髄液シャント術 | 扶氏医戒之略 chirurgo mizutani

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身近で関心は高いのに複雑・難解と思われがちな日本の医療、ここでは、医療制度・外科的治療などを含め、わかりやすく解説するブログです。

水頭症とは
水頭症は脳脊髄液がスムーズに血管へと流れなくなり、脳室の中に多量に留まって起こる疾病である。
脳脊髄液は脳の中心にある脳室でつくられる無色透明な液体。常に脳や脊髄周囲を循環し、頭蓋内には新しい脳脊髄液があり、脳はそこに浮かぶようにして守られている。
脳脊髄液は脳室から狭い道を通り、脳の表面に流れ出て、血液に吸収される。このようにして脳脊髄液は1日に2,3回入れ替わる。しかし、この流れが滞り、脳脊髄液が多量に溜まってしまうと、脳室が圧迫される。
圧迫された脳は働きが悪くなり、頭痛、吐き気、嘔吐、意識障害、歩行困難、認知症、失禁、視力低下、失明など様々な重い症状がみられるようになる。

水頭症の原因と治療
水頭症は、次のような様々な疾病の合併症で起こるケースが多い。
【脳血管障害】クモ膜下出血、脳出血などの脳血管障害に伴う場合。脳室でつくられた脳脊髄液は、クモ膜顆粒で吸収されるが、クモ膜下出血で吸収機能に障害が起こると水頭症を引き起こす。慢性的に起こる水頭症は、正常圧水頭症と呼ばれる。徐々に進行していく中で認知症に似た高次機能障害が起こる場合がある。
【脳腫瘍】腫瘍が脳を圧迫するため、巡回経路の細い部分が閉塞して、脳脊髄液の循環が妨げられ水頭症になる。
【細菌性髄膜炎】クモ膜が細菌に感染して、脳脊髄液の循環機能に障害が起きて水頭症を発症する。
【先天性の脳奇形】延髄や小脳の一部が脊柱管内に落ち込んでいるキアリ奇形、脊椎骨が形成不全な二分脊椎症などで水頭症がみられる。脳脊髄液の流れの経路が塞がれたり狭っている場合が多い。
【その他】頭部外傷を受けた人、早産児、低出生体重児などで、脳脊髄液の循環機能に障害を受けた場合に見られる。水頭症の治療には、シャント術といわれる手術が行われる。循環が滞ってしまった脳脊髄液の流れをスムーズにするために、シャントチューブというシリコン製のチューブを通してバイパスをつくる。バイパスの経路には、脳室から、腹腔へ脳脊髄液を流す「脳室-腹腔シャント(V-Pシャント)」、脳室から、心臓のそばの太い静脈へ流す「脳室-心房シャント(V-Aシャント)」、腰椎から腹腔へ流す「腰椎-腹腔シャント(L-Pシャント)」がある。圧調整や髄液が脳室内に逆流するのを防止するバルブを頭皮下につける。

※乳幼児期に発症した水頭症は適切な治療を受ければ、生存率は90%以上。また60%程が正常な知能か、学校教育を受けることが可能な回復がみられるという報告がある。
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