溢血の兆候が出ていた。

発見者である鮎川の友人の花井(水橋和夫さん)は、鮎川がルポライターという職業上、敵も多かったと判断し、110番通報していた。

花井は2ヶ月前、鮎川から、警察関係者から金になる資料を購入したという情報を聞いていた。

西條と水木は鮎川の書斎を調査し、本棚の隠し戸棚から、警視庁と都内全署の捜査記録に関する本庁のホストコンピューターのデータのコピーを発見した。

藤堂と水木は浜野警視監(滝田裕介さん)から直々に、本庁に呼び出された。

浜野が本庁のコンピューター技師の村岡警部補(高岡健二さん)を連れ、藤堂と水木と面会した。

浜野は警視庁と都内全署の捜査記録が外部に漏洩していることを大問題としており、暴力団や犯罪組織に悪用されることを不安視していた。

村岡の意見によると、ホストコンピューターはプロテクションが硬く、外部からの侵入は事実上不可能だが、都内各地に配置された端末機を使用すれば、オンラインで比較的簡単に引き出すことが可能だった。

データの中身は去年(1984年)の4月から今年(1985年)の9月末までのものだったため、犯人の警察関係者は10月初頭に盗んだこととなった。

同時期、鮎川の預金通帳から200万円が下ろされていたため、200万円が報酬として犯人に支払われた可能性が高かった。

浜野は藤堂に、極秘でデータを売却した警察関係者の捜査をするようにという指令を下した。

浜野は水木に、村岡と共同で、コンピューターを使用して犯人を割り出すように指示したが、警察関係者は一般事務職員含めて莫大な数になっているため、特別にクローズのデータの使用を許可した。

クローズのデータとは、人事部の保管している、全職員の人物査定と勤務評定のデータであり、浜野はクローズのデータについても極秘にするように命じた。

村岡と水木はカードキーを使用し、特別室に入室した。

警視庁全職員の人事部データの調査が開始されたが、公正の意味から、水木が本庁、村岡が七曲署を担当することになった。

水木は自分が重要なデータを扱っていいのかと悩んでいたが、村岡に、それだけ藤堂に信頼されていると激励された。

村岡は浜野の甥だった。

藤堂は西條と令子と島津にデータの入手ルートの捜査を、井川と澤村に暴力団関係の調査を指示した。

各署に端末が配置されており、コンピューター関係の知識が少しでもあれば侵入が可能であった。

村岡は消去法として、コンピューターの扱えなさそうな人物から調査することを提案した。

七曲署にはコンピューター適正能力度0の人物が9名該当したが、いずれも容疑者から外された。

村岡と水木は検索条件のコンピューター適正能力度を2に引き上げたが、半数を調べても容疑者が浮上しなかった。

村岡は浜野に相談したが、浜野は既に対策を打ち、明朝に新しいデータを揃えるようにしていた。

浜野は各種クレジット会社、保険会社、銀行、税務署等の保管している、全警察職員とその家族のプライベートデータを揃えており、クレジットカードの利用状況、保険契約の内容、預金状態、家族の収入等を照合させ、不審な金の動向のチェックを命令した。

水木は浜野の命令に反対したが、浜野は明朝午前9時の出勤を命じ、立ち去った。

水木は藤堂に、捜査から外すように上申したが、藤堂に誰かがこの指令を遂行しなければならないと諭された。

翌日、水木は村岡と共同でチェックを開始した。

村岡は最近2ヶ月間、100万円以上の不明金を入手した人間をチェックリストに掲載するプログラムを完成させており、他のデータと照合し、最終的な判断を下そうとしていた。

