施餓鬼法(せがきほう)


不空訳『救抜焔口陀羅尼経』に基づく修法で、池の畔(ほとり)、樹木の下などの静かな場所で東方に向かい3尺以下の壇を儲けて修する。陀羅尼と五如来(宝勝(ほうしょう)・妙色身(みょうしきしん)・甘露王(かんろおう)・広博身(こうばくしん)・離怖畏(りふい))の名号念誦の加持力によって、餓鬼の罪障を滅し、飢渇を除き、天人道や浄土へと往生させる。 なお餓鬼は夜間に活動するとされるので、日没以降に行う。また吉祥木である桃・柳・石榴(ざくろ)の側では行わない。本堂内陣では行わない。灯明をともさない。香華(こうげ)を供えない。鐘を鳴らさない。数珠を摺らない。声高に真言を唱えない。作法終了後は直ちに後ろを向いて振り返らないなど独特の禁忌のある作法を本義とする。これらの決まりは餓鬼が吉祥木や灯明、香華、鐘や数珠の音、大声や人の視線を嫌うことに由来する。 このような施餓鬼法は密教系の修行道場では、行者の修行が円満に成就するようにと毎夜行われる。



ただし中世以降は盂蘭盆行事等と習合したことで施餓鬼は日中に盛大に行われるようになり、上記のような禁忌のない作法が行われようになる。このような法会には餓鬼は直接列することができないので、供養した食物は本義に従って水中や山野に投じて餓鬼等に施すのを常とする。 施餓鬼は多大な功徳があるとして、その功徳を先祖へと回向する追善として行われるようになり、これらから盂蘭盆行事となっているが、両者は混同してはならないとされる。