第32話「ボスを殺しに来た女」

放映日:1973/2/23

 

 

ストーリー

七曲署の一係室内では、早見がトランプを使った手品を披露していた。

慶子(小林夕岐子さん)という若い女性が一係室を訪れ、藤堂と二人きりで面会したいと伝えた。

藤堂は慶子を面会室に案内した。

慶子は机の下で拳銃を撃とうとしたが、弾が入っていなかった。

慶子は2階の非常口から逃走しようとしたが、何もなく地面に転落し重傷を負った。

藤堂は面会の直前に何者かが弾を抜いたと推測した。

本庁警部の石田正信(佐藤慶さん)が一係室を訪れ、なぜ本庁に連絡しないのかと怒り、慶子の入院している病院に案内するよう言った。

石田は早見から慶子が意識不明であることを聞き、藤堂に意識が回復したら真っ先に知らせるように述べた。

石田は長髪の早見に文句を言った後に去った。

一係室に女の安否を尋ねる電話が入り、藤堂が返答したが切れてしまった。

鑑識課員(北川陽一郎さん)によると、慶子が持っていた拳銃は東南アジアの密造拳銃であり、同型のものが青竜会の手入れで摘発されていた。

山村と石塚は、レストランで食事をしていた青竜会幹部の西山(高橋明さん)に慶子の写真を見せたが、同僚の幹部は知らなかった。

山村は西山に協力を要請したところ、西山が拳銃を盗み出したチンピラを連れて出頭した。

チンピラは慶子が拳銃をどうしても欲しいと言ったため、100万円で拳銃を売っていた。

慶子はクラブ「不夜城」のホステスであった。

慶子の自宅を捜索したところ、整理整頓されており、「明夫のもとに行く」という遺書が発見された。

一係室に再び慶子の安否を尋ねる電話が入った。

電話の男は明夫ではなかったが、明夫のことを知っていた。

早見が病院を訪れたところ、石田が慶子を尋問しようとして、医師と看護婦と対立していた。

石田は警察の威信に関わることとして、強引に慶子の病室で待機した。

佐野刑事(柿木恵至さん)がマイクを用意したが、慶子はうわごとを言うばかりであった。

島の調査により、明夫の本名は坂口明夫であることが判明した。

坂口は1年前(1972年頃)に城東銀行の強盗をしていたが、逃走中に電車に撥ねられ死亡していた。

事件の捜査主任は、当時捜査一係長であった石田であった。

早見は窓を開けた際に狙撃者のライフルに気付き、一同を伏せさせた。

銃弾はリンゲルに命中した。

早見は狙撃者を工事現場まで追跡した。

早見はスコップを自分の上着に丸めて、盾にしてライフルのところまで行ったが、狙撃者は去っていた。

石田は早見を叱咤した。

ライフルは帝都銃砲店から盗まれたもので、指紋が検出されなかった。

ライフルの的は慶子ではない可能性が出てきた。

島と早見はキャバレーを調査し、藤堂は喫茶店で石田警部と話をした。

石田は2回坂口を取り調べたことがあった。

坂口は2年前(1971年頃)に別の強盗事件の有力な容疑者であったが、証拠が無く釈放されていた。

藤堂は、慶子殺害の標的が、元捜査一係長であった石田ではないかと推測した。

島はホステスに慶子に付きまとう男性のことを尋ねた。

慶子はおとなしいので人気があった。

ホステスは、呼び込みの寺本(井上博一さん)という男が慶子に片思いしていたことを思い出した。

寺本は以前、雨の中で慶子のハイヒールの踵を直したことがあった。

石塚は寺本に電話をしたが、寺本に無言で受話器を置かれた。

石田は藤堂と早見が慶子の病室に駆けつけた直後、尋問を開始した。

慶子は七曲署の捜査第一係長を狙ったこと、坂口が何もしていないのに逮捕させられて付きまとわれたことで職場を辞めさせられ、とうとう銀行強盗をしてしまったと述べた。

