第667話「デュークという名の刑事」(通算第361回目)

放映日:1985/10/18

 

 

ストーリー

大里交通所属のタクシー運転手の大里利一(36歳)(阪脩さん)は夜の駐車場で、タクシーを停車して休憩していたが、ジョギング中の三沢民代(松本留美さん)を目撃していた。

山岸和久(40歳)(高岡一郎さん)はスポーツカー「品川56 25-54」を停車した際、三沢と顔を合わせた。

三上食堂の従業員の下山正(赤塚真人さん)は出前の配達中に三沢とすれ違った後、山岸が飯田という男と揉み合いになり、刺殺するのを目撃した。

下山は物音を立て、山岸に発見されてしまったが、すぐに逃走した。

午後10時5分、山岸はスポーツカーを爆走させ、現場を立ち去ったが、大里にナンバーを目撃された。

早朝になり、現場に七曲署捜査一係が駆けつけた。

飯田は三流業界紙の記者だが、記者とは名ばかりの強請屋だった。

飯田の死亡推定時刻は昨夜の午後10時だが、所持品からは財布や身分証明書やクレジットカードが盗まれていなかった。

山村は飯田の所持品に鍵がないことを不審に思い、島津と水木を飯田宅に急行させた。

島津と水木は飯田宅に突入したが、室内が何者かにより荒らされていた。

飯田は最近、東南商事を調査し、悪事の証拠を掴んでいたことが判明していた。

東南商事は大型海外プラント絡みで、不正入札や汚職をしていた。

飯田宅からは東南商事だけでなく、他の会社の資料も全て持ち去られており、犯人らしき指紋が採取されなかった。

島津は東南商事を疑っていた。

東南商事は戸川組の復活に陰で協力しており、戸川組幹部が東南商事の顧問となっていた。

山村と西條は東南商事秘書室長の大内(剣持伴紀さん)と面会した。

大内は飯田について知らないと発言し、東南商事の不正入札や汚職について否定した。

三沢と大里は新聞で、戸川組が飯田の殺人事件に関与していることを知った。

島津は大里に事情聴取を行い、3日前の殺人事件について質問した。

大里はいつも、スポーツカーを目撃した場所で仮眠を取っていたが、犯行当日に熟睡したと誤魔化し、飯田の写真を見ても知らないと述べた。

澤村と水木は下山から事情聴取を行った。

下山は近所の学生に、殺人を目撃したと話していたが、澤村と水木には何も発言していないと伝えた。

下山は犯行時刻に仕事をしていたと偽証し、殺人事件についての証言を拒否した

澤村は水木に、島津に食い下がるように指示した。

島津は執拗に大里を尾行していた。

大里はタクシー運転手に転職した直後であり、証言に煩わされて水揚げが減ることに困惑していた。

大里は頑強に、犯行時刻に熟睡していたと証言したため、島津に引き止められた。

大里は白色のスポーツカーで、ナンバーの末尾が「54」であったことを証言し、三沢のことを教えた。

下山は配達に行く寸前、新聞で、大里が殺人事件の目撃者として名乗り出たことを知った。

近所の24時間スーパーマーケットの店員が事件当時、出前から走って帰って行く下山を目撃していた。

下山は水木に嘘を看破されたが、それでも黙秘を貫き通した。

戸川組組員2名(吉中六さん他)が下山をマークしていた。

下山は事件とどうしても関与しようとせず、水木のもとから逃げ去った。

大里はタクシーを運転中、前方から突撃してきたダンプカーを回避しようとしてドラム缶に衝突し、重傷を負った。

島津の捜査が「七曲署の証言強要」、「食い下がったS刑事」と報道されてしまった。

島津は松川商事を訪問し、松川重吉(渥美国泰さん)と会った。

松川は新聞の記事を見て、S刑事が島津であると直感しており、島津の母親が、島津が人間嫌いにならないか心配していたことを話していた。

島津は人間が好きでも嫌いでもないと言い放ったが、松川は島津が行方不明の父親の公明に拘っているため、人間が好きではないかと思っていた。

松川は島津だけが父親に拘っているため、100万円の小切手を渡し、拘りを捨てさせようとしたが、小切手を破り取られてしまった。

西條は島津に、目撃者の聞き込みの続行を中止するように勧めたが、島津は犯人についての証言を入手すると約束した。

