多聞部 成実論
『成実論』(Satyasiddhi Śāstra、Tattvasiddhi Śāstraとも呼ばれる)は多聞部から生まれた現存するアビダルマ文献である。今日では大蔵経第16巻に収録されている(『大正新脩大蔵経』(たいしょうしんしゅうだいぞうきょう)1646)。著者は三世紀中央インドの僧 訶梨跋摩(かりばつま)とされる。真諦はこの多聞部のアビダルマが「小乗」と大乗の教説の混淆から成ると言及しており、Joseph Walserもこの評価の正しさに同意している。Ian Charles Harrisもこの文献を「小乗」と大乗の総合であると特徴づけており、その教説は中観派および瑜伽行唯識学派のそれに非常に近いと述べている。
『成実論』には多聞部の聖典に含まれる菩薩蔵に関する言及も見られる。