ニンマ派の特徴 テルマ
テルマとはテルトン(埋蔵宝典発掘僧)が探してきた古代の経典や遺物、あるいは啓示のことである。カギュ、ゲルク、サキャ、ボン教徒のテルトンもいるが、一般的にテルトンと言えば主にニンマ派の僧を指す。
ニンマ派の伝承によれば、パドマサンバヴァとその主要な弟子たちは、ラン・ダルマ王の仏教弾圧の時代、仏教を守るため、数百もの聖典、仏具をチベット高原各地に秘密裏に隠したとされる。そして、人智の進化に応じてその時代にあったテルマが発見される。テルマは必ずしも物ではなく、テルトンの心の流れ(セムギュー、心相続(しんそうぞく))に隠されることもある。
ニンマ派の教えは、時代とともに発見されたテルマを元に、少しずつ膨大なものとして発達を遂げていった。そしてテルマによって明かされた教えにより、多くの修行僧たちが悟りを開くこととなった。
テルマという考え方はインドに先例がある。例えばナーガールジュナ(龍樹。りゅうじゅ)は、釈迦から時を越えて伝えられた般若経の最後の部分を再発見している。基本的に大乗経典は広義のテルマと考えられる。