精進料理の特徴


精進料理の特徴は、野菜・豆類など、植物性の食材を調理して食べることにある。サラダのように一品の料理として野菜を生のまま食べるという概念が中国や日本の食文化に定着するまでは、野菜・豆類は基本的に加熱調理する必要があった。これらを使う精進料理は、あく抜きや水煮といった時間と手間のかかる下処理を必要とすることが多いのが、特徴のひとつである。これらの複雑な調理技術や使用する食材に対する概念は、多くの料理人や料理研究家に影響を与え、料理分野全体の水準向上に貢献してきた。



また、精進料理は極めて単純な食材を、多くの制約がある中で調理するため、さまざまな一次・二次加工が施されてきたことも特徴のひとつである。例として、大豆は栄養価が高く、菜食で不足しがちなタンパク質を豊富に持つこともあり、精進料理に積極的に取り入れられたが、生食は困難である。このため、風味を向上させ、長期保存し、食べる者を飽きさせないといった目的も含めて、豆豉(とうち)味噌醤油豆乳湯葉豆腐油揚げ納豆などが生み出された、こうした技術は、精進料理を必要とする寺院と宮廷を含むその周辺の人々によって、研究・開発され、蓄積されてきた。



また、特に中国、台湾ベトナムに見られるものとしては、いわゆるもどき料理中国語で「仿葷素菜」)と呼ばれるものがある。これは植物性原料を用いて、動物性の料理に似せたものを作ることである。例えば、湯葉を加工して火腿中国ハム)を作ったり、こんにゃくイカエビを形取ったり、シイタケや他のきのこを用いてアワビスープや炒め物に似せるといったものである。



精進料理は僧侶には必須の食事であり、食事もまた行のひとつとして重要視された。その一方で民間でも、冠婚葬祭やお盆等において、一般家庭や料理屋でも作られるようになった。料理屋の精進料理は、時としては仏教の食事に関する概念とは対照的な美食を目的として調製され、密かに動物性の出汁を使っていることさえある。中国・台湾香港・日本・朝鮮等では精進料理を名物とするレストラン料亭、料理屋が数多く存在し、特に台湾の精進料理は広く浸透している。また、シンガポールマレーシアなどにも仏教系の精進料理店が少数存在する。