第88話「息子よ、お前は……」

放映日:1974/3/22

 

 

ストーリー

午後9時頃、堀川町の2丁目の要通りで男が轢き逃げされる事件が発生した。

男の腕時計は9時15分で止まっていた。

男は身分証明書の類いを持っておらず、氏名や住所や職業はいずれも不明で、推定年齢30代としか分からなかった。

要通りは前後150mに及ぶ直線道路で見通しが極めてよく、運転者が歩行者に気づかないはずが無かった。

現場に急ブレーキによるタイヤ痕が無かったため、歩行者の飛び出し、運転者のわき見、酔っぱらい運転の3つが考えられた。

腕時計から車の塗料が検出され、梅田ペイント社製のWタイプのアイボリーホワイトと判明した。

藤堂は捜査員に車の割り出しを命じたが、突然一係室に西山署長(平田昭彦さん)が入ってきた。

西山は轢き逃げが凶悪犯罪だとして、不審者がいたら即刻逮捕するように釘を刺した。

藤堂は車が右フロントのヘンダーかボンネットに傷がついていると推測し、修理に出される前に探し出すことを命じた。

柴田は該当箇所が破損している自動車を見つけ、修理工の池谷(矢野間啓二さん)に聞いた。

池谷は車が昨日の夜10時頃から預かっていること、西山幸雄(19歳)という馴染みの客の私物であることを述べた。

柴田と池谷は喫茶店で幸雄(福沢良さん)を発見し、池谷は仕事のために別れた。

幸雄は東南大学法学部の学生であった。

藤堂は幸雄の名前を聞いた途端に動揺し、西山に幸雄の車の所在を尋ねた。

西山は幸雄が連行されると聞いた途端に激昂した。

幸雄を連行した柴田は久美から事情を聞かされた。

幸雄は西山署長の息子であった。

幸雄は待合室にて、自分が轢き逃げをしたと告白した。

藤堂は幸雄を取調室に連れて行った。

西山署長は幸雄が轢き逃げをするような人物でないと考え、示談での解決を望んでいた。

藤堂は西山署長の名誉と幸雄の将来を考え、事実だけを尊重することにした。

取調室にて、山村と柴田による幸雄の取調べが始まった。

山村は幸雄に不遜な態度をとっても不利なままであると告げたが、幸雄は自分が未成年であることを主張し、完全な黙秘を決め込んでいた。

山村は幸雄が殺人と傷害では罪の大きさに相当な違いがあることを認識しているにも関わらず、重傷の被害者の容態を気にしていないことが気になった。

被害者はまだ面会謝絶の状態だったが、西山は病院に赴き、被害者と対面した。

島は西山の自宅を訪れ、西山夫人(南風洋子さん)に幸雄のことを話していた。

西山は夫人に電話をし、心配をするなと言った。

西山夫人は、幸雄が昨日大学の講義が休講になり、1日中家にいた後、夕食を済ませた午後7時頃に車で出かけたことを記憶していた。

石塚と柴田は池谷から幸雄の証言をもう1度確認しようとしていたが、池谷は柴田と一緒に幸雄を捜索した後から工場に戻っていなかった。

石塚と柴田は池谷の部屋を捜査した。

池谷は元オートバイのレーサーであることが判明した。

池谷の部屋のゴミ箱から、バー「桂」のマッチが発見され、馴染みの女性がいる可能性が出てきた。

山村はもう1度幸雄を取調べ、なぜ被害者の生死を全然気にしていないのかと聞いた。

山村は被害者の容態を言っても動じない幸雄を見て、長年の勘から平然としている幸雄が嘘を持っていると推理した。

幸雄は自分のタオルで汗を拭いた際に、床に落ちた映画の半券を靴で隠した。

山村はその半券に気づいた。

石塚と柴田は池谷の愛人の部屋に突入し、池谷を発見した。

池谷は窓から飛び降り、オートバイに乗って逃走し、石塚と柴田は覆面車で池谷を追跡したが、歩道橋に入られて逃げられてしまった。

幸雄は昨日の午後7時に家を出て、午後11時に車で帰宅していた。

映画の最終回は午後7時30分から午後10時10分までだったため、池谷が映画を見ていた可能性があった。

署長室に多数の新聞記者が来訪し、幸雄の事件を聞き出そうとしていた。

西山は正直に事件のことを自白し、息子だからといって特別扱いせず、署員に取調べを行わせることを宣言した。

藤堂は記者(1人は鹿島信哉さん)に対し、事件を新聞に書かないことを要請し、幸雄の罪が確定していないために、署長の息子だからといって興味本位で扱うのは汚いこと、勝手に記事を書いた新聞社には一切協力しないことを断言した。

