「シビックテック ICTを使って地域課題を自分たちで解決する」稲継裕昭ほか 著 勁草書房  | 地方創生のよもやま

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シビックテックとは、「市民主体で自らの望む社会を創りあげるための活動とそのためのテクノロジーのこと」

 

 

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前半は事例を交えつついろんな取組手法を紹介。

 

後半は、第4章で先日紹介したおっはークラブ講師の藤井さんも「シビックテックのエコシステム」の一章を担当

https://ameblo.jp/chiso-concier/entry-12632669285.html

 

「何もしない人」を許容するという環境に協働の真髄がある。シビックテック活動をしている集団の特徴は、軍隊のように作戦遂行をするための集団ではなく、「協働」状態を維持している集団である

 

「何もしない」を許容するということは、自分も含め、疲れたら休めるということである。また、力が及ばなかったり、忙しくて何もできない人でも適宜、協働に参加できるということである。(P99)

との言及が興味深い。

 

また、「お味噌汁理論」として

冷めた表面と温かい底の方の温度差で対流が生まれ、味噌汁の模様が生まれる様をヒントに、失敗する取組は、この自然の法則を無視してまず構造から作り、後で対流を生み出そうとして失敗していると指摘。

 

地域住民の声に耳を傾け、多様な人々の温度差に気づき、プロジェクトを通して人同士が信頼関係で結ばれ、対流を起こす。その温度差や対流の中で、構造を作り出そうとするのがシビックテック活動(P103)

と自然の法則に沿った方法が、好循環で協働を維持するコツとのこと

 

 

最終章は、編者が市民と行政の関係のあり方について海外の研究に言及しつつ論じ、最後に

 

いま、市民が実際に力を手にし、しかもゲーム感覚で楽しみながら行政の問題に参加し、コミュニティの改善に貢献できるようになっている(P125)

 

と、ICT技術の発達によって行政を市民が担うことができるようになったことによる可能性に期待を寄せている。

 

 

地方創生の分野で注目されている地域の多くは、ICT技術もうまく活用しつつ、市民や地域に関わる人の協働がうまく機能している地域だと感じます。

 

関係者による対話が起こり、そこから信頼関係や協働が生まれ、新たな取り組みにつながる。

そんな動きを起こしていくにはどうすればいいのだろうか。国政レベルでは新たな知恵が思いつかないのがもどかしい。