神大市比売(かむおおいちひめ)
神大市比売(かむおおいちひめ)は、日本神話に登場する神である。神社の祭神としては大歳御祖神(おおとしみおやのかみ)の神名で祀られることが多い。
日本神話では、『古事記』の須佐之男命(スサノオノミコト)の系図に登場する。大山祇神(オオヤマツミ)の子で、櫛名田比売(クシナダヒメ)の次に須佐之男命の妻となり、大年神(おおとしがみ)と宇迦之御魂(ウカノミタマ。稲荷神(いなりのかみ/いなりしん))を産んだ。
2柱の御子神(みこがみ)はどちらも農耕に関係のある神であり、神大市姫命もまた農耕神・食料神として信仰される。神名の「大市」は大和・伊勢・備中などにある地名に由来するものとみられるが、「神大市」を「神々しい立派な市」と解釈し、市場の守護神としても信仰される。
神大市姫命を祀る神社として、静岡浅間神社(しずおかせんげんじんじゃ)内の大歳御祖神社(おおとしみおやじんじゃ。静岡県静岡市葵区)、湯田神社(ゆたじんじゃ。三重県伊勢市)、市比賣神社(いちひめじんじゃ。京都市下京区)、大内神社(おおうちじんじゃ。岡山県備前市)などがあるが、須佐之男命や子の大年神・宇迦之御魂神を祀る神社は非常に多いのに比して極端に少ない。
奈良県櫻井市にある3世紀中頃の築造とされる箸墓古墳(はしはかこふん)には、宮内庁治定として「大市墓」(おおいちのはか)の銘がある。
伏見稲荷大社(ふしみいなりたいしゃ)の上社祭神「大宮能売大神」(おおみやのめのおおかみ。オオミヤノメ)はアメノウズメと同一視されることもあるが、これを『二十二社註式』(にじゅうにしゃ ちゅうしき)、『稲荷神社考』(いなりじんじゃこう)では大市姫命に当てている。