これは15年ぐらい前の話。

ある飲食系のお店で正社員として働いていた。

一ヶ月ぐらいは働いたと思うんだけど、どうしても馴染めなかった。

辞めたいけど辞めるって言えなかった弱い僕は、ネットカフェから便利屋に電話して、会社に退職の意思を伝えてもらったことがある。

これは自分の人生において恥ずべきことだと思っているけど、最近話題の退職代行を先立って思い付いていたとも言える。


退職代行サービスを利用する人が弱いとも限らない。

会社が強すぎて、辞められない、辞めさせてもらえない、そうやって困っている人の助け船でもある。

自分の場合は、ただ弱さからくる思い付きだったけど。


あの時、自分と同じ気持ちの人がいることに気付いてビジネスにできていれば、と後悔の気持ちもなきにしもあらず。

だけど、まさか辞意を伝えるのを他人に任せないといけないような人間が他にもいるなんて思わなかったし、ビジネスを立ち上げるという概念もなかった。

でも本当に、それは自分の人生における汚点の一つだと思うと同時に、自分らしさでもあり、成長を感じる過去の出来事の一つでもある。

今なら、代金を支払って面倒なことをするぐらいなら自分で伝えた方が手っ取り早くて楽だって思うけど、あの頃の自分を思うと決して否定できない。

ビジネスのアイデアはどこにでも転がっているというけれど、創造力が貧困な僕が思い付くことはまずない。

過去を見返した時、唯一、時代を先取りしていたものを思い出した。