会津田島祇園祭 会津田島祇園祭の流れ ⑤
7月23日
榊迎え
23日の早朝(午前2時30分ぐらい)の夜の明けないうち、翌年のお党屋組(「請取り」)がこの役にあたる。まず当番党本宅に集合、党本に挨拶の後、「榊」(神聖な木)を迎える意味の祓幣を受取り、神酒で景気をつけて榊保管所へ出発する。榊保管所から当番党本まで「ワッショイ、ワッショイ」の掛声で午前4時43分頃までに到着するよう榊を運び、当番党屋組の確認を受けて引き渡される。榊に使用されるのは、楢(なら)の若木で幹の直径8cmから9cm、長さ約4m程の先に青葉を茂らせておいたもの8本と、直径は同じくらいで長さ2.5m位に揃えて切った横木16本と定められている。榊迎え終了後、「請取り」は当番党本にて直会を受ける。直会後、神社に詣り、参道、境内の掃除を行う。
神輿洗い
午前6時頃、「渡し」と「請取り」の全組員が裃(かみしも)を着用して神社に集合し、拝殿より神輿を境内に出し、埃をはらい、布で拭き磨き、新しく浄めて拝殿へ戻す。なお、組員は帰宅せずに神社に詰めたまま渡御のときを待つ。
七度の使い
お党屋制度には、お党屋が祭りの中心となる意味があり、神輿出発の場所はお党屋本になる。そのため、神が常時鎮座する神社から党本へ神輿を迎える行事が大きな意味を持つ(後述「神輿前の神事」参照)。まず、その使いとして両親の揃った男子が2人選ばれ、裃着用、股立(ももだち)を取って(袴の股立を腰紐に挟んで)白扇(はくせん)を袴に差し、草鞋(わらじ)を履いて神社の宮司宅へ参る。ここで宮司に神事の使いに赴いた旨を言上し、本殿に参拝する。「七度」とは参拝の回数であるが、宮司の指示で1度ごとに手水舎で手水(ちょうず、てみず)を使いながら6度参拝し、神迎えとして「七行器」(ななほかい)行列の先頭になってきたときが7度目として数えられる。
七行器(ななほかい)
後述。
神輿遷座式
神が氏子の奉献した供物を受け取ると、神輿に遷って町内を渡御し、御旅所を廻りながら町の隅々まで悪霊疫神を祓い、氏子の安全を保障する。神の遷座する神輿は、この日の朝「神輿洗い」によって埃等を落として浄められたが、再び境内に運び出され、神輿台に載せてから、お供の党屋組と共に切麻(きりぬさ)によるお祓いを受け、拝殿へ運び入れて神官が本殿より神体を遷座する。その後、再び境内へ運び出され、神庭で待つ白丁(はくちょう)に烏帽子をかぶった16人の供奉人に担がれ、裃姿の「渡し」と「請取り」の組員に前後を警護される。
御支度触れ(おしたくぶれ)
神輿が神社前を出発するに先立って、「御支度触れ」が出る。神輿の出発を町内に触れて歩く役目であるが、格好が特徴的であるため注目されている。その格好は、波に千鳥の裂け羽織、5色の襷(たすき)がけ、内に女性の反物を着て女帯を前で結び、頭は板冠を載せて端に紙垂(しで)を垂れ、紅白の太紐で顎に結わえ、右手に軍配、素足に草鞋履きというものである。神社前、御旅所ごとに大仰な身振りで歌舞伎の六方(ろっぽう)を踏みながら「御神輿の御立ち、お支度なされましょう」と大声をあげる。
神輿渡御
午前10時頃に神社前から出発し党本・御旅所を廻る。神輿の行列は露払い2人、稚児行列約20人、猿田彦(さるたひこ)1人、猿女君(さるめのきみ)1人、御鉾2基8人、長持ち2人、挟箱(はさみばこ)2人、大拍子(だいびょうし)2人、立傘(たてがさ)3人、沓取(くつとり)2人、御神輿16人、氏子総代16人、その他従者となっている。
神輿前の神事
神輿が党本に到着すると、神輿を入口の神輿台に据え、そのまま雨が降っても必ず路上で神事を行う。お党屋組全員で神の臨御を迎える神事である。神輿台には当日朝早く「榊迎え」で迎えておいた榊を四隅に立て、横木を結わえて台を補強し、注連縄を張り廻らす。神輿の前には茣蓙(ござ)を敷き、神官一行及び党屋組、「渡し」、「請取り」の供奉人全員が着座して神事を行う。このとき党本は夫婦揃って、男は裃、女は留袖の盛装で参拝する。神事が済むと大幣、神官は御神橋の注連縄を外して渡橋し、党本本陣の家に入る。ここで党屋側と挨拶や祝いの言葉を交わし、昼食をとる。
御鉢米神事(おはちまいしんじ)
昼食が済むと党本神棚の前に当番お党屋は夫婦揃いで着座し、その左右に「渡し」と「請取り」の党本夫婦が着座し神事を行う。神棚の神酒の約半量を3個の湯筒(ゆづつ)に分け、さらに膳の上に盃を3組用意する。次に宮司は大きなひき鉢に盛って床の間に供えてあった白米を指でつまんで一同に向かって左右左と撒じ、ついでに党屋組一斉に2拝2拍手の礼をして配付された祝詞を奏上する。
神輿巡行
神輿出発が迫ると、それに先立ち、神輿渡御を迎える町内の警備、御旅所等のお使いが来る。お使いのあと、先述のように「御支度触れ」が出て巡幸となる。巡幸の道筋には6ヶ所の御旅所(神輿台に神輿休憩)と2ヶ所の力杖休御(白丁の持つ力杖(ちからづえ)を輿柄に支えて神輿小憩)がある。一巡のあと、神輿は党本へ立ち寄り、力杖で全員お椀で神酒を振舞われ、宮司は党本の家の前で挨拶をして午後4時から5時に還幸する。
奉鎮の神事
朝から神輿に付き添い警護した「渡し」と「請取り」のお党屋組は、供奉者の白丁より神輿を受け取って拝殿に上げ、再び御簾(みす)を下して神体を本殿に奉鎮する。その後、社務所にて直会となり、神酒と七行器(ななほかい)に供えた鯖の料理を食して全員で帰宅する。
大屋台運行
後述。