第91話「おれは刑事だ!」
放映日:1974/4/12
ストーリー
石塚はひったくりの現行犯を追跡中、犯人にぶつかった老婆(本間文子さん)を無視してしまった。
矢部進(32歳)(伊東四朗さん)は老婆を助けた。石塚は犯人を逮捕した。
矢部は石塚をかっこよく思い、「七曲署の石塚だ」という言葉を気に入った。
矢部は帰り際、4人のチンピラに絡まれている洋子(黒沢のり子さん)という女を見つけた。
矢部は自分を七曲署の石塚と名乗り、チンピラを追い返した。
洋子は矢部に感謝し、自分の職場のスナック「ヤング」のマッチを渡した。
一係室には、石塚への感謝の手紙が多数届いていた。
しかし石塚は自分を名乗って慈善活動を行う矢部に対し怒っていた。
石塚は自分の名前を名乗る矢部に会ったという老婆には会ったが、情報は得られなかった。
一係室に和泉署から、石塚が和泉町で捜査活動をしているという抗議電話が入った。
矢部と洋子は2人で映画を見た後、バスに乗っていた。
矢部は途中でスリが財布を抜き取る場面を目撃した。
矢部はスリを行った源三(江幡高志さん)を追跡して追い詰めた。
源三は矢部が石塚だと名乗ったため、財布を返し、矢部は源三を見逃した。
しかし、源三は矢部に空の財布を手渡し、本物の財布を返しておらず、財布にダイヤモンドの指輪が入っているのを確認した。
矢部は別の財布を交番に届けた。
山村と石塚は「ヤング」に赴いていた。
「ヤング」のマスターは、開店時に矢部が洋子を毎回送迎することを記憶していた。
しかし、客の間では洋子が警察の監視付きだとして評判が悪かった。「ヤング」に洋子が来た。
洋子は矢部の住所を知らなかったが、矢部が2丁目の床屋に挨拶していたため、近所に住んでいると思っていた。
矢部は2人のヤクザ(畠山麦さん、仙波和之さん)に石塚と間違われ、車に拉致されそうになった。
矢部は取り払って出前の蕎麦屋のカブで逃走しようとした。
しかし、女を避けてカブが横転してしまい、矢部は走って逃げた。
矢部は路地裏の隅に隠れ、ヤクザから逃げることに成功した。
山村と石塚は矢部の住む「ゆたか荘」の部屋に入った。
しかし、矢部の部屋の中はインスタントラーメンで溢れていた。
偶然矢部が帰ってきたが、矢部は山村と石塚をヤクザと勘違いして逃走し、すぐに取り押さえられた。
矢部は命を狙われたとして助けを懇願した。
石塚は取調室で矢部に対し激怒していた。
矢部は失業中であり、1ヶ月4万円程度の失業保険でインスタントラーメンを食いながら生計を立てていた。
矢部が石塚の名前を名乗った理由は、人助けがしやすいからであった。
柴田が警察庁でデータをとった結果、矢部が前科二犯のプロのスリ師であり、7年前(1967年頃)に城西刑務所を出所したことが判明した。
矢部は2年間服役して出所後は一度もスリをしていないことを主張した。
矢部は7年間働いていた板金工場をクビになっていた。
矢部は父親からスリの技術を叩きこまれ、スリになっていた。
矢部は何をやってもうまくいかず、一番うまくいったのが石塚の真似だということを述べた。
島により、矢部の襲撃事件の目撃者が多数発見された。
藤堂は矢部を信用することにした。
石塚は矢部に前科者カードから犯人探しを要請した。
石塚は矢部に対し、現職の刑事が人から憎まれたり恨まれたりであり、何も知らない矢部が慈善活動を行うのに怒っていると伝えた。
早朝になり、矢部は石塚が寝ているのを見計らって逃走しようとしたが、石塚に押さえられて激怒された。
矢部は今日の午後3時までに職安に行かないと今月以降の失業保険が無効になってしまうことを危惧していた。
石塚は矢部を疑った。
矢部は松宮のあたりでスリを逮捕したが、逃がしてしまったことを自白した。
藤堂はこのことを聞いて派出所に連絡したが、警官によると財布にダイヤモンドは入っていなかった。
藤堂は石塚に、「バスの中で宝石デザイナーから8000万円のダイヤが盗まれる」という新聞の記事を見せた。
山村と石塚と矢部は吉見宝石デザイナーを訪れた。
