「中島みゆき『永遠の嘘をついてくれ』に思うこと~中島みゆき作品解説21」S3566


松山千春 DATA BESE 総合TOP PAGE NF   

アーティスト別 LIVE DATA BESE 総合TOP PAGE NF 


◇更新履歴

V1.0:2016.2.20 初稿

V1.1:2019.2.27 最新エディタにて記事を作成、旧記事と差し替えおよび吉田拓郎のコメントを追記

V1.2:2024.2.01 歌詞の追加及び是正


■ 「永遠の嘘をついてくれ」(作詞・作曲:中島みゆき)編曲者:瀬尾一三

1996年10月18日発売の24枚目のオリジナルアルバム『パラダイス・カフェ』の3曲目(全11曲)

 

 

*初収録・リリース

1995年6月21日発売の吉田拓郎『Long time no see』の7曲目(全10曲)編曲:吉田拓郎

 

 

◆ミュージシャン

01. ドラムス:大久保敦夫
02. ギター(E.G):今剛
03. ギター(12 strings A.G):中村修司

04. ピアノ、キーボード&シンセベース:中西康晴

05. プログラミング:浦田恵司

06. パッキングヴォーカル:比山貴咏史、木戸恭弘、岩崎元是、和田惠子、山根麻衣、山根暁

 

◆2019.2.27 夢野旅人

2019.2.17 放送 ラジオ「吉田拓郎 ラジオでナイト」

番組開始とともに、2006年「吉田拓郎&かぐや姫 Concert in つま恋 2006」でシークレットゲストの中島みゆきと歌われた「永遠の嘘をついてくれ」が流されました。

 

----

吉田拓郎です。

えー今日は一曲目、びっくりでしたね。

ふと思いついてね、それで、あっこれをちょっと、なんか一曲目だとどうなんだと思って。

それであの2006年のね、つま恋での中島みゆきとのふたりでの歌でしたが。

 

ま、僕も色んな・・・古くはね、亡くなった浅川マキとかいう人がいてね。

~夜が明けたら~とか歌ってた黒装束のね、不気味なお姉さんがいましたけどね、結構、俺可愛がられたんですけどね、だけどあのジョイントやったりてとかですね、あと、記憶にあるのは、最近だったらね、「クリスマスの約束」で小田と一緒に歌ったりだとか。

そういうステージ、一緒にやった人とか色々ありますけども、

 

やっぱり中島みゆきと一緒に歌ったこのステージはですね、やっぱ僕は歴史に、自分のね、歴史に残る名ステージだったというか、お互いに、ま、色々ね、あがっている部分とかね、動揺している部分たかあるけども、ふたりともね。

だけどいいステージだったなと思っているんですけど。

自分の、色々歴史の中でも、このステージはよかったな、というふうに思っているんですけど。

 

ま、永遠の嘘をついてくれというわけですが、永遠の嘘はありえないことで・・・

 

とコメントして、二年間続けてきた番組が今年3月いっぱいで終了することが告げられました。

 

◆2016.2.20 夢野旅人

大傑作の域に達した中島みゆきの作品であり、吉田拓郎への痛烈な恋文ともいえる「永遠の嘘をついてくれ」。

 

1994年8月16日。

日本武道館で行われたチャリティーコンサート 「日本をすくえ '94」。

吉田拓郎が弾き語りで、中島みゆきの「ファイト!」を歌ったとき。

何の違和感もなく、まるで彼のオリジナルのようだった。

 

逆に2007年のツアーで、中島みゆきが拓郎の「唇をかみしめて」を歌っときも同様に彼女のオリジナルのようにきこえた。

 

そのことが、中島みゆきが吉田拓郎から多大な影響を受けていたことを如実に物語っているようだった。

 

冒頭で、大傑作の域に達した中島みゆきの作品であり吉田拓郎への痛烈な恋文と書いた理由は、これまでに吉田拓郎を、そして彼や時代に夢を抱いた人たちの葛藤を作品で云い得た歌はないからだ。

 

拓郎は1946年4月5日生まれの69歳。

みゆきは1952年2月23日生まれの63歳。

学年で5期開きがある。


岡林信康から吉田拓郎へ世代交代を印象づけるイベントとなった1971年の「第3回全日本フォークジャンボリー」。 

 

当時、彼女は札幌藤女子大学の2年生、19歳。

松山千春同様、洋楽に影響を受けたフォーク第一世代と違い国内のアーティストに影響を受ける。千春が岡林信康、加川良だったのに対し彼女は吉田拓郎だったのだろう。

 

拓郎は日本の音楽業界において多くの新境地を切り開き功績を残してきたが、それらと引きかえに自分自身や過去のメッセージをも否定してきた。

そのことで、彼と一緒に夢を見た人たちの葛藤が生まれるのも当然。

拓郎が拓郎自身を否定することはそんな彼らをも否定することになる。

 

~永遠の嘘をついてくれ 一度は夢を見せてくれた君じゃないか~

 

そう言いたくもなるだろう。

 

最後のイベント、最後の全国ツアー。

なにかと区切りをつけたがる拓郎。

 

冒頭でふれた1994年、日本武道館での 「日本をすくえ '94」。

吉田拓郎が弾き語りで、中島みゆきの「ファイト!」を唄いだしたころ。

 

曲が書けなくなり引退を考えていたという。

自分には、もう「ファイト!」のような曲はかけない。最後の作品として中島みゆきに曲の提供を依頼したと言われている。

 