西條はジョギング仲間の証言で、三沢の正体を掴んだ。

三沢には幼稚園児の子供がおり、ジョギングは夫が帰宅してからの夜専門だった。

西條と島津は三沢に飯田の写真を見せ、殺人事件について質問したが、三沢は事件当日のことを記憶しておらず、何も目撃していないと答えた。

三沢は事件との関与を激しく拒否し、西條と島津に帰宅を強要させた。

井川と令子は、白色で末尾のナンバーが「54」のスポーツカーを所持している山岸を訪ねた。

山岸は内藤町の釣具店「山岸釣具」の店主だった。

山岸は殺人事件の当日、横浜にドライブに出掛けたと発言したが、アリバイが皆無だった。

井川と令子は山岸の落ち着き払った態度を不審に感じた。

島津は三沢に張り付いており、三沢宅の庭に入っていた。

島津は三沢の住居不法侵入の告訴の警告を無視し、三沢から証言を得ようとしていたが、三沢は事件の関与を断った。

三沢は島津の熱意に負け、現場付近で下山とすれ違ったこと、下山が犯人を目撃していると思っていることを告白した。

水木は三上食堂内で下山を張り込んでいた。

下山は戸川組組員から脅迫電話を受け、激しく動揺した。

山岸は博打好きで1000万円の借金があったが、事件の数日後に全額返済しており、金の出所が不明だった。

近所の住人は山岸が午後9時頃にスポーツカーで出発し、午後11時頃に戻ったところを目撃していた。

殺人を犯し、飯田の部屋を荒らし、自宅に戻るには十分可能な時間だったが、山岸と戸川組の関連性が不明だった。

島津は三沢より下山の方が、犯人を目撃した可能性が高いと考察していた。

島津は下山に接触することにした。

藤堂は下山の証言が貴重であるため、島津の行動を尊重し、他の捜査員には戸川組と山岸の関係を調査させた。

島津は下山を張り込み中の水木と合流した。

下山は恋人と公園で待ち合わせ、デートしていた。

島津は下山に接触し、山岸の写真を見せ、恋人に下山が殺人事件の目撃者であることを伝えたが、下山は山岸を知らないと答えた。

下山は恋人と、1週間前から約束していたデートに出掛けようとしており、島津と水木の介入を頑固に断った。

島津と水木、組員2名が下山と恋人を監視していた。

下山の恋人は下山と食事中、殺人事件に興味を持ち、下山に質問した。

下山は組員と目が合って動揺し、恋人を連れて店を出た。

水木は下山を尾行しようとする組員2名を制止させたが、組員は凶器を所持していなかった。

組員は水木を挑発し、その場を立ち去った。

島津と水木は下山の自宅のアパートを張り込んでいたが、再び組員も張り込んできた。

水木は自分達が離れた方が、下山が安全ではないかと意見したが、島津は大至急、下山から証言を得ようとしていた。

島津は三沢親子に接近しようとする組員を取り押さえた。

下山の恋人は道中で3人の組員に包囲され、三上食堂に逃げ入った。

下山は島津と水木のせいであると非難したが、冷静になり、恋人を室内に滞在させ、仕事に戻った。

山村は山岸の常連のバーが、戸川組組員の菊川道男の愛人の経営する店であるという情報を入手した。

山岸が借金のことを愚痴に話し、菊川に付け込まれたのではないかという推理が完成したが、状況証拠しかなかった。

島津と水木は逃走する下山を尾行したが、下山の前方から組員の車が突進してきた。

下山は水木に庇われ、車を回避したが、島津から、証言するしか助かる道がないと通告された。

島津は下山に、証言する勇気を出すように迫ったが、下山は混乱して疾走した。

下山は組員に刺殺されそうになったが、島津と水木の助力で事なきを得た。

島津と水木はセメント工場で下山を取り押さえたが、多数の戸川組組員が下山を殺害するため、拳銃を乱射してきた。

島津は組員の発砲に左足を負傷したが、水木に下山の保護を任せ、単独で組員の猛攻を阻止しようとしていた。

藤堂は西條から、戸川組が下山を殺害しようとしているという報告を受け、井川と令子を派遣した。

島津は水木に、恐怖で混乱する下山を連れて逃走するように指示したが、発砲されたため、水木を待機させた。

