幻化網タントラ 旧訳


チベット仏教ニンマ派では、マハーヨーガの「タントラ部」として幻化網の『十八部大タントラ』(tantra chen po bcu brgyad)というタントラ経典群が伝承されている。この十八大部の中心となるのが『大幻化網タントラ』の名で挙げられている『グヒヤガルバ・タントラ』(Guhyagarbha Tantra、秘密蔵タントラ)、通称『サンワ・ニンポ』で、ヴィマラミトラマ・リンチェン・チョクの翻訳と伝えられる。また、チベット大蔵経にも古タントラとして『金剛薩埵幻化網一切秘密鏡と名づけるタントラ』(東北833)等が収められている。



グヒヤガルバはニンマ派のタントラの分類でいうとマハーヨーガに属するが、アティヨーガ(ゾクチェン)にも関連している。一部のチベット学者は、幻網タントラ群の本尊瑜伽や究竟次第(くきょうしだい)系の瞑想技法がゾクチェンの初期の源泉のひとつであった可能性について検討している。