そのオファーに「最後の曲とならないのなら」という条件付きで応えたのが拓郎への挑戦状、辛辣な恋文ともいえる、この「永遠の嘘をついてくれ」である。

 

70年代の拓郎作品を彷彿させる字余り的な歌詞に曲の展開に加え、

~ニューヨークは粉雪の中らしい
成田からの便はまだまにあうだろうか
片っぱしから友達に借りまくれば

けっして行けない場所でもないだろうニューヨークぐらい~


~この国を見限ってやるのは俺のほうだと

追われながらほざいた友からの手紙には
上海の裏町で病んでいると~


ニューヨーク、上海、成田。

 

これらは拓郎が「人間なんて」で絶唱していたころの70年安保を象徴する地名である。

日米安全保障条約に反対して、共産主義を唱えた世代。

アメリカの象徴がニューヨークであり、中国の象徴が上海、そして成田建設反対運動。

 

だが今では何事もなかったように、人々は成田からニューヨークへ向かっている。

そんな時代背景と時間の時代の移り変わりも織り交ぜながら、

 

~君よ永遠の嘘をついてくれ いつまでもたねあかしをしないでくれ
永遠の嘘をついてくれ なにもかも愛ゆえのことだったと言ってくれ~

 

と、それでも中島みゆきは、

吉田拓郎に、心変わりしようが永遠に嘘をついてでも、幕を降ろすな、歌い続けろと迫る。

 

正直、この歌詞を咀嚼するには安保の時代をリアルタイムで見ていない自分には難解な箇所もある。

 

だが、

人は、過去、現在の自分をも否定されてしまう真実など誰も求めていない。

たとえ嘘でも未来永劫の夢を求める。

だから誰かに永遠の嘘を求め続ける。

 

と、作り手からとしては誤読となるのかもしれないが、

そう感じるだけの含みが感じられる。

それだけでも傑作である。

 

中島みゆきの初演は1997年。

その後は、伝説となったといっても過言でない2006年「吉田拓郎&かぐや姫 Concert in つま恋 2006」でのサプライズゲストとしての共演である。

あの日、バックステージには松山千春と小田和正もいた。

邪ではあったが、かぐや姫のステージのとき。

密かに千春の登場を期待していた。

 

しかし、彼女の登場は予想だにしていなかった。

拓郎が、サビのフレーズを弾き語りで歌いバンド演奏が始まって数十秒後。

センターに向かう人影に、どよめきと歓声が起こった。

 

彼女のワンマンライブで、歓声をあげることはご法度のようなもの。あれほどの歓声を体感したのは、彼女自身初めてだったと思う。

 

スクリーンで、紛れもなく中島みゆき本人だと確認できたとき。身体に電気が走るような感動でした。

歌わずして永遠の感動。

 

このシーンは何度も、映像で繰り返し見てきたが、

未だに感動が消えうせない最高のパフォーマンスであり一曲です。

 

 

◆歌詞

ニューヨークは粉雪の中らしい 

成田からの便はまだまにあうだろうか 

片っぱしから友達に借りまくれば 

けっして行けない場所でもないだろう

ニューヨークぐらい 

 

なのに永遠の嘘を聞きたくて 

今日もまだこの街で酔っている 

永遠の嘘を聞きたくて 

今はまだ二人とも旅の途中だと 

 

君よ永遠の嘘をついてくれ 

いつまでもたねあかしをしないでくれ 

永遠の嘘をついてくれ 

なにもかも愛ゆえのことだったと言ってくれ 

 

この国を見限ってやるのは俺のほうだと 

追われながらほざいた友からの手紙には 

上海の裏街で病んでいると 

見知らぬ誰かの下手な代筆文字 

 

なのに 永遠の嘘をつきたくて 

探しには来るなと結んでいる 

永遠の嘘をつきたくて 

今はまだ僕たちは旅の途中だと 

 

君よ永遠の嘘をついてくれ 

いつまでもたねあかしをしないでくれ 

永遠の嘘をついてくれ 

一度は夢を見せてくれた君じゃないか 

 

傷ついた獣たちは最後の力で牙をむく 

放っておいてくれと最後の力で嘘をつく 

嘘をつけ永遠のさよならのかわりに 

やりきれない事実のかわりに 

 

たとえくり返し何故と尋ねても 

振り払え風のようにあざやかに 

人はみな望む答えだけを 

聞けるまで尋ね続けてしまうものだから 

 

君よ永遠の嘘をついてくれ 

いつまでもたねあかしをしないでくれ 

永遠の嘘をついてくれ 

出会わなければよかった人などないと笑ってくれ 

 

君よ永遠の嘘をついてくれ 

いつまでもたねあかしをしないでくれ 

永遠の嘘をついてくれ 

出会わなければよかった人などないと笑ってくれ

 

◆最新コンサート

・2024.1.19 東京国際フォーラム トップページ

・2024.1.19 東京国際フォーラム コンサートリポート

・2024.1.19 中島みゆきコンサート『歌会VOL.1』 東京国際フォーラム セトリ

・中島みゆき セットリスト 1985-1999

・中島みゆき セットリスト 2000-2020

 

 

 

N現在、以下の検索ランキングにエントリーしています。

よかったら、アクセスして頂けると嬉しいです。
一日一回、ライキングポイントが加算されます。
よろしくお願いいたします。
  
  にほんブログ村     
    

アーティスト・グループ(音楽) ブログランキングへ
---------------------
YUMENO BLOG ~愛のうた:愛した季節の薫り  From the 1960s to 2020s Music Diary notebook~ 夢野旅人