3週目が始まった頃。
個室から大部屋に移動になった。
元々、何か個室になる理由があって個室にいたわけではなかった。
大部屋が空いていなかったから、運良く個室に配置されただけらしい。
だけど、私にとって個室はやっぱりありがたかった。
仕事の引き継ぎの打ち合わせもできたし、
広いスペースで娘の髪の毛も切れた。
何より2人でゆったりと過ごせたのだ。
音を気にせず、ビデオ通話をして、娘と歌を歌ったり、モノマネをしたりした。
(私はミニーちゃんのポジティブな発言が好きなので、声と発言だけミニーちゃんになってみせるのだ。ちなみに娘は喜んでいない。私のためだけにやっている。)
大部屋ではこんなに自由には過ごせないだろう。
だから久しぶりの大部屋への移動は少し憂鬱になり、そして緊張した。
この部屋は、まなちゃんと、えりちゃんがいるお部屋だ。
移動の途中から、まなちゃんは飛び跳ねながら歓迎してくれた。
お部屋に娘が来るのを喜んでくれているらしい。
まなちゃんとえりちゃんのお部屋は雰囲気がよく、2人で一緒のお部屋(伝われ)という感じだった。
カーテンも全開で、しょっちゅう会話をしている。
「娘ちゃんのところも嫌じゃなければさ、カーテン開けていいからね。そこ暗いからさ。」
とまなちゃんのママが言ってくれた。
そうなのだ。娘のスペースは窓の光が入らない。
カーテンを閉めれば部屋の電気が入りにくい。
とても暗いのだ。
遠慮なく、カーテンを半分(といっても控えめ)開けさせてもらう。
大部屋だと、普段の親子の会話もよく聞こえる。
正直、LINEの通話だって聞こえる。
こちらのも聞こえているだろう。
だけどお互い様なのでいいのだ。
そのお互いに気遣い無しの関係は、思っていたよりストレスにはならなかった。
むしろなんとなく安心した感じがあった。
1人で、傍若無人モードの娘に向き合うのはつらいときがあったのだ。
なにしろ謎の要求が多いのだ。
高く高くだっこしろ、肩車より高く。とか
絶対に足を何にもつけたくない。足がベッドにも椅子にも触れぬようオムツを交換せよ。無論ベッドに寝かすことも許さない。とかである。
これを大泣きで暴れながらやられるのだ。
心を無にしようと努めても、やっぱり疲れる。
だけど大部屋であれば、
迷惑はかかるが、他のママが笑ってくれたり、
娘に声をかけてくれたりする。
またどこの親子も同じような会話をしている。
謎の要求に振り回されるママ達。
薬を飲ませようと必死なママ達。
私1人じゃないと思うと、肩の力が抜けた気がしたのだ。