藤堂は逃走の恐れが無い幸雄の身柄を西山署長に預け、取調べを明朝9時から再開することを告げた。

山村は被害者の意識が回復したために病院に、他の署員は池谷を捜索に行っていた。

しかし、山村は被害者が意識を取り戻し、記憶喪失でもないのに自分の名前を言わないことが気になった。

被害者は何も話そうとしなかった。

幸雄は西山が自己保身しか気にしていないと怒り、自室に戻った。

西山は辞職を考えていた。山村はずっと病室で張り付いていた。

被害者は遂に山村に観念し、自分が覚醒剤の売人であり、最近儲けの多い取引相手に乗り換えたために、殺されそうになったと自白した。

被害者は池谷を知らなかった。

池谷の愛人により、池谷が覚醒剤常用者であることが判明した。

新聞に、「警察署長の息子が轢き逃げ、幹部が秘密工作」という記事が一面に載ってしまった。

新聞には犯人が幸雄であるように書かれていた。

藤堂は池谷が幸雄の口封じを図ると推測し、署員に西山宅の張り込みを命じた。

池谷は幸雄に電話をかけ、車に乗せると呼び出した。

西山は外出した幸雄を尾行したが、幸雄に見つかってしまった。

幸雄は池谷が運転する外車に乗った。

捜査員は池谷を追尾し、河川敷に追い詰めた。

池谷は幸雄を人質にとって逃走し、発砲してきた。

藤堂は轢き逃げを池谷が行った殺人未遂だと見抜いていた。

西山は池谷に飛びかかり、山村と柴田が池谷を逮捕した。

幸雄は自分が轢き逃げ犯人と知った西山がどのような態度をとるか、西山がどういう人物なのかを確かめたかった。

西山は自分が完璧な人間ではなく、何とでも言っていいと言った。

しかし、西山は自分が幸雄の父親であるとともに警察署長でもあるため、幸雄の行動を黙って許さないと言った後、幸雄を殴った。

西山は本庁の人事部長(幸田宗丸さん)に対し、辞表を提出した。

しかし、今朝の毎教新聞には「署長の活躍で解決し、幸雄の無実を証明した」という記事が掲載されていたため、人事部長は辞表の提出の不要を宣言した。

記事の掲載には藤堂が絡んでいた。

西山は一係室を訪れ、検挙件数を他署に抜かれるなと注意した。

 

メモ

*唯一の西山署長主演作。

*久美が台詞を噛んでいる。

*山さんが自分の経験から罪を犯した者の態度や感情がどんなものかを語るのが、色々あって面白い。

*幸雄と池谷の繋がりは不明。

*後半のカーアクションシーンが異様に長い。

*西山署長が外出するのは非常に珍しい。

*なぜか最後の、池谷を逮捕するシーンに殿下がいない。

*最後、西山署長の辞職を回避させたボス。「七曲署・1983」以降、西山署長は登場しなくなるが、どのような経緯で辞職したのかは不明。

*この後、「西山ユキオ」と言う名前の人物が、度々悪役で登場。

*OPに初めて「セキトラ・カーアクション」の名前が掲載された。

 

 


キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

柴田純:松田優作

島公之:小野寺昭

野崎太郎:下川辰平

 

 

永井久美:青木英美

西山署長:平田昭彦

西山夫人:南風洋子

宮崎和命、池谷:矢野間啓二、西山幸雄:福沢良(現:福沢良一)

佐々木睦雄、大和田由紀、林寛一、金子富士雄、記者:鹿島信哉、石川隆昭

ノンクレジット 本庁人事部長:幸田宗丸

 

 

石塚誠:竜雷太

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、田波靖男、四十物光男

監督:竹林進