第668話「絆」(通算第362回目)

放映日:1985/10/25

 

 

ストーリー

令子の自宅のコーポコバヤシに、吉岡太一(55歳)(石田弦太郎さん)という男が、退職の挨拶のために来訪していた。

吉岡は新人警察官時代の岩城と約1年間を一緒に勤務したことがあり、岩城に警察官の心得を教えていた。

吉岡は、刑事に昇進した後でも自分を気にしてくれる岩城に感謝していた。

吉岡は加齢と娘の吉岡みどりの結婚のため、親の責任を果たしたと感じ、警視庁松原署を辞めることにしていた。

吉岡は退職後に甲陽警備保障に勤務することになったことを伝え、コーポコバヤシを去った。

その翌日、吉岡が矢追3丁目のビルの屋上から転落し、遺体となって発見されてしまった。

吉岡の死亡時刻は昨夜の午後11時で、所持品が何も盗まれていなかった。

令子は吉岡の死に対し激しく取り乱し、自殺ではないと否定した。

山村は捜査員に、目撃者の捜索と吉岡の周辺の調査を命じた。

令子と水木は吉岡宅を訪れ、吉岡夫人の吉岡保子(白木万理さん)に吉岡の死を告げた。

保子は吉岡の遺体と対面したが、どこか淡々としていた。

島津は、甲陽警備保障の専務の篠田雄司(53歳)(北町嘉朗さん)から事情聴取を行った。

篠田は吉岡と松原署勤務時代の同僚で、吉岡の真面目さを評価しており、一昨日に吉岡と会い、待遇の話をしたこと、寂しそうであったことを話した。

吉岡が3日前に訪れた豚カツ屋主人の秋本(真田健一郎さん)は、元気そうであったと証言した。

吉岡は2週間の間、退官の挨拶として、今まで世話になった人や知人の家を訪ね歩いていたが、寂しそうだったという声が多かった。

事件の目撃者は発見されず、屋上にも争った形跡があった。

屋上から発見されたタバコの吸殻は吉岡のものだった。

西條と島津は自殺ではないかという意見を出し、井川も吉岡が人に恨まれるような人物ではなかったため、覚悟の上の自殺ではないかと考えていた。

水木は保子が悲しそうではなかったことから、夫婦仲が悪かったのではないかと意見したが、令子に反論された。

令子は吉岡が岩城と気が合う人物であると思っており、自殺するとは信じられなかった。

藤堂は吉岡の死を、他殺、事故、全ての可能性を考えて多角的に捜査することにした。

令子と水木は吉岡の葬式に参列し、みどり(27歳)(小山茉美さん)と夫(越村公一さん)と会った。

みどりは吉岡が自分の結婚を喜んでいたことから、吉岡の自殺を信じられなかった。

保子は吉岡の自殺する理由に心当たりが無く、令子と水木に、これ以上自分達に関与しないように言い放った。

保子は吉岡が例え自殺だったとしても、それを受け入れようとしている節があった。

令子は覆面車を走行中、山村から、保子の姿が見えなくなったという連絡を受け、吉岡宅に戻った。

保子は失意の表情で街を歩いており、赤信号のまま車道に飛び出し、車に轢かれて矢追中央病院に搬送された。

令子と水木は病院に急行し、保子の手術を見守っていた井川、みどりと夫と合流した。

保子は骨折2ヶ所で、頭を強打しており、集中治療室で治療を続行することになった。

令子は保子と夫を励ました。

水木は保子が自殺しようとした理由を疑問に思っていたが、澤村は保子が吉岡に先立たれ、ショックで自殺しようとしたと思っていた。

水木は保子の発言の意味が理解できなかった。

西條は夫の自殺が妻から考えれば裏切り行為であるため、保子が生きる気力を失ったのではないかと推測していた。

澤村は吉岡が自殺ではないかと断定した。

令子も自信を無くしていたが、人生に絶望しただけとはどうしても思えず、深い理由があると思っていた。

島津は吉岡が殺害されたという疑いが皆無で、令子も吉岡が自殺という線に傾いているため、警察の介入する範囲を超えていると釘を刺した。

西條も島津の意見に同意し、吉岡一家を不当に傷つけるかもしれないと警告した。

令子は吉岡の死が自殺という確証がなく、変死であって放置できないとして、それでも捜査を続行するべきと主張した。

西條は非難を受け入れる覚悟を決めた。

令子は秋本に保子の自殺未遂を告げ、会話した。

吉岡と保子が結婚したのは昭和32年(1957年)7月頃で、翌年(1958年)にみどりが生まれていた。

吉岡夫婦が知り合った経緯は、吉岡のパトロール区域で、保子が喫茶店「田園」の看板娘として働いていたことからだった。