城南署交通課婦警の立野由加里(22歳)(里見和香さん)が該当者に浮かんだ。

立野は独身警官憧れの的と呼ばれていたが、1985年10月8日に三栄銀行の200万円の定期預金に入金していることで、チェックリストの対象者となっていた。

井川と澤村は、鮎川の写真を見て逃走した響組組員(兼松隆さん)を取り押さえた。

組員は2週間前、鮎川が響組に顔を出したことを自白した。

鮎川は複数社の暴力団や雑誌社に、データを売り込みに行っていたが、金額が300万円と高額すぎたため、話が纏まらなかった。

鮎川は200万円に下げていたが、データが外部に流出しなかったのは幸いだった。

西條は水木が職員の知りたくないデータまで見せられ、苦悩していることを感じ取っていた。

城北署捜査一係警部補の今西義男(42歳)(団巌さん)がチェックリストに該当した。

今西は長女の今西智恵(11歳)の治療費が保険対象外であることに苦しんでいたが、夫人が清掃作業員の仕事をして捻出していたため、容疑者から外された。

水木は知りたくないデータが次々に出ることに困惑していたが、村岡に警察の仕事が他人の秘密を知ることであると励まされた。

村岡はチェックの残り人数が120人となったため、水木と一緒に帰宅した。

翌日、水木のチェックの残り人数は50人となっていた。

村岡と水木は各々、チェックの作業を完了させた。

水木のチェックリストには立野婦警と、警察学校教官の金山慎二(里居正美さん)が残った。

金山は2ヶ月間にクレジットカードで120万円以上の買い物をしており、預金も娘の結婚費用に使用していたため、ほとんど無くなっていた。

金山は母親と夫人の3人で暮らしていたが、それぞれ収入は無かった。

村岡のチェックリストの2名の該当者のうちの1人は、科学警察研究所法科学第一部長の東慶一郎(佐原健二さん)だった。

東は薬学の分野では大学教授も顔負けの知識を持っていたが、先月の10日、銀行預金に自分名義で150万円が振り込んでいた。

チェックリストのもう1人の該当者は島津だった。

島津は動産総合保険でチェックされており、先月初頭に時価200万円のダイヤモンドに保険をかけていた。

水木は島津のことを脳裏に浮かべ、一係室に入ったが、西條と令子と澤村に島津の宝石のことを動揺した態度で質問したため、疑われた。

西條と澤村は水木を詰問し、水木と一緒に島津の自宅を訪れた。

水木は島津から理由を聞き出し、島津を容疑者から外そうとしたが、島津は自分だけ釈明の機会が与えられることが不公平であると考えた。

水木は他の3人にも釈明の機会が与えられると断定し、個人の感情として少しでも早く知ろうと思っていた。

島津は、商社マンである事情により夫人と子供と別れ、外国所在となった友人からダイヤモンドを渡されていた。

友人は夫人が病気がちであり、万一のときに援助するように島津に依頼していた。

水木は警視庁にて、浜野に注意されたが、村岡に庇われた。

浜野は水木に、3人の釈明の機会について質問されたが、不明瞭な回答を出した。

水木は村岡に感謝し、階段で別れた。

西條は知人の人事部職員から、立野と金山と東の3人が一方的に左遷され、4日後に辞令が出されることが決定したことを聞き出していた。

島津は本庁の上層部に犯人特定の意思があるが、職員のプライベートデータを集めたことを知られるのを防ぐため、何もせずに追放しようとしているのではないかと推測した。

水木は藤堂に、コンピューターは正確だが、コンピューターを左遷に使ってはいけないと進言した。

藤堂は3人の追跡調査を上申したが、浜野に反対された。

浜野は万一、上層部がプライベートデータを調査していたことが露見した場合の、マスコミの大騒ぎ、警察内部への上層部への不信、都民の治安の悪化を恐れていた。

藤堂は浜野の意見に反論し、自分と浜野の辞職覚悟で、3日間の調査を許可された。

西條と水木は警視庁警察学校にて、非番と称して金山と会い、金山宅で遊ぶことにした。

井川と澤村は科学警察研究所にて東を張り込んでいた。

令子は勤務を終えた立野と会い、口外しないことを条件に、秘密を聞き出した。

立野の恋人は婚約相手の東都貿易のエリートサラリーマンの岩本から、好きな相手が出来たことを理由に、婚約を解消されていた。

島津は東都貿易に赴き、岩本から、不当収入の疑いがある200万円についての事情を聞いた。

岩本は慰謝料として、10月初頭に200万円を支払ったことを自白した。

西條と水木は金山宅で、鍋を振る舞われた。

金山は母親が部屋にいると話した。

西條は物音を聞き、金山の母親の部屋に入った。

金山の母親はぼけてしまい、金山のクレジットカードを勝手に使用し、高級衣服や高級アクセサリー、高級ハンドバッグを購入していた。

金山夫人は金山の母親の浪費の補填のため、着物や宝石を売却していた。

立野と金山の2人が容疑者から外された。

翌日、村岡が凶器の大型登山ナイフで刺殺され、遺体となって発見されてしまう。

