21時前、モールの地下を地下鉄乗り場に向かって歩いていたら、ケーキ屋があった。

誰もが足早で、ケーキ屋には見向きもしない。

ショーケースの中には、ホールケーキからショートケーキまで様々なケーキがたくさん並んでいる。

このケーキはきっと、もうすぐ閉店したら廃棄処分されるんだろうな、と思った。

もしかすると、店員さんは持って帰れるのかも知れない。

そう思って、ふと店員さんを探した。


年の頃は30歳前後。

背は高め、黒髪で大人しそうな女性。

ショーケースから少し離れたところに立って、

首を少し傾けながら、なんとなくおぼろげな視線。


心の中で、

「なんでみんなケーキ買わへんねや。」

って思っている顔をしていた。