矢部は財布がすられたのが吉見(飯沼慧さん)であると認めた。
吉見は派出所に届けられた財布が違うと言った。
源三が似たような財布を提出した可能性があった。
吉見のもとに、ダイヤの持ち主であり、建設会社とナイトクラブの経営者である高辻誠一郎(渥美国泰さん)が訪ねた。
山村は政財界を揺るがした詐欺事件の際、高辻を取り調べたことがあった。
高辻にダイヤの保険金の5000万円が支払われることになっていたが、高辻は吉見に差額の3000万円の請求を命じた。
2人のヤクザは源三を監禁し、財布の居場所を尋ねた。
源三はヤクザから逃走しようとしたため、2人から痛めつけられた。
矢部の証言により、スリが源三であることが判明した。
源三の自白により、ヤクザは遊園地のベンチの下にあったダイヤを発見した。
ヤクザは源三を刺した。
野崎はヤクザのアジトである第一平和荘に乗り込んだが、源三は殺害されていた。
野崎は源三を殺害した2人と矢部を襲撃した2人が同一人物であると確信した。
ヤクザは矢部が宝石を持っていると勘違いし、襲撃していた。
ヤクザの背後にダイヤを知っている誰かが糸を引いていると推測され、吉見の財布の中にダイヤがあることを知っている高辻が黒幕と推理された。
高辻の目的は保険金と損害賠償であった。
高辻は数年前、同業者を脅迫したことがあり、その時に浮かんだのが2人のヤクザであること、高辻の経営している高級ナイトクラブの経営が悪化していることから、高辻への疑いが濃くなった。
話を聞いていた矢部は、吉見夫妻を助けるように懇願した。
矢部は刑事の仕事を人の救助だと思っていた。
矢部は高辻がダイヤを持っていると推測し、高辻からダイヤをすり取り、ダイヤを所持していたことを証明して逮捕させようとしていた。
矢部は結果が無駄になり、窃盗で逮捕されることを覚悟していた。
藤堂たちは高辻にダイヤを持ち歩かせるために、高辻に家宅捜索を行うと偽の情報を流した。
藤堂たちはタクシーに乗った高辻を追跡した。
高辻は東京駅でタクシーを降り、矢部は高辻を尾行した。
矢部は改札に入る直前、高辻からアタッシュケースを奪い取った。
藤堂たちは矢部を逮捕した後、高辻のアタッシュケースの中身を確認し、高辻も逮捕した。
午後2時30分になり、石塚と柴田と矢部は職安に直行した。
しかし、午後3時になってしまい、間に合わなかった。
石塚と柴田は職員(加藤茂雄さん)に失業保険の続行を頼んだが、取り合ってはくれなかった。
石塚は規則で縛る職員に対し怒った。
署長は矢部の行動を放免とした。
藤堂は一係室に洋子を呼んでいた。
メモ
*全体的にほのぼのとした雰囲気が漂う作品。
*「刑事の偽物」というネタは「癖」でも使われている。(そちらもコメディ色が強い)また、正義感から警察を騙って慈善活動を行うのは「ドックの敵は白バイ?」を思わせる。
*何をやってもダメだったが、慈善活動に関して積極的な部分と、「刑事は人を助ける職業」という信念を持つ矢部がとても良い。
*ゴリさんとジーパンと矢部に車を取られるボス。サングラスのフレームを舐める癖(?)が出ている。
*職安の職員に対し、捜査に付き合っていたために遅れてしまったので続行してくれというも、「規則」と返されるジーパン。折しもテスト出演の「愛するものの叫び」を思わせる。
*なぜか予告編には、本編にない鶏の鳴き声が挿入されている。
*今作は中野氏の「太陽」最終作。
キャスト、スタッフ(敬称略)
藤堂俊介:石原裕次郎
柴田純:松田優作
島公之:小野寺昭
野崎太郎:下川辰平
永井久美:青木英美
矢部進:伊東四朗
高辻誠一郎:渥美国泰、源三:江幡高志、洋子:黒沢のり子
吉見夫人:本山可久子、吉見:飯沼慧、高辻の手下のヤクザ:畠山麦、高辻の手下のヤクザ:仙波和之、老婆:本間文子
市川ひろし、渡部市松、田沢祐子、野村光絵、安田隆、星野富士雄
ノンクレジット 職業安定所職員:加藤茂雄
石塚誠:竜雷太
山村精一:露口茂
脚本:小川英、中野顕彰
監督:児玉進