吉岡と保子の結婚の時、保子が妊娠していたため、慌てて結婚した節があった。

令子は保子の友人のブティックのママから事情聴取していた。

ブティックのママは保子とはたまに会って食事する仲であり、保子がいつもと同じであったと証言した。

ブティックのママは保子と会食した際、保子が「夫婦の絆とは何かしら」と真剣な表情で呟いたことを思い出した。

西條は夫婦が他人同士であるため、お互いがどのくらい理解しあえているかということに自信を無くすのは当たり前ではないかと思っていた。

令子はそのような悩みなら、後追い自殺をせず、自殺したくなる何かがあると意見し、吉岡の変死の謎を解こうとしていた。

令子と水木はみどりと対面した。

保子は一命を取り留めたが、意識が戻らず、生きることを拒否していた。

令子と水木は保子の昔のアルバムを拝見した。

みどりは保子が夫婦の絆について話したことが信じられず、両親がとても仲の良い夫婦だと感じていた。

保子のアルバムには、白骨死体発見の記事の切り抜きが貼られていた。

記事の切り抜きには、発見時に立ち合った吉岡が映っていた。

みどりは吉岡が新聞に映るのは稀だったため、記念に新聞を切り抜いていたが、保子が切り抜きをかなり嫌がっていた。

令子と水木は松原署刑事(小瀬格さん)から、白骨死体についての情報を入手した。

白骨死体が発見されたのは今年(1985年)の9月であった。

死体の身元は鑑識の結果、20年以上経過していることから、昭和32年の6月に寿町で行方不明となった、山岸亮一(当時24歳)と判明していた。

山岸の遺体と一緒に、38口径の錆びた銃弾が発見されており、山岸の左胸の心臓に命中していたが、条痕鑑定が不可能な状態だった。

山岸は愚連隊で、婦女暴行の常習犯であり、殺害されても不思議の無い男だった。

当時、吉岡も寿町の派出所に勤務していた。

酒屋の女主人(岸井あや子さん)は山岸の写真を見て、現在マンションに建て替えられているアパートに居住していた鼻つまみ者であったことを思い出した。

山岸は近所の若い女性を誑かしては、金を搾り取る男であり、仲間と喫茶店「田園」に入り浸っていた。

当時、吉岡と保子が恋愛関係にあったため、吉岡が山岸を射殺した可能性が出た。

昭和32年6月14日、吉岡が銃弾の紛失届を提出し、謹慎処分を受けていることが判明した。

吉岡が銃弾を紛失した時期と、山岸が失踪した時期が完全に一致した。

昭和32年6月は2人が結婚する1ヶ月前だった。

山岸が、美人と評判だった保子に声をかけて乱暴したという仮説が立てられ、吉岡が逆上して射殺し、遺体を河原に埋めたという可能性も浮上した。

水木は保子がそのことを知り、白骨死体発見について触れられるのを嫌がったのではないかと発言した。

令子は吉岡について、責任感が強く、自分のしたことから逃げる人物ではなく、自首したのではないかと考えていた。

島津は吉岡がみどりのために公表できず、みどりが山岸の子供かもしれないと推理していた。

吉岡がみどりの結婚後に警察官を退職し、殺人の贖罪のために自殺を選んだ、吉岡夫婦が秘密契約で成立していたという意見が飛び交った。

令子は確証が皆無なことを理由に、推理に反論した。

藤堂と山村は吉岡の変死と、保子の自殺未遂のみが明確であり、捜査を中断できないことを諭した。

令子と水木は保子に、真相の究明のみが目的で、プライバシーの侵害を犯す気が全くないと言い、真実を告げるように懇願した。

昭和31年(1956年)、山岸は「田園」で勤務し始めて直後の保子に、執拗に声をかけていた。

保子は昭和32年1月、山岸に帰り道にて乱暴されそうになったが、そのときに助けたのが吉岡だった。

吉岡は山岸が姿を見せなくなった頃、拳銃の銃弾を紛失したことで、謹慎処分を受けていた。

保子は吉岡が山岸を殺害したのではないかと想像していたが、怖くて吉岡に聞くことができなかった。

保子はそのうちほとんど忘れていたが、2ヶ月前、山岸の白骨死体が発見されてしまった。

保子はその際、不機嫌で何も言わない吉岡から何も聞くことができなかったが、挨拶の後に山岸の死を知った。

保子は吉岡が28年間、自分を騙し続けてきたのか、結婚が殺人の口封じのためなのかと思い込んで絶望し、自動車の前に飛び込んでいた。