慶子は、坂口が取調べ中に石田警部に酷いことを言われて顔に唾をつけたところ、「立ち直れないようにしてやる」と殴られていたとも述べた。

石田は慶子を罵倒した。

病院の宿直室にて、三度男から慶子の容態を尋ねる電話が入った。

寺本がアパートの近くの公衆電話で1時22分に電話し、1分後に電話を切ったことが判明した。

慶子の安否を尋ねた電話の男が寺本と断定された。

石田は佐野と藤堂に、「会いに来て」と慶子のの声の編集をして寺本を出向かせることを提案した。

山村により、寺本の正体が判明した。

寺本は本名を貝塚まさしといい、島根県出身で、元ライフルの選手であった。

寺本が慶子に片思いをしていたこと、寺本と坂口には関係が無いことが判明した。

看護婦から、慶子がリンゲルを外して自殺したという通告が入った。

藤堂と石田たちは貝塚を電話で呼び出し、「会いに来て」の声を伝えた。

早見は卑怯だと抗議した。

貝塚は手にナイフを隠して職場を出た。

石塚と島は貝塚を尾行していた。

早見は石田に対し、貝塚に慶子の顔を見せてくれと言った。

貝塚が病室を訪ねたが、慶子の遺体を確認した直後、現れた藤堂たちに逮捕した。

貝塚は慶子に復讐を止めるよう説得したが、忘れられなかった慶子が拳銃を入手したのをを知り、隠していた。

貝塚は慶子に拳銃を発見され、弾を抜くことで殺人者にさせたくなかった。

貝塚は一係長が代わっていたことを知っていたが、慶子には教えず、慶子を逮捕させて、慶子にもっと幸せな人生を送ることを願っていた。

貝塚は護送中にナイフを出して石田を刺そうとしたが、早見が発砲し射殺してしまった。

早見は石田を殴り、「貝塚に石田を殺してやりたかった」と述べた。

 


 

メモ

*長さんが欠場。

*鎌田氏の「太陽」初執筆作品。鎌田氏は「捜査一係・チームの活躍」がテーマの作品や、物騒な作品を手掛けることが多い。また、「犯人を射殺する結末の作品」も多い。

*ドアを開けても何もない非常口。施錠していないから絶対に事故が起きるぞ。

*「髪を切れ」、「長髪」が印象に残る石田警部。

*病室で喫煙する石田警部。重病人の前でやるなよ。

*上着とスコップで盾にするマカロニ。なかなか機転が利く人である。

*マカロニの滑舌が悪すぎ。

*藤堂が着任するまで、石田警部が一係長(ボス)だったことが判明。

*ホステスに「アーン」してもらう殿下。

*貝塚は慶子を誰よりも愛していたようで、慶子のためを思い色々な策を投じていたようだ。井上氏の名演が光る。

*「そして、愛は終った」に次ぎ2度目の射殺をしてしまったマカロニ。(「殺し屋の詩」の刺殺も含めれば3度目)

*井上氏は後年「孤独のゲーム」でも刑事に射殺されている。(2回刑事に射殺されたのは井上氏と氏家修氏くらい。)

*「奴に殺せてやりたかった」マカロニの権威を気にしない主義がよく出ている。

*石田の名前「正信」は劇中未呼称。ソースは台本。

*本作は後に「刑事貴族」の「宮本課長の災難」としてリメイクされている。

 


 

キャスト・スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

早見淳:萩原健一

内田伸子:関根恵子(現:高橋惠子)

島公之:小野寺昭

 

 

石田正信:佐藤慶

慶子:小林夕岐子、貝塚まさし(寺本):井上博一、西山:高橋明

鹿島信哉、中川昌也、長浜哲平、宮田弘子、川口節子、美山ゆみ

菅原慎予、樋口雅子、香川リサ、中央病院医師:今井和雄、森康子、佐野刑事:柿木恵至、鑑識課員:北川陽一郎、小海とよ子

 

 

石塚誠:竜雷太

山村精一:露口茂

 

 

脚本:鎌田敏夫

監督:澤田幸弘