ツクヨミの名義

 


ツクヨミの神名については、複数の由来説が成り立つ。



まず、最も有力な説として、ツクヨミ=「月を読む」ことから暦と結びつける由来説がある。上代特殊仮名遣では、「暦や月齢を数える」ことを意味する「読み」の訓字例「余美・餘美」がいずれもヨ乙類・ミ甲類で「月読」と一致していることから、ツクヨミの原義は、日月を数える「読み」から来たものと考えられる。例えば暦=コヨミは、「日を読む」すなわち日読み=カヨミであるのに対して、ツクヨミもまた月を読むことにつながる。



「読む」は、『万葉集』にも「月日を読みて」「月読めば」など時間(日月)を数える意味で使われている例があり、また暦の歴史を見ると、月の満ち欠けや運行が暦の基準として用いられており、世界的に太陰暦太陽暦に先行して発生したのである。「一月二月」という日の数え方にもその名残があるように、月と暦は非常に関係が深いつまり、ツクヨミは日月を数えることから、時の測定者、暦や時を支配する神格であろうと解釈されている。



その他にも、海神のワタツミ、山神のオオヤマツミと同じく、「ツキヨのミ」(「ツキヨ」が月で「ミ」は神霊の意)から「月の神」の意とする説がある。



このようにはっきりと甲乙の異なる「ヨ」や、発音の異なる「ユ」の表記が並行して用いられていること、そして『記紀万葉』のみならず『延喜式』などやや後世の文献でも数通りの呼称があり、表記がどれかに収束することなく、ヨの甲乙が異なる「月読」と「月夜見」表記が並行して用いられている。