令子は吉岡が山岸を射殺していないと訴えたが、保子は吉岡のことを何も知らないような気がしていた。

令子は殺人の恐ろしい疑惑さえ忘れさせた素晴らしい人物が吉岡であると説得した。

保子は28年前の銃弾紛失事件当時の吉岡の行動について、信じられない様子で、何度も通った道と立ち寄った場所を捜索していたことを思い出した。

保子は令子に感謝し、令子は保子の病室を去った。

山岸の一件が吉岡の自殺の原因でないことが確定した。

山村と井川は吉岡の銃弾の紛失が引っかかっていたが、令子は真犯人が吉岡の銃弾を盗み、容疑を吉岡にかけたのではないかと推測した。

その容疑者として当時の同僚や親友が挙げられたが、島津は容疑者として、甲陽警備保障の専務で、吉岡の元同僚の篠田を挙げた。

島津は吉岡の知人と友人のうち、篠田だけ、吉岡が自殺しようとしたのではないかと証言していたことを報告した。

篠田は8年前(1977年頃)に松原署を退職しており、甲陽警備保障の事業拡大のために強引な手段を使っていた。

昭和32年当時、篠田は吉岡と同じ派出所に勤務し、吉岡が銃弾を紛失した当日も一緒に勤務していた。

篠田は吉岡が死亡した当日、アリバイが皆無だった。

山岸の白骨死体を引き取りに来た女性がいたが、その女が篠田の消息を担当刑事に質問していた。

篠田は当時、女性にだらしないという評判だった。

その女性は新宿区橘町2-6、スナック「美智」を経営する富田みち子(姫ゆり子さん)だった。

篠田は山岸の罪を見逃す代わりに、山岸の愛人だった富田を奪い取ったが、山岸からそれをネタに強請られていた。

篠田は山岸の失踪後、怖くなって富田のもとから逃げ出していた。

富田は吉岡に同じことを教えていた。

山村と令子は篠田の逮捕のため、甲陽警備保障に赴いていた。

篠田は山岸のことを忘れたと述べた。

山村は篠田に、富田が山岸と篠田の関係と、それを最近訪ねてきた吉岡に全て話したことを告げ、自首を勧めた。

篠田は吉岡と居酒屋で飲み合った際、吉岡から山岸殺害の真犯人であると言い当てられた。

篠田は吉岡の発言を脅迫と勘違いし、吉岡を尾行し、機会を狙ってビルの屋上から突き落としていた。

令子は篠田を殺人容疑で逮捕した。

 

 

メモ

*ロッキーの殉職から3年経過したことが触れられた。

*今回のマミーはかなり感情的。「岩城が生きていたら同じことを言う」という発言だが、正直どっちともいえないという印象。

*吉岡は55歳の設定だが、当時の石田氏の年齢は41歳(!)。石田氏より白木氏(当時49歳)の方が7歳年上だったりする。

*デュークは客観的な立場から、吉岡の死の捜査の中止を意見するも、結局採用されず。

*レストランで会議するドック、マミー、ブルース、マイコン。ドックとマイコンは白飯、ブルースはお握りとスパゲッティを食べている。

*ブルースに、夫婦のことで気を付けた方が良いと失言し、険悪なムードにさせてしまうマイコン。

*白骨死体、銃弾紛失、乱暴と、キーワードが増えるにつれて、陰湿な雰囲気が漂っていく事件。

*吉岡が山岸を射殺していなかったこと、みどりが吉岡と保子の子供だったことが確定したこと、保子が改めて吉岡の素晴らしさを実感したことは救いだった。

*容疑者として篠田を挙げ、事件を解決に導くデューク。

*デュークの持論は「推理は自由、結果良ければ総て良し」。

*ラスト、「ロッキーといつも一緒です」と語りかけるマミー。

*マミーの母親の波江はOPにクレジットされているが、本編には未登場。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

島津公一:金田賢一

澤村誠:又野誠治

水木悠:石原良純

岩城令子:長谷直美

 

 

吉岡保子:白木万理

吉岡太一:石田弦太郎(現:石田太郎)

早瀬波江:成田光子(未登場)、松原署刑事:小瀬格、篠田雄司:北町嘉朗、高橋信子

富田みち子:姫ゆり子、吉岡みどり:小山茉美、酒屋女主人:岸井あや子、田村貫

秋本:真田健一郎、岸野一彦、真田陽一郎、吉岡みどりの夫:越村公一、佐藤久留美、高市好行

ノンクレジット 岩城裕太:服部賢悟、岩城陽子:中原有弥子

 

 

西條昭:神田正輝

井川利三:地井武男

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、尾西兼一

監督:鈴木一平