本日の乗務中、駅から団体のお客様が。
スポーツのユニフォームを着て大きな荷物を持っています。
どこかで試合でもあるのでしょうか。
学生のようです。
他のお客様もいらっしゃったため、バスの車内は立っているお客様もかなりの数になっています。
こうなると運転もいつも以上に慎重になります。
ほとんどのお客様が途中で降りても、学生のお客様はまだ乗っていました。
だいぶ終点に近づいてから降りて行ったその数、およそ20名様。
おひとりずつ、運賃を支払いながら降りて行きます。
ありがとうございます。
ところが…
ん??(・ε・)
おかしい…。
運賃は、百円玉複数枚と十円玉が複数枚必要な料金。
十円玉の数は合っていますが、百円玉の数が…。
1枚はかろうじてベルトに乗っているので見えますが、他のものはベルトに乗らずに下に落ちてしまいました。
…おかしい。
確かに、運賃箱の中のベルトには突起物があるため、それに弾かれてベルトの上に乗らずにすぐに下に落ちてしまうこともあるのです。
にしては、それまで投入された百円玉と十円玉は全てベルトに乗っています。
にも関わらず、それだけがなぜか下に落ちて行きました。
それにしては、その”すぐに落ちて行った銀色の硬貨”、百円玉にしては小さかったような。
っていうか、ぶっちゃけ1円玉に見えたような。
まぁ、気のせいでしょう。
他の学生さんは皆さん、きちんとお支払い下さっていますし。
私の経験上、このような団体の学生のお客様はきちんと料金をお支払い下さるのです。
ところが、その学生。
バスから降りると、すでに降車されていた仲間のもとに近づき何かを耳打ち。
すると数人がその学生の周りに集まり、何やらごにょごにょ話していたかと思いきや…。
ひとり、またひとりとなぜか運転席の私の顔を見始めました。
もちろん、”そういう顔”をしながら。
やられた……。
先ほどの疑念は確信に。
”あの運転士、やっぱり1円玉でも気がつかなかったよ。
帰りは皆もやれよ。”
あえてセリフを付けるとすれば、それが一番ぴったりでしょう。
気が付いていないわけではありません。
証拠が提示できないから何も言えないのです。
あの1円玉がベストの上に乗ってくれていれば、すぐにベルトストップのボタンを押して学生を呼びとめたでしょう。
しかし、それができない以上、こちらとしては何も言えないのです。
何人かの学生と目が合います。
私はとぼけた顔をしました。
”何かご用ですか?”
それに、このような団体のお客様の降車には時間がかかります。
すでに運行が数分遅れていたため、見ないふりをしてすぐに出発。
終点についた後、車庫の休憩室で居合わせた先輩に事の一部始終を話すと、先輩曰く、
「それは確実にやられたな。
事務所に電話して内勤に伝えておいた方がいい。
遅番のやつらに知らせておこう。
帰りはどうなるかわからないからな。」
電話をして学生の特徴や停留所の名前を伝えておきました。
まぁ、今回のこの一件は私の考え過ぎかもしれません。
学生たちは何か違うことを話していたのかもしれません。
何と言っても証拠がないのですから。
ですが、料金支払いの不正というものは、確実に存在しています。
会社の幹部の方曰く、
「1割は不正されている」
のが路線バス業界の実情です。
路線バスとはいえ、そこはビジネスですので運賃はきちんとお支払いいただかなければ困ります。
しかし、それ以上に困るのは、このようなことをされるお客様が多くなってしまうと、降車されるお客様のお顔を見ながら挨拶ができなくなることです。
不正がないか、常に運賃箱に目を光らせなければならないというのは、”監視”しているみたいで嫌なんですよ、本当は。
そういえば、不正をしようとしたのか本当に知らなかったのか定かではありませんが、こんなお客様がいました。
両替のために運賃箱に1000円札を入れた若い男性のお客様。
出てきた小銭をわしづかみにしてそのまま降車されました。
えええええ!( ̄□ ̄;)
この時ばかりはさすがに声をかけて呼びとめました。
-- 両替しただけでは支払われませんので、改めて運賃を入れて頂けますか?
「え?いくらですか?」
とお客様。
料金を伝えると投入して下さいました。
危ない、危ない。
始発から終点まで乗ったので結構な額でした。
それはさすがに新人と言えども気が付きますよ、はい(`・ω・´)ゞ