島津は上着を放り投げ、組員を攪乱し、その間に接近し、2人の組員の拳銃を撃ち落とした。

島津は砂山にて、組員の拳銃を撃ち落としたが、水木と下山を狙撃しようとしている組員(星野晃さん)を発見し、発砲した。

島津はさらに組員の1人の拳銃を撃ち落としたが、発砲で左腕を撃たれてしまった。

島津は工業用機械に登って逃走する組員を追跡し、拳銃の銃弾を撃ち尽くした組員を殴り倒した。

島津は工業用機械から飛び降り、組員を叩きのめした。

西條と澤村がセメント工場に駆けつけ、逮捕した。

下山は島津に謝罪し、証言を約束した。

井川と令子は山岸に、下山と戸川組幹部が証言したことを告げ、山岸を逮捕した。

東南商事の大内にも逮捕状が出ていた。

島津は大里の病室に見舞いに行き、果物を差し入れ、帰って行った。

大里はもう半月で退院できるほどに回復していた。

一係室に三沢から、ケーキが差し入れられていた。

島津は三沢とすれ違い、三沢に協力を感謝した。

 

 

メモ

*冒頭、バーでデュークと一緒に酒を飲むマイコン。「コンピューター計画」でも語った、「コンピューターを使えば出世が早い」という刑事になった動機を語る。

*しかし、マイコンは捜査一係のような良い職場で良い仲間と一緒に仕事をすることの方が、出世より大切と思っており、かなり捜査一係に染まってきたようだ。

*デュークの「人間は概ね、自己の利益のために人を裏切る生き物」、「人間は損得で動く」という持論が語られる。しかし、デュークは自分の分だけ勘定して帰って行った。

*「事件の目撃者から証言を取るのに苦戦する刑事」を描いた、「目撃者」や「その一言」などの系譜の話。今回は3人の目撃者であり、話が面白くなっている。

*デュークの事件解決への執念、捜査のためなら非情な行動も辞さないスタンスが描かれた話。

*「石塚刑事殉職」で、ゴリさんの尽力により壊滅した戸川組。壊滅後も度々残党が登場していたが、ここにきて再復活してしまう。ドックの「ゴリさんが命を賭けて叩き潰したのに」という呟きが空しい。なお、「山村刑事左遷命令」にも「戸川組」が登場するが、なぜか誰もゴリさんのことについて触れていないため、別組織である可能性がある。

*剣持氏は1シーンのみの出演で、逮捕シーンもカットされている。

*大里は老けていて36歳には見えない。演じる阪氏は当時54歳だが、高岡(谷本)氏演じる山岸より年下の設定になっている。(谷本氏は当時37歳)

*「デューク刑事登場!」に登場した松川が再登場。小切手を渡すも、再び破り取られてしまう。「再会の時」にも再登場。

*デュークは「損得で動かない人間」の1人らしい。

*S刑事が自分であると名乗り、デュークを庇おうとする優しい一面のあるドック。

*吉中氏の不敵な笑みが絶妙。

*クライマックスのデューク対戸川組の場所は、「走れブルース」や「ジョーズ刑事の華麗な復活」で使われた場所?

*デューク対戸川組組員。左腕と左肩を撃ち抜かれるも動じず、組員7名を逮捕する射撃の腕とタフさを見せた。

*目撃者の証言が絶望的と焦っていたが、島津と三沢の和解を見て、元気になったマイコン。

*デュークはケーキを分けられていないが、好きではないのかな?

*下山はその後、「捜査に手を出すな!」に再登場する。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

島津公一:金田賢一

澤村誠:又野誠治

水木悠:石原良純

岩城令子:長谷直美

 

 

松川重吉:渥美国泰

下山正:赤塚真人

三沢民代:松本留美、大里利一:阪脩、山岸和久:高岡一郎(現:谷本一)

大内秘書室長:剣持伴紀、三上食堂店主:里木佐甫良、青柳有希子、戸川組組員:吉中六、佐藤文裕、石崎洋光

長良力丸、戸川組組員:星野晃、菊川予市、宮寺康生、杉浦宏俊

 

 

西條昭:神田正輝

井川利三:地井武男

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、尾西兼一

監督:高瀬昌弘