北国の春の訪れは遅く、4月になっても雪がちらつく日もありました。軒下や日陰には雪が残っていて、春を待ち遠しく思いながら過ごしました。
「雪割」をご存知でしょうか。暖かくなって柔らかくなってきた雪や氷と化した雪解け水など、溶けやすくするためスコップや鶴嘴(ツルハシ)で割る作業です。
私のいた施設では春先に、宿舎の周りの雪割を行っていました。そんなときに蕗の薹を見つけると、誰かが「天ぷらにすると美味しいのよ」というのですが、施設で生活していた私には、蕗の薹の天ぷらを食べる機会がありませんでした。
5月になると、一気に春がやってきます。たんぽぽ、水仙、桜、梅などが咲き乱れます。桜は関東地方で見かけるソメイヨシノと違い、蝦夷山桜といって濃い桃色で、まとまってぼんぼりのように咲きます。桜の開花が始まると、紅葉のときとは逆さまで、山の麓から山頂に向かって、桃色に染まっていくのを見ることができます。
発寒川という川は、山桜の並木があって、そこを歩いたことがありますが、息を呑むほど綺麗でした。
命を吹き返えすように花が咲く北国の春は、心躍る景色を見ることができます。木々の新芽の優しい緑が、足元に柔らかい日影を作り、春の訪れを伝えてくれます。