夫の帰りが連日遅い。
私は朝から晩まで終わらない家事育児にへとへと、
むろん夫は、世の中と戦ってへとへとである。
そんなある日の晩のこと。
私が、キッチンの手元灯だけをつけた薄暗い部屋で、
米を研いでいると、
その後ろを、すーっと洗面所に向かった夫が、私に訊く。
「あさひ、あともう寝るでしょ」
私の名前は、「あさひ」ではない。
「千春、と呼ぶならまだしも、あさひって...」
私が振り向いてつぶやき、
疲れた夫婦して、へっへっと力なく笑う。
夫の帰宅が23時半になった、ある晩のことである。