権現 神号の事例
神社に由来した事例
春日大社は武甕槌命(タケミカヅチ)(一殿)・経津主神(フツヌシノカミ)(二殿)・天児屋根命(あめのこやねのみこと)(三殿)・比売神(ひめがみ)(四殿)の四柱の祭神を祀るが、中世には興福寺(こうふくじ)が神宮寺として支配的な影響力を持ったため、神仏習合に基づいて不空絹索観音(一殿)・薬師如来(二殿)・地蔵菩薩(三殿)・十一面観音(四殿)の垂迹として春日権現と呼ばれてきた。ただし、武甕槌命や天児屋根命は古事記や日本書紀などに登場する神道固有の神々であり、「武甕槌権現」「天児屋根権現」というような神道本来の神名と神仏習合思想が混在した神号は存在しない。
地名に由来した事例
山岳信仰と修験道が融合した立山修験や白山修験、羽黒修験などでは山の名が冠されて、それぞれの神号は立山権現、白山権現、羽黒権現になっている。また日光修験の日光権現(日光二荒山神社(にっこうふたらさんじんじゃ)の祭神)は、勝道(しょうどう)上人が開基した二荒権現(ふたらごんげん)に由来する「日光」という地名が神号と結びついた事例である。
神社名や地名を用いる以外では、祭神の数で「六所権現」などと呼ぶこともある。組み合わせにより、「日光三所権現」のように用いられることもある。「金剛蔵王権現」(金剛蔵王菩薩)のように本地仏の名前がそのまま垂迹神の名前として用いられる例もあるが稀である。これらのことは明神号にも多く共通する。