神饌 形式 植物


植物を神饌として奉げる神社も多い。奈良県奈良市にある率川神社(いさがわじんじゃ)ではササユリの花で飾られた酒樽が献供される。これは主催紳である媛蹈韛五十鈴姫命(ひめたたらいすずひめのみこと)が幼い頃暮らした三輪山の狭井川のほとりが、山百合(ササユリの別称)の咲きほこる場所であったという伝説にあやかり、現在も三輪山で摘み取られたササユリが奉げられる。また、ササユリは昔は「山百合」と呼び、古典では「佐韋」と記し、これが狭井川の語源になっている。『神祇令(じんぎりょう)には既に



謂。率川社祭也。以三枝花。飾酒罇祭。故曰三枝也。(三枝の花を以て酒樽を飾る故に三枝といふ)

— 神祇令


と記され、古くから行われてきた、花を奉げる神事であることがわかる。




北野天満宮では主祭神である菅原道真にあやかり、紅梅と白梅が神饌として奉げられる。北野天満宮では従来は建立された経緯から菜種を奉げていたが、渡唐天神信仰による影響や、新暦への移行により祭事の日時が1ヶ月ほどずれたため、それ以降は梅を奉げ、菜種は神職一同が身につけ神事に臨む形で残されている。



石清水八幡宮では自然物から構成された造花(供花神饌。くげしんせん)が神饌として奉げられる。これは竹、梅、菊、南天(なんてん)、椿、水仙、松、牡丹、橘、桜、杜若(かきつばた)、紅葉などの植物に、鳳凰、鶯(うぐいす)、鶴、兎、鶺鴒(せきれい)、雉子(きじ)、鳩、巣籠子(すごもりひな)、蜻蛉(とんぼ)、鷹、蝶、鴨、鹿などの動物を組み合わせ、12座の神饌で四季を表現するものである。



このような食材は明治以前には社領から御厨家が調達にあたったが、明治以降は氏子などから献上された食材の中から祭事や季節に応じて選択され、神饌として奉げられている。 例として、以下に4種の神饌の内容を列挙する。