小学三年生の頃だったでしょうか、父に新しいお母さんを紹介されました。
私は人見知りをする子供でした。
恥ずかしく、姉の後ろに隠れました。
でも、少しづつ慣れ、新しいお母さんは、私をとても可愛がってくれて、ある時、私たちを銭湯に連れて行き、新しいワンピースを着せてくれました。
後で知ったのですが、自分の洋服を質に入れて、そのお金で買ってくれたものでした。
新しい母が、目の前で、あっという間にサロンエプロンを作って、それをつけて、夕飯を作ってくれました。
母の手が、魔法の手のように感じました。
ある雨に日に、大した雨ではなかったからでしょうか、母が傘を持たずにトイレに行きました。
当時は我が家のトイレは、外にありました。
私は、傘を持って、トイレの前で母を待っておりましたら、
母が出てきて「あら~、待っていくれたの。○○ちゃん、その優しい気持ちを忘れないでね」と、私を、ぎゅうっと抱きしてくれました。
少しぽっちっゃり型の母でした。
その時の感触が、いまだに、残っています。
お母さんて、こんなに柔らかくて、こんな好いにおいがするんだぁって…。
産んだ母は、抱きしめるなどしてくれたのか、に覚えていません。
でも、その母も、父の暴力でいなくなってしまいました。
嬉しくて、悲しいい、遠い思い出です。