波羅提木叉 大乗仏教での扱い
以上、上記してきた内容は、初期仏教以来の「ひな形」であり、これは現在も南伝の上座部仏教においては、基本的にそのまま継承されている。
では他方の大乗仏教ではどうかというと、大乗仏教においても、上記の伝統はそれなりには継承されてきた。また、大乗仏教の優位性を示すべく、建て前上の説として、大乗の菩薩においては、この波羅提木叉(具足戒)としての「比丘戒」に加え、その上に更に「菩提心戒」や「菩薩戒」をはじめとする大乗の諸戒を、密教の場合であれば更に「三昧耶戒」の諸戒を上乗せし、より厳しい規律とすることが、中国仏教や鑑真に代表される大乗仏教と、空海とその弟子や、中国密教、チベット密教等の後期大乗仏教と呼ばれる密教における伝統の基本的なあり方である。
しかしながら、
· 初期仏教以来の伝統仏教(部派仏教)に対する改革運動としての大乗仏教の性格
· 各地への伝播の際の様々な不備
· 宗派・信仰の多様性
などの様々な要因が混じり合いながら、紆余曲折を経てきたのが実態であり、現在も各地域・各宗派によって、バラつきがある。