自然利子率では高すぎる | 秋山のブログ

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teleius225氏にはいろいろ教えていただいたが、中でも経済への理解を深めた話が、自然利子率の話である。そこから成長率と利子に関して考察が進んでいった。ところが件の自然利子率に関しては若干理解不足だった面もある。ここで整理しておきたい。

そもそもヴィクセルが自然利子率を提唱したのは、物価変動の要因として市場金利と自然利子率の差を考えたからである。定義としては、投資と貯蓄が拮抗する金利、インフレもデフレもおこらない実質金利のことを言う。
物価の変動は市場金利が作り出すものではない。極論すれば商品等の価格を決める人が皆2倍にしようと思えば、すぐにでも2倍になるものだ。もちろん価格を決 める時に金利は影響するであろうし、金利は景気に影響を与えることで好景気ならインフレに、不景気ならデフレになりやすい。全く関係がないわけではない。 (期待インフレ率と、実際のインフレ率は一致しないが関係性はあるといえば分り易いか)
投資するか貯蓄するか拮抗する金利という定義にもおかしな点はある(古く提案された概念なので仕方はない。もちろん高すぎる金利は事業を抑制するが)。貯蓄したお金は銀行によって融資されるものであり、信用創造によって増幅されるものであるから、投資と 貯蓄は単純な競合の関係にはならない。事業をおこすかどうかは利率以外の要因である需要に現在は規定されている傾向が強い。

インフレに関してみれば、インフレは心理的現象 (決して貨幣的現象ではない)でもあり、経済にとって都合のよい状況は物価の変動がないことでもないので、生産が最大におこなわれて、かつ需要と供給が一 致する状況を促す利子率が、インフレもデフレもおこさない利子率に一致することはないと思われる。自然利子率の定義は、経済を過熱も失速もさせない利子率 とした方がよいかもしれない(中立利子率、均衡実質金利という言葉もある)。

teleius225氏が自然利子率の参考資料として紹介している日銀のワーキングペーパーを見れば、自然利子率は潜在成長率で代用されることが一般的なのだが、しかしながらその理論的背景や実証的根拠はあまり示されていないらしい。
長期自然利子率が潜在成長率に 等しいということは、長期で見れば生産は最大になり、かつ需要と供給が一致するという考えに基いており、現代社会ではなかなか実現困難であると思われる 。率なので需要不足などのマイナス要因が常に同程度影響すると考えればある程度一致してもおかしくはないが、潜在成長率自体が推測値に過ぎないので、長期で一致するという実証は無理だろう。
先日、成長と実質金利の関係で書いたように、成長率より金利配当が高ければ世の中のお金は足りなくなるので、経済にブレーキがかかる。一方、金利配当が低くても、需要にも生産力にも限度があるので、無限に経済が加速するわけではない。つまり金利配当は、経済に不可欠なものでありながらも、高すぎれば経済を抑制するものであり、低すぎてもとりあえずマイナス要因になりにくいだけの話であると思われる。
よって自然利子率は、それより高ければ経済を失速させるという部分に関しては正しく、低ければ加速させるという部分は誤りだろう。たださらに付け加えれば、前述の通り、潜在成長率はその社会で最大限上手くいっていて達成される成長率である。つまり、適切な利子率を考える時、自然利子率ではまだまだ高すぎるのである。こんなものを目標にしていたなら、不況は不可避だろう。

成長率金利論争でも書いたが、名目金利を参考に、ほとんど場合それ以下に金利は抑制されるべきだ。低い金利は成長を阻害しないため、結果的に後に高い金利をつけられるようにもなりうる。