村岡の死亡推定時刻は昨夜の午後10時から午後11時前後だった。

鮎川にデータを売却した犯人が、村岡と水木のコンピューター調査を知り、先手を打って村岡を殺害したと推理された。

東は午後10時過ぎまでバーにいたため、完璧なアリバイがあった。

東はタクシーに乗り、井川と澤村をまこうとしたが、島津に尾行されていた。

東は島津の尾行を察知し、タクシーを乗り換えたが、井川と澤村と水木に尾行された。

東は喫茶店で関東製薬社員と会合したが、井川と澤村と水木が喫茶店に駆けつけてきた。

東は素直に、関東製薬に研究データを売却したことを認めたが、金のためではなく、研究データによって新薬が完成すれば、医学の進歩に役立つことを訴えた。

東は捜査員が研究データ売却を捜査していると勘違いしていた。

コンピューターが絞り出した容疑者は全員無実だった。

山村は容疑者4人に島津が入っていたが、水木が島津を信じて事情聴取したように、村岡も同様のことをしたのではないかという意見を出した。

村岡は本庁に赴任する以前、北署に在籍していたが、北署には谷口弘(27歳)という該当者がいた。

谷口は北署捜査二係の刑事(巡査長)だったが、10月9日に契約した自動車保険がチェックされていた。

谷口は225万円のフォルクスワーゲンのサンタナに保険をかけていたが、貯金がほとんどなく、下ろした形跡もなかったのに、容疑者から外されていた。

谷口の資料には、武蔵競馬場の万馬券2万円のことが記載されていたが、浜野から貰ったデータの中に競馬のデータが無かった。

水木は車を洗濯中の谷口と対面した。

村岡は北署在籍時代、谷口を弟分のように可愛がっており、容疑者の中に谷口の名前を見て、心配して金の出処を尋ねていた。

谷口はサンタナについて、競馬で儲けて買ったと答えたが、現職刑事がギャンブルに手を出したことが上層部に知られることを恐れ、村岡に黙ってリストから外すように懇願していた。

村岡は谷口を信じて、容疑者から外したが、確認のため再度調査した結果、谷口が万馬券で儲けていないことを知ってしまった。

競馬で100万円以上受理した者は、住所氏名が記録されることとなっていた。

谷口は一昨日の午後10時頃のアリバイを尋ねられ、観念し、コンピューターのデータを漏洩し、村岡を殺害したことを認めた。

澤村は谷口を逮捕した。

東は辞表を提出していた。

 

 

メモ

*「殉職刑事たちよ やすらかに」に登場した浜野が再登場。村岡という甥が登場するが、事件で死亡してしまう。

*七曲署事件のデータとして、昭和60年4月7日発生のサラリーマン金融強盗事件捜査記録のものが登場。事件発生時期は「七曲署全員出動・狙われたコンピューター」。担当刑事にラガーがいるのが懐かしい。しかし、捜査員の表示が、ドックが「西条」、ブルースが「沢村」となっている。

*トシさんとブルースは七曲署コンピューター適正能力度0という評価になっている。しかし、当時実際にコンピューターを所持していたのは又野氏のみだったという。

*七曲署コンピューター適正能力度0のデータの中に、「山田治署長」という表記があるが、大和田署長はどうした? 前回登場の「マイコンがトシさんを撃った!」から、次回登場の「ヒロイン」まで少し間が開いているため、一時的に離職したのかな?

*今西の通称は「猛牛」。インパクトのある通称だが、今西の出番は一瞬だけ。

*七曲署の刑事が殺人犯ではないという形で容疑者の一人となるという、前代未聞の展開。

*デュークが昭和35年(1960年)8月22日生まれ(25歳)であることが判明。演じている金田氏と誕生日が同じだが、1歳上(金田氏は1961年生まれ)。

*デュークの自宅が登場。東京都中野区中野2-5-4、サンライズマンションに在住しており、高級感溢れる生活をしている。

*特別な事情を抱える友人のために、ダイヤモンドを預かっていたデューク。

*ブルースは理系タイプの人間が苦手らしい。

*マミーは立野をはじめとする婦人警官の憧れの的のようだ。

*3人の容疑者は全員犯人ではなかったが、マイコンが容疑者のデュークを信じて捜査したように、村岡も同様の形をとったというのは上手い。

*浜野はその後、「さらば! 山村刑事」に再登場。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

島津公一:金田賢一

澤村誠:又野誠治

水木悠:石原良純

岩城令子:長谷直美

 

 

村岡警部補:高岡健二

浜野警視監:滝田裕介、東慶一郎:佐原健二

金山慎二:里居正美、立野由加里:里見和香、石田登星

今西義男:団巌、響組組員:兼松隆、音羽久米子、花井:水橋和夫、佐々木誠人

関口久美子、佐々木直子、千葉茂、山田博行、寺沢剛

 

 

西條昭:神田正輝

井川利三:地井武男

山村精一:露口茂

 

 

脚本:古内一成

監督:鈴木一平