ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第6番」第三楽章#5 | 心と体をラクにするピアノ奏法

心と体をラクにするピアノ奏法

ピアニストでピアノ講師の荒井千裕が
ピアノの奏法、呼吸法、身体の使い方をお届けします。


大変でした。
この一週間の練習は。

すっかり弾きこなしているつもりになっていて、楽譜に記載されていることは全て頭に、体に、指先に浸透しきっているつもりでいましたから。

それを全てリセットして、譜読みをし直す、ベートーヴェンが指示したことをきっちり演奏に反映させるという過程が。

脳は、今まで積み重ねてきたものをリセットする事を拒みます。

指先は、正しく読みなおしたことを反映させるのには、辛いリハビリを要しました。

体は覚えこんでしまった動き(スフォルツァンドの時の体の使い方や呼吸の仕方)をリセットしきれずに、回路が狂ってしまったロボットみたいでした。





まず、ペンネの演奏は、重い。

    あちゃー。今日は「良くなった」の一言を頂けませんでした。どんだけ重いんだ。
    重いのは体だけにして欲しい(独り言)。。。


なんで重いのか、わかる?


    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それはさ、ペンネは4ビートで弾いてるからだよ。

    はっ!!!!!

2ビートを意識して弾いてご覧よ。


ほら、それだけで変わる。大分軽くなる。

それから気をつけることは。。。

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リピーテッド・ノート。
アンタはここで速くなる。

「ど|ふぁっふぁっふぁっどっ」の三つ目の<ファ>は指を替えるというイメージを持って弾く。
実際には替えないけれども。
そして、鍵盤の底までタッチしないこと。
指先のほんの一点だけで鍵盤をなぞるだけ。
それだけでも音は出る。その上、軽くなる。


それから2段目3小節目からの右手の「どっどっどっそっ|みっみっみっどっ」は、肘を外に出して。

   はっ・・・この前も言われたのに・・・(汗汗汗)

肘を外に出して、そして指先の鍵盤への角度は斜めに。
指先の中央の一点ではなく、端っこの一点だけが鍵盤に触れるように。



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ふぁっふぁっみれみど|ふぁっふぁっみれみど」のスフォルツァンドの音の打鍵は両手とも、肘を外に素早く出す。手首は素早く前に。

そして続く「れどしらそふぁみれ|どしどれみふぁそみ」は、レスで。
だけども、左手の三つのコードの動きを見てご覧。
三つ目(2段目1小節目)のコードは<落ちつくコード>。
しっかりそこで終わらせる。

だけど続く(2段目4・5小節目)は完璧に違うよ。
ここは、フォルテなんだから。

ベートーヴェンがフォルテと言ったら、とにかく物凄い意志を持ってのフォルテなんだから。

だから、ここに入る前に腕も呼吸しなければならないよ。
前の小節の「ふぁれふぁれみれみど」の最後の<ド>を打鍵したらふわっと腕は上へ抜けて肘と背筋を瞬時にリラックスさせる。それでリセットされる。
そして着地で「らそらそ」と降りてくる。
ここのフォルテは、全ての音がフォルテ!
だけども、腕に力を溜めてはダメだよ。
腕の力は抜ききって、指先の緊張感だけを最後の音まで失わず維持したままで弾く。
この時、上半身は鍵盤に向っていかないこと。
余計な力が抜け切っている状態では、上半身は落ちているんだよ。


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画像2段目、ここはバスの2分音符をもっと響かせて。
ここはピアノだけど、バスの2分音符だけはメゾ・フォルテの気持ちで。

それから、最初の「どっどっどっそっ」と次の「そっそっそっどっ」と、続く「そっれっれっれっ|れっれっれみれみ」は、全て同じ<手>だけれど、全てが違うことを強く意識する。

例えば、一つ目の「どっどっどっそっ」は、てのひらを見ている。
二つ目の「そっそっそっどっ」では手の甲を見ている。
そして「そっれっれっれっ|れっれっれみれみ」は腕全体を見ている。


同じ手であっても、見方が違えば味が変わる。

それをここではやること。



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ここのフォルテは、その前のフォルテとは違う意味のフォルテだよ。
アンタは「みっ|らっらっらそらし」の最初の<ラ>だけを出してるけども、そうじゃない。
8分音符は二つとも同じテンションで。
ワン・アクションで二つの8分音符を弾かないこと。
この二つの8分音符を弾くのには、二つのアクションが必要。
同じアクションを二回すること。



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「たったったかたか」のリズムでは、<たったっ>、<たかたか|たったっ>、<たかたか|たったっ>と捉える。
そうすることで、8分音符二つ目の音が正しく生きてくる上に、ダイレクションがはっきりするから。


2段目の2小節目から5小節目までの右手は大きなワン・ラインであることを伝えること。
左手は1小節遅れ。



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1段目は2小節目からの「どっどっどしどみ|ふぁーーーーー|そ」と繋がることを聴きなさい

そして1段目最後の「そっそっそふぁそし」から2段目の「どーーーーー|れ」と繋がることを聴くこと。

左手の2分音符の繋がりだけを聴いてちゃ、右手がダメダメになってるよ。



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1段目3小節目の右手、「らっどしらそらみ」の<らっ>から<どし>へは、全く違う空間であるはずなのに、ペンネは「らっどし」って一つになってる。
違う、そこで腕で息をすること。
打鍵は改める。
改めるけど、腕の力を抜いて、「らっ」打鍵直後に腕を上げることで全てがリセットされる。
そして息を吸って「どし・・・」着地で降りてくる。

同じ音型が両手交互に出てくるけど、弾き方は同じこと。



この後のところも全て同じ。
腕の使い方、呼吸の仕方、盛り上げの計算の仕方、視点の変え方、そして4ビートにならない弾き方。







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